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社説
05月23日付
■日朝首脳会談――正常化へ慎重な前進を
1年8カ月ぶりに平壌に乗り込み、金正日総書記と会談した小泉首相の決断は、拉致被害者の蓮池さん夫妻、地村さん夫妻の子どもたち5人の帰国となって実を結んだ。
曽我ひとみさんの家族もすぐに日本の地を踏むことはかなわないが、夫や娘たちと再会はできそうだ。
家族の離散という被害者たちの苦しみに終止符が打たれ、新たな生活への出発点となることを喜びたい。
しかし、首脳会談の目に見える成果としては、そのこと以外にない。
日本政府が調査を求めたものの、北朝鮮が死亡あるいは不明と伝えてきていた10人について、金総書記は再調査を約束しただけだった。首相は「先送りや棚上げではない」と説明する。だがその家族たちにすれば、期限も示されていない調査ではとても納得がいくまい。
家族の帰国実現の「見返り」ではないとはしているものの、首相は北朝鮮に25万トンの食糧支援などを約束し、一昨年9月の首脳会談で合意した平壌宣言を順守する限り対北朝鮮制裁は発動しないとも伝えた。北朝鮮のメディアは、首相が食糧支援をするために訪朝したかのような、相変わらずの報道ぶりである。
金総書記は核開発問題でも、廃棄を迫った首相に対してこれまでの主張を変えることはなかった。
それにもかかわらず、首相は北朝鮮が期待する国交正常化交渉の再開に応じた。10人の問題を残したままでいいのか。家族の帰国を急ぐ余り、首相は訪朝を焦り過ぎたのではないか。そんな批判も噴き出している。
しかし、首相が訪朝しなければ家族5人はいつ帰国できるとも知れなかった。10人の問題の解明を北朝鮮に強い態度で迫ることは当然だが、正常化交渉という北朝鮮にとって「アメ」ともなる場でこの問題の打開を働きかけることも有効であるはずだ。
金総書記は今回の会談で、平壌宣言を「誠実に履行する」と語った。核問題では「6者協議での平和的解決に努力する」とも表明した。
むろん、これまでの金総書記の言動を見れば、素直に信じるわけにはいかない。核問題について国際合意を順守するとうたった平壌宣言に署名した後、北朝鮮は国際原子力機関の査察官を国外に追放し、核不拡散条約からの脱退も宣言した。明らかに宣言違反である。
それは重々承知のうえで、こうした問題を日朝の国交正常化交渉や6者協議の土俵に乗せて打開していく以外にない。そのことを再認識させたのも今回の会談の意味だろう。
金総書記が再調査を約束した拉致被害者10人については、国交正常化交渉の場でも、北朝鮮に対して機会あるごとに進展状況や結果について強く説明を求めなければならない。
金総書記はミサイル発射実験の凍結も再確認した。しかし、問題は実験だけではない。日本も射程に入るノドン・ミサイルを多数配備している。北朝鮮の核やミサイルは北東アジアの脅威でもある。これも、国交正常化交渉の議題だ。
6者協議に参加する米国、中国、韓国は、首相の訪朝が核問題をめぐる緊張を和らげるとして評価している。それを確かなものとするためにも、日本は北朝鮮への外交攻勢を強める時である。
http://www.asahi.com/paper/editorial20040523.html