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社説:イラク人虐待 個人の責任で終わらせるな
イラク人収容者虐待事件を裁く初の米軍法会議がバグダッドで開かれ、虐待罪などで訴追された米兵のうちで最初のシビッツ被告に禁固1年と懲戒除隊の有罪判決が言い渡された。
この問題では訴追ずみの4人に加えて、女性兵士も含む計7人を訴追対象に捜査が進んでいる。シビッツ被告は首謀者ではなかったとされ、捜査に協力し、反省の姿勢も強いなどの判断から比較的軽い処分に終わった。
米軍法会議は罪状の重さによって略式、特別、一般の3種類に分かれる。訴追ずみの残る3人は来月、最高刑に死刑も含まれる一般軍法会議で裁かれる。
虐待事件が世界に報じられて以後、ブッシュ米大統領や米国防総省は真相の徹底解明と責任者の厳正な処分を約束した。19日、米上院公聴会で証言したアビザイド中東軍司令官らも「我々は過ちを犯した」と謝罪した。
処分の皮切りとなる軍法会議を公開し、地元メディアによる取材を許可したのも、米軍・米政府の反省や誠意の深さを示そうとするものだろう。
だが、厳正な処分と事実究明は最低の必要条件だ。これだけでイラク人の反米感情や国際社会の不信感がぬぐえるわけではない。大衆の間では「内輪の処分に過ぎない」との不満がわだかまっている。被害者らに対する正当な補償や謝罪も必要だ。
問題は米政府が主張するように本当に「一部の犯行」だったのかどうかだ。上層部や情報機関も関与した組織ぐるみの事件ではなかったのか。報道関係者への虐待も報告されている。さらに詳しく調査し、納得のいく説明責任を果たさなければならない。
国際社会の不信の遠景には、米国が国際刑事裁判所(ICC)加入を固く拒んでいる現実がある。戦争犯罪や人道的処遇をめぐる独善的姿勢が目立ち、アフガニスタンやイラクでのテロ容疑者の処遇があいまいなことも、国際的イメージ失墜に輪をかけている。
その意味でも米国は事件を当事者個人の責任に終わらせてはならない。こうした構造的問題に腰を据えて取り組む必要がある。
何よりも心配なのは、虐待事件でイラク人の怒りが増幅され、国連主導の主権移譲プロセスが行き詰まるような事態に陥りかねないことだ。入り組んだ感情のもつれをときほぐし、主権移譲を成功させるには、イラク人の主体的協力が不可欠であることは言うまでもない。
そのためには、米英当局が真相究明、責任者の処罰、再発防止措置を今後も徹底し、具体的行動で人々の信頼を一歩ずつ積み重ねていく以外にはないはずだ。
虐待以外でも、イラクでは米英の見通しの悪さと誤った占領政策のために余りにも多くの血が流され、傷ついた。大多数のイラク人は早急な主権回復、安定、復興を求めている。そうした誤りを速やかに正すことが不信の解消につながる。そのことを米英にしっかり認識してもらいたい。
毎日新聞 2004年5月24日 0時27分
http://www.mainichi-msn.co.jp/kokusai/afro-ocea/news/20040524k0000m070125000c.html