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逮捕されただけでも驚きなのに、75日間も警察の留置場などに入れられていたとはただごとではない。
東京都立川市の防衛庁官舎で、自衛隊のイラク派遣に反対するビラを配った市民団体の3人が住居侵入の容疑で逮捕された。裁判所が3人の保釈を許可したのは、事件の初公判で彼らがビラ配布の事実などを認めたのちのことだ。
長い身柄拘束で見えてくるのは、捜査当局の言い分をうのみにした司法の姿である。3人の被告は、名前や住所も含めて黙秘を通した。口裏合わせなど、証拠隠滅をするおそれが大きい。そう考えて、保釈を認めなかったようだ。
たしかに犯罪の組織化や凶悪化というやっかいな状況が生まれている。事件の性格によっては、裁判所が保釈に慎重になるのもわからないではない。
しかし、今回のようなケースにまで長期の勾留(こうりゅう)を認めるのは形式的に過ぎるのではないだろうか。
戦前の刑事訴訟法では、保釈は裁判官の裁量で恩恵的にしか認められなかった。戦後の同法で、保釈は被告の権利として認められている。こんな運用をしたのでは戦前と変わらないではないか。
人権擁護団体のアムネスティ・インターナショナルは、3月半ば、「憲法や国際法で保障された表現の自由を侵害された」と、3人を「良心の囚人」と認定した。国内では初めてのことだ。
裁判所はこれをどう受け止めたのだろう。逮捕や勾留は、イラクへの自衛隊派遣という国の方針に反対する意見を封じ込めるものではないか。外からはそんな風に見られているのである。
そもそも、配ったビラには団体の名前も連絡先も書いてあった。仮に3人の行為が住居侵入罪にあたるという見方に立っても、どんな証拠隠滅をするというのだろう。犯罪の立証に身柄拘束が欠かせないというわけではあるまい。
取り調べのあり方にも疑問がつきまとう。被告の1人は、「運動をやめて立川から出ていけ」と警察官から何度も怒鳴られたと、裁判所に出した陳述書の中で言っている。
事実なら、何のための逮捕だったのかが改めて問われよう。
被告の3人は「立川自衛隊監視テント村」という市民団体のメンバーだ。72年から反戦活動を続け、過去にも自分たちが発行する冊子を防衛庁官舎に配布したことがある。それでも逮捕されるようなことはなかった。
3人は、初公判で「犯罪には当たらない」と主張した。裁判の行方に注目したいと思う。
自衛隊の派遣をめぐって世論が分かれているなかで、官舎の住人たちが平穏に暮らす権利は守られなくてはならない。
同時に、違った考えや価値観を持つ人々を力で押さえ付けるような社会でいいのだろうか。民主主義を支える柱、司法の質が問われている。