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フセイン裁判:「悪魔の弁護士」か「アラブ弁護団」か
米軍拘束下にあるフセイン元イラク大統領の身柄が6月末の主権移譲前にイラク側に引き渡される見通しとなった。裁判は来年以降の見通しだが、世界注視の法廷に立とうと早くも「弁護士の戦い」が始まっている。独裁者やテロリストの弁護を専門とし「悪魔の弁護士」と呼ばれるフランス人のジャック・ベルジェス氏(79)と、アラブ人中心の国際弁護団がそれぞれ準備を進めているのだ。【パリ福島良典】
●ポル・ポト派と親交
3月末、元大統領のおいから依頼を受けた、と名乗りを上げたベルジェス氏。仏外交官の父とベトナム人の母のもとにタイで生まれ、インド洋に浮かぶ仏植民地レユニオンでの少年時代に、植民地主義への反感が培われたとされる。
活動歴は冷戦と紛争に彩られた現代史の教科書の趣だ。1940年代末にカンボジアのポル・ポト元首相と親交を結び、アルジェリア戦争で独立運動を支援して女性闘士と結婚。60年代末にはパレスチナ・ゲリラのハイジャック事件で法廷に立った。
表舞台から姿を消し、自ら「鏡の向こう側に行っていた」と語る70〜78年はポル・ポト派の隠密活動に従事したとされる。
近年はナチ戦犯のクラウス・バルビー、国際テロリストの「カルロス・ジャッカル」、ミロシェビッチ元ユーゴスラビア大統領ら大物被告の弁護に当たった。
●大物への出廷要求も
ベルジェス氏に対し、アラブ人ら20人の弁護士で構成する国際弁護団は「我々は元大統領のサジダ夫人と3人の娘から依頼を受けた」と主張、「ベルジェス氏は元大統領の正統な顧問弁護士でない」と自らの正統性を強調している。
「ベルジェス氏対国際弁護団」の対立構図は、両陣営による対米非難に拍車をかけている。
挑発的なベルジェス氏は「イラク人の大量死は経済制裁と米英軍の爆撃のせい」と主張。裁判が始まれば(1)84年に当時のレーガン大統領の密使としてイラクに「毒物と化学物質を売りに出かけた」ラムズフェルド国防長官(2)「イラク当局と接触を再開しようとした」キッシンジャー元国務長官−−の出廷を求める意向を表明している。
さらに、駐留軍兵士によるイラク人収容者虐待が表面化すると、「(捕虜の人道的な扱いを定めた)ジュネーブ条約の重大違反」「戦争犯罪」として英国をオランダ・ハーグの国際刑事裁判所(ICC)に訴追すると述べるなど、米英両国への攻撃を強めている。
●ブッシュ包囲網
国際弁護団も「人権尊重に関し米国の信頼が地に落ちた今、元大統領の生命が心配だ」(ヨルダン人のラシュダン氏)、「米国はイラク側への身柄引き渡しで元大統領の問題を厄介払いしようとしている」(仏人のリュド氏)と米国に揺さぶりをかけている。
競合関係にある両陣営に共通しているのは、裁判を通じて国際法無視のブッシュ政権の暴力性をあぶり出す戦術だ。真の無法者は元大統領か、米国か−−。弁護側は国際世論に対し、そんな二者択一の踏み絵を仕掛けようとしている。
毎日新聞 2004年5月26日 14時10分
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/jiken/news/20040526k0000e030070000c.html