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拷問について
ICC[国際刑事裁判所]規程7条2項
拷問とは、身体的であるか精神的であるかを問わず、抑留中または被告人として統制下にあるものに対し、厳しい苦痛または苦悩を意図的に加えることを言う。ただし拷問には適法な制裁からのみ生じ、それに固有のもしくはそれに付随する苦痛もしくは苦悩は含まれない。
拷問禁止条約第1条 84年採択・87年発効
第1条:この条約の適用上、拷問とは、身体的なものであるか精神的なものであるかを問わず、人に重い苦痛を故意に与える行為であって、本人もしくは第三者から情報もしくは自白を得ること、本人もしくは第三者が行なったかもしくはその疑いがある行為について本人を罰すること、本人もしくは第三者を脅迫しもしくは強要することその他これらに類することを目的としてまたは何らかの差別に基づく理由によってかつ公務員その他の公的資格で行動するものによりまたはその扇動によりもしくはその同意もしくは黙認の下に行われるものを言う。拷問には合法的な制裁の限りで苦痛が生ずることまたは合法的な制裁に固有のもしくは付随する苦痛を与えることを含まない。
言葉を変えたからといって起きたこと/起きていることが変わるわけではない。
けれども、見方はしばしば大きく変わる。日本の大手メディアの多くがやってきたように、不法占領に対する抵抗をレジスタンスと呼ばずに「テロ」と呼ぶことは、その典型である。アルグレイブでの拷問は、上記の定義に照らしてみるとわかるように、明白な拷問(torture)である。ラムズフェルド等が、詭弁を弄してそれを虐待(ill-treatment)と呼ぼうと、日本のメディアのそんなに少なくない部分が(不偏不党を称する某公共[ママ]放送局を典型として)ラムズフェルド氏の子飼いオウムのようにそれを虐待と呼ぼうと(「おかしな報道には抗議しよう日記」も参照して下さい)。
ブッシュ米大統領(ママ)は、アブグレイブの拷問について、5日、「囚人」(というと法に基づいて拘束されているようだけれど、単なる不法強制拘留)の数を半数に減らし、また、フード(頭に被せる目隠し)の使用を禁ずるなど、「虐待」(拷問を示すラムズフェルド/メディア用語)「防止」策を発表した。あたかも、この拷問は、一部の兵士たち・軍筋が本来の軍の規律に反して行なったもので、こうした手段で対処できるかのように。これには、少なくとも二つ、問題がある。
第一。米軍やCIAあるいはそれらに訓練を受けた各国の軍隊は、体系的に拷問の手法を教え込まれていること。たとえば、CIAの「KUBARK対ゲリラ尋問マニュアル」(1963年)には、拘留した相手(対象)について、「対象の服をとりあげる。慣れ親しんだ服はアイデンティティを補強し、抵抗する精神を高めるからである」とある。このマニュアルは、結論として、「基本的な強制手法は、身柄拘束、拘留、感覚刺激の剥奪、脅迫と恐怖の植えつけ、肉体的衰弱促進、苦痛、暗示効果/催眠、ドラッグである」と述べている。
また、「人材開発訓練マニュアル1983年」は、「目隠しをし手錠をはめて被尋問者を施設に連れて行く。最後までそのままにしておかなくてはならない。完全に裸にしてシャワーを浴びるよう命ずる。シャワーのあいだも目隠しはとらず、守衛が監視する。体の隅々まで、検査する」、「家からの手紙を注意深く選んで被尋問者に読ませることは、『尋問者』が望む効果を得る助けとなる。たとえば、被尋問者は、親戚が監禁されたり困難な状況にあると考えるかも知れない。適当なときに、彼の協力や告白が無実のものを守るために役立つと示唆することも有効である」などと書いている。
いずれも丁寧に、このような記述は、その行使をオーソライズするものではない、とそらぞらしい断り書きはあるが、1963年にも、その20年後の1983年にも、拷問の方法が、きちんと教えられているのである。2004年時点でどのようなマニュアルが用いられているかはわからないが(資料があったとしても機密解除されるのは随分先のことになるだろうから)、この状況が2004年に変化したと考える理由は、残念ながら、ない[米国が関与した拷問のいくつかの例についてはこちらを参照]。いつもCIAや軍、スクール・オブ・ジ・アメリカズなどは、問題が露呈するたびに「改善された」と言いながら同じことをやってきた。また、ブッシュがイラク大使に指名しようとしているジョン・ネグロポンテは、1964年から68年、ベトナムで米国大使館の行政官をつとめていたが、この期間には超法規的処刑や拷問、虐殺等が頻発し、1981年から85年にはホンジュラスでCIAを指揮し、そのもとでの「死の部隊」が拷問や虐殺を進めていたことが明らかになっている。したがって、今回のブッシュの発言は、完全なリップサービスである可能性は極めて高い(とても控えめに言っても)。
第二。拷問の原因は、何よりも不法な侵略と不法な占領そのものにある。占領を継続しながら拷問再発防止措置を取るというのは、仮に再発防止措置が真剣なものであっても(そうじゃないことは技術的にも背景からも明らかだけれど)、食べ物を口に入れたままで歯を磨くことと同様に不可能である(ジャンクフードを大量に食べながら「ダイエット」なるものに励む米国人らしいという例が頭に浮かんだけれど、それは米国人を不当にステロタイプ化することなので、例にあげるのやめました)。
最後に、ちょっと話は違うけれど、拷問について語ることについて。写真の流出は衝撃的だった。けれども、あるいはそうであるからこそ、次のような言葉を思い起こしておくことは、大切だと思う。
街や都市、村の無差別破壊」は以前から戦争犯罪であったにもかかわらず、飛行機による都市の空爆は処罰されないばかりか、実質的に非難の対象にすらなってこなかった。これは、現代国際法のスキャンダルである。このことを忘れてはならない。空爆は、国家テロリズムであり富者のテロリズムである。過去六〇年間に空爆が焼き尽くし破壊した無辜の人々の数は、反国家テロリストが歴史の開始以来これまでに殺害した人々の数よりも多い。この現実に、なぜかわれわれの良心は麻痺してしまっている。われわれは、満員のレストランに爆弾を投げこんだ人物を米国の大統領に選びはしない。けれども、飛行機から爆弾を落とし、レストランばかりでなくレストランが入っているビルとその周辺を破壊した人物を、喜んで大統領に選ぶのだ。私は湾岸戦争後にイラクを訪れ、この目で爆撃の結果を見た。「無差別破壊」。イラクの状況を表わす言葉はまさにこれである(C・ダグラス・ラミス 政治学者)。
一方的な攻撃を加えて1万人もの人々を殺害してきた侵略・占領軍が、そもそものはじめから、イラク人を「人間」として見ていなかったことははっきりしている。アルグレイブの拷問は、その中で、起こるべくして起きたことである。
小泉首相の言葉:「我々はイラクで人道復興支援をしてるんですよ。戦争をしているわけじゃない」。「イラクのサマワで復興支援にあたる自衛隊は・・・・・・」。「国際社会の一員として、イラクの復興に・・・・・・」。占領軍の指揮下に入り、武装米兵の輸送を行う自衛隊。
イラクからの、イラク人自身の声としては、バグダードバーニングそしてRaed in the Japanese Languageもご覧下さい。また、関連する情報としては、TUPや反戦翻訳団のページをご覧下さい。
「イラク都市の爆撃を傍観してはならない 米国市民とともに米軍の戦争犯罪を告発しよう」という署名サイトが立ち上がりました(私はまだ署名してませんが)。また、ラムズフェルドの辞任を求める署名というのもあるようです。
日本テレビ「真相報道バンキシャ!」がアブグレイブの拷問について扱いたいということで、メールにて取材(?どちらかというと情報の問合せということになりましたが)を受けました。ファルージャ、アブグレイブの出来事で、メディアも少しずつ掘り下げたものが出てきているようです。5月9日(日)の夕方にそれについて放映されるかも知れません。よろしければ心に留めておいて下さい。
益岡賢 2004年5月7日
http://www.jca.apc.org/~kmasuoka/places/iraq0404n.html