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社説:米のイラク政策 誤り正し国際協調の姿勢で
ブッシュ米大統領は24日、イラクの自由と民主主義を達成するための5項目の政策について演説、6月末の主権移譲ではイラク人暫定政権に「完全な主権が移譲される」と約束した。
大統領の5項目は(1)主権移譲(2)多国籍軍による治安維持支援(3)復興・再建(4)国際社会の支援促進(5)自由選挙と憲法制定からなる。ブラヒミ国連事務総長特別顧問が発表した構想に沿ったものだ。
同日、米英が国連安全保障理事会に提出した新決議案も、米英占領当局(CPA)の解散と共に、「主権をすべて暫定政権に委ね、国連が主導的役割を担う」と明記された。
これまで仏独などが「暫定政権に移譲される主権の範囲が明確でない」と難色を示していた問題では、「完全な主権移譲」を強調することによって、国際社会に歩み寄った内容となった。
4月以降のイラク情勢は、スンニ派地区と南部シーア派地区で米英占領軍と武装抵抗勢力の流血が拡大し、主権移譲への道筋が不透明になってしまった。イラク人収容者虐待問題も発覚して米国民のブッシュ政権に対する不信が深まり、占領軍の士気も揺らぎかねない情勢に陥った。
この段階でブッシュ大統領が主権移譲とその後の戦略を改めて訴えたのは、イラク内外で対米不信が高まってきたからだ。今秋の大統領選挙を控えて、国内支持率が低迷している事情もあったに違いない。
そうした計算があるにせよ、主権移譲まで1カ月余に迫った現時点で必要不可欠なことは、国連主導の正常化の道筋を揺るぎなく進めることだ。その意味で、大統領が示した5項目と安保理新決議案の内容はイラク人と国際社会への誠実な約束と受け止めたい。
安保理各国は新決議案を有効なたたき台と評価している。だが今後、各国の意見や国連事務局との協議を通じて詰めなければならない点も少なくない。
米軍主導の多国籍軍とイラク人暫定政権やイラク人治安部隊との協力関係はどうあるべきか。「1年後に見直す」とされた駐留期限も、仏独などが完全に納得したわけではない。背景には、多国籍軍を通じた米国の実質的支配が続くのではないかとの懸念もある。
ブラヒミ氏による暫定政権の人選作業は予想よりも遅れてまだ続いている。この面でのきめ細かい支援も必要だ。国連や他の国際機関が現地に復帰する際には、要員の安全確保も欠かせない。
新決議案などの内容が着実に履行されることをイラク人が納得しなければ、主権移譲プロセスが円滑に進むとは考えにくい。そのためには、米英が虐待問題を含めて占領政策の誤りを遅滞なく正した上で、国際社会との協調姿勢を誠実に示していくことが大切だ。
主権移譲とその後のプロセスは人道復興支援のために自衛隊を派遣した日本にとっても重要だ。それを成功させるために、日本政府は主体的関心を持って米英への助言を果たしてほしい。
毎日新聞 2004年5月25日 23時49分
http://www.mainichi-msn.co.jp/column/shasetsu/news/20040526k0000m070146000c.html