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イラク人虐待:3カ所引き回され、悪魔名乗る尋問官 証言
米兵によるイラク人収容者の虐待は、問題が深刻化している「アブグレイブ刑務所」だけでなく、イラク西部の「バグダディ刑務所」や南部ウンムカスルの「キャンプ・ブッサ」など各地の収容所で行われていたことが、毎日新聞に対する元収容者の証言で明らかになった。家族が収容先や拘束者の安否を知らされるケースはほとんどなく、イラク人の反米感情は日増しに高まるばかりだ。イラク国内の圧政からの「解放者」という米国のイメージは、完全に崩れ去ってしまった。【バグダッド杉尾直哉】
◇最悪はバグダディ刑務所
シリア国境に近い西部カイムに住むホサム・アベド・ハメドさん(27)と弟2人は、昨年11月に自宅を米軍に急襲された際逮捕され、今年3月まで約5カ月間、「バグダディ刑務所」「アブグレイブ刑務所」「キャンプ・ブッサ」の計3刑務所をたらい回しにされた。各所で裸にされるなどの虐待を受けたという。
3人が「最悪だった」と口をそろえるバグダディ刑務所では、収容者が裸にされ、殴るけるの暴行のほか、冷水を浴びさせられた。また、一人一人がひつぎの中に夜通し立たされ、眠気で倒れそうになると、殴られた。弟のアルカンさん(24)は「死んだらそのままひつぎにふたをして葬られると思った」と話す。
同刑務所では「サタン(悪魔)」と名乗る尋問官がおり、電気ショックを与える棒を使って執拗(しつよう)に拷問を行った。35歳ぐらいの短パン姿の白人で、情報機関関係者らしいという。
この尋問官は、両手に持った電線をこすり、スパークを見せた後、体に接触させることもあった。アルカンさんの話では、冷水をかけられた直後に後ろの首筋に電気棒を当てられた時が最も強烈で、その後は記憶を失い、気づいた時は、他の収容者と交じって監房で倒れていた。
別の弟のクサイさん(23)は「アブグレイブでは、赤十字(国際委員会)など外部の訪問を受けたが、バグダディは地方の誰の目にも触れない場所にあり、特にひどい扱いを受けた」と話した。
一方、バグダッドの運転手、アッフィール・ケリムさん(23)は、今年1月、北部サマラのバクル空軍基地内の収容施設で13日間拘束され、夜通し直立させられるなどの虐待を受けた。
飛行機の格納庫内の10メートル四方の鉄条網の中で、約40人のイラク人と一緒に収容され、夜中、蛍光ライトの中の化学薬品を地面にまいて爆発させ、収容者を怖がらせる米兵もいたという。食事は1日にビスケットの小さい袋とペットボトルの水1本だけだった。
アッフィールさんが拘束されていた時、米兵2人が、軍用車を放置して持ち場を離れた罰としてイラク人の中に入れられた。看守はこの2人を指さして「笑え」と言った。しかし恐怖で笑えず、従わなかった収容者は、棒で殴られたり、ブーツでけられたという。
◇引き裂かれた家族
毎日新聞の取材に応じた元収容者や現在も収容者を抱える家族の計11ケースのうち、米軍が逮捕後の収容先について家族に通知した例は一件もなかった。
昨年4月13日にバグダッドの自宅を米軍に急襲された貿易業、フレイサン・アバリさん(40)は、父ハリスさん(80)、兄ドウライドさん(47)と共に逮捕された。フレイサンさんと父は9日間の拘束後、釈放されたが、ドウライドさんの行方は今も分からない。フレイサンさんは駐留米軍に度々照会したが、「拘束が続いているかも含め一切答えられない」と言われたという。
「フセイン政権の幹部を自宅にかくまっている」と追及され、自分も虐待を受けたフレイサンさんは「兄の健康が心配だ」と話している。
バグダッドの養鶏業、アブデルラフマン・アブデルラザックさん(63)は、今年2月23日に自宅を米軍に急襲され、息子4人を逮捕された。四男ハイダーさん(20)は2日間の拘束後、釈放されたが、残る3人の行方はその後、分からず、今年4月と5月に赤十字国際委員会のスタッフが長男のベケルさん(35)ら3人とアブグレイブ刑務所で相次いで面会し、ようやく居所が判明した。
一家は「兵器を隠している」との理由で部屋中を荒らされ、郊外にある養鶏場も米軍のブルドーザーでつぶされた。
ハイダーさんは釈放時に米兵から電話番号が書かれた「友情のパスポート」という名の手帳を渡された。アブデルラフマンさんは「家族の中に内通者を仕立てるのが狙いなのは明らかだ。米軍はなぜここまで家族を引き裂きたいのか」と話す。
一方、アルグレイブ刑務所に昨年8月から今年1月まで収容されたバグダッドの雑貨店経営、ナジム・アブドゥルフセイン・マジドさん(45)は昨年11月ごろ、一緒に逮捕されていた長男のクテイバさん(17)が電気ショックの虐待を受け、ぐったりしている姿を尋問官に見せつけられた。ナジムさんは「『目をそらさずにじっと見ろ』と命令された。なぜこんな拷問を受けなければならないのか」と語った。クテイバさんは現在も拘束が続いているという。
◇暴露写真、イラクの新聞各紙が連日掲載
アブグレイブ刑務所における虐待の暴露写真は、イラクの新聞各紙にも連日のように掲載されている。
バグダッドの主婦、ラジャー・アブアクランさん(43)は「米国の残酷さは、サダム(フセイン政権)時代と何ら変わらない」と語った。虐待問題に対し、大半の市民はこう受け止めている。
米軍による人権侵害問題に取り組む市民団体「イラク占領監視センター」のエマン・アフメド・ハマス・バグダッド所長は「ラムズフェルド米国防長官が『すべての責任を取る』と議会で証言しながら、辞任について否定したことが、イラク市民のさらなる怒りを買っている」と指摘する。
ラムズフェルド長官は13日、バグダッドを電撃訪問し、アブグレイブ刑務所を視察した。だが、イラク人側と接する場は設けられず、バグダッドの新聞「サダ」紙のジャシム・タリス記者(37)は「イラク国民向けの釈明は一切なく、訪問はかえって我々の怒りを増幅させた。(19日予定の)軍法会議も罪人(米軍)が自らを裁くようなもの」と話し、不信感を募らせた。
毎日新聞 2004年5月17日 3時00分
http://www.mainichi-msn.co.jp/kurashi/bebe/news/20040517k0000m030134000c.html