投稿者 なるほど 日時 2004 年 5 月 04 日 19:15:41:dfhdU2/i2Qkk2
第159回国会 武力攻撃事態等への対処に関する特別委員会 第5号(平成16年4月20日(火曜日))
第5号 平成16年4月20日(火曜日)
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平成十六年四月二十日(火曜日)
午前十時三十一分開議
出席委員
委員長 自見庄三郎君
理事 石崎 岳君 理事 北村 誠吾君
理事 久間 章生君 理事 増原 義剛君
理事 首藤 信彦君 理事 平岡 秀夫君
理事 前原 誠司君 理事 遠藤 乙彦君
赤城 徳彦君 岩永 峯一君
岩屋 毅君 江崎洋一郎君
大村 秀章君 佐藤 勉君
佐藤 錬君 塩谷 立君
菅原 一秀君 鈴木 淳司君
田中 英夫君 谷 公一君
谷川 弥一君 谷本 龍哉君
中西 一善君 中山 成彬君
仲村 正治君 西野あきら君
蓮実 進君 鳩山 邦夫君
林田 彪君 宮澤 洋一君
森岡 正宏君 山際大志郎君
山口 泰明君 山下 貴史君
稲見 哲男君 奥村 展三君
鎌田さゆり君 川端 達夫君
今野 東君 末松 義規君
武正 公一君 筒井 信隆君
中川 正春君 中塚 一宏君
中山 義活君 長島 昭久君
楢崎 欣弥君 細野 豪志君
松崎 公昭君 松本 剛明君
笠 浩史君 渡辺 周君
大口 善徳君 桝屋 敬悟君
丸谷 佳織君 赤嶺 政賢君
吉井 英勝君 東門美津子君
…………………………………
総務大臣 麻生 太郎君
法務大臣 野沢 太三君
外務大臣 川口 順子君
財務大臣 谷垣 禎一君
国務大臣
(国家公安委員会委員長) 小野 清子君
国務大臣
(防衛庁長官) 石破 茂君
国務大臣
(事態対処法制担当) 井上 喜一君
防衛庁副長官 浜田 靖一君
総務副大臣 山口 俊一君
法務副大臣 実川 幸夫君
外務副大臣 逢沢 一郎君
外務大臣政務官 田中 和徳君
政府特別補佐人
(内閣法制局長官) 秋山 收君
政府参考人
(内閣官房内閣審議官) 増田 好平君
政府参考人
(内閣官房内閣審議官) 大石 利雄君
政府参考人
(消防庁長官) 林 省吾君
政府参考人
(外務省大臣官房領事移住部長) 鹿取 克章君
政府参考人
(外務省総合外交政策局国際社会協力部ジュネーブ条約本部長) 荒木喜代志君
政府参考人
(外務省北米局長) 海老原 紳君
政府参考人
(外務省条約局長) 林 景一君
衆議院調査局武力攻撃事態等への対処に関する特別調査室長 前田 光政君
―――――――――――――
委員の異動
四月二十日
辞任 補欠選任
植竹 繁雄君 西野あきら君
江崎洋一郎君 山際大志郎君
遠藤 利明君 佐藤 勉君
大村 秀章君 山下 貴史君
佐藤 錬君 鈴木 淳司君
塩谷 立君 谷本 龍哉君
岩國 哲人君 稲見 哲男君
大畠 章宏君 中山 義活君
楢崎 欣弥君 今野 東君
細野 豪志君 笠 浩史君
上田 勇君 丸谷 佳織君
赤嶺 政賢君 吉井 英勝君
同日
辞任 補欠選任
佐藤 勉君 遠藤 利明君
鈴木 淳司君 谷川 弥一君
谷本 龍哉君 塩谷 立君
西野あきら君 植竹 繁雄君
山際大志郎君 江崎洋一郎君
山下 貴史君 岩永 峯一君
稲見 哲男君 岩國 哲人君
今野 東君 楢崎 欣弥君
中山 義活君 大畠 章宏君
笠 浩史君 細野 豪志君
丸谷 佳織君 上田 勇君
吉井 英勝君 赤嶺 政賢君
同日
辞任 補欠選任
岩永 峯一君 大村 秀章君
谷川 弥一君 佐藤 錬君
―――――――――――――
四月二十日
有事関連法案反対に関する請願(山口富男君紹介)(第一七五二号)
は本委員会に付託された。
―――――――――――――
本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
参考人出頭要求に関する件
武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律案(内閣提出第九八号)
武力攻撃事態等におけるアメリカ合衆国の軍隊の行動に伴い我が国が実施する措置に関する法律案(内閣提出第九九号)
武力攻撃事態等における特定公共施設等の利用に関する法律案(内閣提出第一〇〇号)
国際人道法の重大な違反行為の処罰に関する法律案(内閣提出第一〇一号)
武力攻撃事態における外国軍用品等の海上輸送の規制に関する法律案(内閣提出第一〇二号)
武力攻撃事態における捕虜等の取扱いに関する法律案(内閣提出第一〇三号)
自衛隊法の一部を改正する法律案(内閣提出第一〇四号)
日本国の自衛隊とアメリカ合衆国軍隊との間における後方支援、物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定を改正する協定の締結について承認を求めるの件(条約第一〇号)
千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ諸条約の国際的な武力紛争の犠牲者の保護に関する追加議定書(議定書1)の締結について承認を求めるの件(条約第一一号)
千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ諸条約の非国際的な武力紛争の犠牲者の保護に関する追加議定書(議定書2)の締結について承認を求めるの件(条約第一二号)
○首藤委員 民主党の首藤信彦です。
この緊急事態法制といいますか武力攻撃事態といいますか、まだ現実には起こっていない仮想なもので、なかなかイマジネーションがわかないという問題がございます。そこで、私は、現実世界で起こっていることをベースとして、それとこの法制との関係をいろいろな点において考えてみたいと思うんですね。
例えば、イスラエル、パレスチナで、最近、ハマスの指導者のヤシン師が暗殺された。その後、その指導者の位置についたのはランティシ氏なんですけれども、彼もまた、先日、ヘリコプターからのミサイル攻撃によって暗殺された。これは、常識的に言って、戦時国際法というか、ジュネーブ条約にも明確に違反すると思うんですが、外務大臣、いかがでしょうか。
○首藤委員 ジュネーブ四条約に当然この問題というのは触れているわけですが、その後起こったさまざまな地域紛争において、指導者の暗殺ということが頻繁に行われるようになった。したがって、四九年の四条約以降、これに対する修正が行われていると思うんですね。
例えば、今回政府が提出しましたジュネーブ四条約の追加議定書、第一議定書の例えば四十一条、「戦闘外にある敵の保護」というところで、四十一の2の(a)項に、「次の者は、戦闘外にある。」として、「敵対する紛争当事者の権力内にある者」、これには「戦闘外にある敵の保護」という形で、「攻撃の対象としてはならない。」と明確に書いてありますけれども、この号には対応するでしょうか。外務大臣、いかがでしょうか。
○川口国務大臣 四十一条「戦闘外にある敵の保護」ということで書かれておりまして、次の者は攻撃の対象としてはならないということで、戦闘外にある者として幾つか書いてあるわけでございます。
それで、これが当てはまるかどうかということですけれども、イスラエルはまず第一追加議定書の締約国ではないということでございまして、したがって、適用されないということがまず第一番の答えです。
それから、そう申し上げると、じゃ、仮にそうだったらどうかというふうにおっしゃるかもしれませんけれども、先ほど申しましたように、あの件についての具体的な事実関係について我々は承知をしていないということですので、仮にそうであった、イスラエルが第一追加議定書を締結している国であったとしても、その件について法的にきちんと評価をするということは困難だと申し上げないといけないと思います。
○首藤委員 外務大臣、それは異なことをおっしゃいますよね。外務大臣、イスラエルに対して抗議されたんじゃないですか。私はすばらしいことだと思って、もう胸ときめいて聞いていたんですけれども、今お聞きすると、何か、これは本当にそういう事件が起こったかどうかわからないということなので、すごいショックを受けたわけですけれどもね。
これは、私の質問はそうじゃないんですよ。それは、イスラエルが入っていないとか、アメリカも入っていなかったり、いろんな問題があるんですけれども、これから日本が国際社会に入っていこう、有事法制を完備し、今まで本当の意味で、戦時国際法とは今まである意味で無縁だった日本が、五十年たって初めて国際社会とコミットしようというこの今の機会において、果たして精神をどのように理解するかということをお聞きしているわけですね。ですから、私は、大変、この問題に関しては、そのお答えは不満なわけですが、先に進みます。
そこで、この問題の最初に戻りまして、イスラエルを罰することができるかどうかは別として、我が国のスタンスを私は聞いているわけですね。日本がこれから国際社会に向かって国際貢献もしていかなきゃいけない、国際平和のために一致団結していかなきゃいけない、小泉総理がしょっちゅう言っていることですけれども、そういう方向にある我が国が、このようなジュネーブ条約の精神あるいは具体的な個別な個条に関して反している行為に対して、そこで批判されたと。結構だと思いますね。それはしかし、それだけでは十分ではないのではないか。
例えば、パレスチナへの日本の支援というのは、日本がアラブ社会に残している最後の日本への信頼のきずななんですよ。
最近、インドネシアへ選挙監視でこの間行った友人などの話を聞きますと、何か日本人だといってつばをかけられたりするという人が、東南アジアのイスラム圏で多くなってきているらしいんですよね。ですから、今度のイラクへの自衛隊の派遣によって、五十数年間、あるいはむしろ明治維新からずっと培ってきた日本への名声とか評価というものが、もうこの一年ぐらいでがたがたと崩れてしまって、日本人だというとつばをかけられる、イスラム圏でつばをかけられるというような事態に落ち切っているわけです。
ですから、パレスチナというのは日本にとって本当に重要で、パレスチナの人たちが日本を支援している限りは、アラブの社会において、あるいは中東全域においても、あるいはイスラム圏全域においても、日本はよくやっている、こういう評価につながってくるという点で、私は大変重要な対応だと思っております。
そこで、抗議をされたわけですが、抗議はもちろん日本語で日本に向かってやるわけですから、これはぜひ、我が国のこのアラブ資産といいますかイスラム資産といいますか、この我が国の名声という貴重な無形資産を守るためにも、ぜひ三つのことをお願いしたい。
一つは、アルジャジーラにもう一度出演していただいて、イスラエル非難をしていただきたい。第二は、この間、経済制裁を我が国単独でもできるということで法律もつくったわけでありますから、ぜひ単独でイスラエルへの経済制裁を考慮していただきたい。三番目に、そんなこともなかなかできないよというのであれば、少なくとも抗議を具体的に見せるという意味で、在イスラエルの日本大使を召還していただきたい。
この三つの対策のうち、いずれをとっていただけるでしょうか。外務大臣、いかがでしょうか。
○首藤委員 この問題に関しては、そういう経済制裁、政策手段の問題もいろいろ言いたいわけですが、私は、最後の外務大臣のおっしゃったことに大変強い抗議をしたいと思っています。
私は、二年前、十二月にイラクへ行って、その当時、また戦争になるかもしれないということで、当時のナンバーツーと言われたラマダン副大統領にも会って、戦争を回避する道はないかということを話しました。
そのときヨルダンで私を出迎えてくれたのが、井ノ上さんという若い二等書記官でしたね。彼は何をやっていたかというと、彼が言うには、イージス艦をインド洋に送って以来の今のアラブ社会、中東社会における日本への疑惑の目と反発というのは物すごい勢いで広がっている、このヨルダンでももう危なくなってきていると。私は湾岸からずっと入っていったんですが、その湾岸でも、ドバイなんかで、地元紙の中には日本非難というのがたくさんあるので、驚いて、そういう話をしたんです。
井ノ上さんは、本当にそのことを気にかけておられて、イスラム圏、アラブ圏において日本に対してどれぐらい反発が高まっているかということを、ずっとデータや記事を集めておられました。そして、私にも送っていただいた。それが、その後も何度も会いましたけれども、井ノ上さんに対する私の思い出ですよ。その車の中で話した会話を思い出すと、私は本当に胸が熱くなる思いがするんです。現場に行っている外交官が本当に日本の行く末を案じて、本当にいろいろ調査をしてやっているということに対してですね。
それは外務大臣としてそうおっしゃるような言い方しかないのかもしれませんが、私は、違う、今、世界の中では、日本が築き上げた信用というもの、評価というものはもうがらがらと崩れてきていると。私自身も三十年前にはアルジェリアで働く商社マンでしたけれども、そのころと今ともう本当にさま変わりです。ですから、私は、まあ大臣、そういうふうに立場上おっしゃるんでしょうが、ぜひその点は事態を深刻に承知していただきたい、そういうふうに思います。
なぜ私がこうしたパレスチナの問題を取り上げているかというと、実は、紛争地というのはこういうものなんですね。例えば、外国が攻めてきて、敵国、それからこちらは守っている国、こういう形ではなくて、そこでは、さまざまな理由で実は敵味方入り乱れるんです。これは体験してみないとわからないんですが、私が行った紛争地はほとんどそういうふうにモザイク状になってきているんですね。守っている方も決して一枚岩ではないんですよ。一つの民族として、同じ民族なのに、いろいろな理由で実はモザイク化していくんですよ。
ですから、ある意味で、イスラエルのように、パレスチナとイスラエル、これはある程度民族も宗教も違うからはっきりしているんですけれども、民族も宗教も全く同じでも、実はいろいろモザイク化していくんですね。そして、そこには紛争があり、お互いにスパイがいて、非常に複雑な紛争が行われるというのが現実だというんですね。ですから、私は、その意味で、この国民保護法制などにこのイスラエルの現状を見ながら私たちの問題を考えるというのは、非常に有意義なことだと思っております。
さて、中東において最近大きな問題がありまして、それは日本人の人質、特に武装勢力に拘束された三名の方がまず解放されたわけですが、この方々たちが帰られたら、自己責任、自己責任というふうにおっしゃる方が多くて、それから、お金がかかったんだからお金を賠償しろとか、賠償できないまでも幾らかかったかお金を出して突きつけろとか、こういう意見がたくさん出てくるわけであります。
私は、これはちょっと違うんじゃないかと思うんですね。例えば、外務省の不作為というのは何か、外務省の自己責任というのは何かということも問われなきゃいけない。
例えば、今まで私も、いろいろ邦人の保護にはずっと外務省と一緒に働いてきました。私たちの悲願は、領事移住部領事第一課とかそういうふうに言われていたものが、邦人保護課が出てきている、そしてやがてそれが局になる。これまで、私も微力ながら外務省の発展のために尽くしたつもりですが、ようやく外務省の構造改革によって領事移住部というものが領事局として取り上げられていこうと。
それはなぜそうなのか。それは、今までは、小さい外務省で、余り邦人のことも面倒見られませんよ、皆さん、パスポートをなくしたとか、物をとられたとか、事故に遭ったとか、いろいろ言うけれども、外務省だってもう手いっぱいなんですよという話から、いや、そうじゃない、これからの冷戦後の外務省というのは、むしろ市民サービス、市民の国際化へのサービスだということで、領事移住局というものをつくろうという動きになってきたんです。
ですから、まさに市民がいろいろな活動をして、それはある面ではリスクのあるところもある、そういうことをして、それも大きく取り込んでいくというのが領事局でありまして、これに対しては膨大な税金をつぎ込み、もしそういうことが、そんなことは自己責任で勝手にやれと言うんだったら、では、領事局はもうやめて、もう一回領事移住部に戻すなり、あるいは邦人保護課に戻すなりすればいいんじゃないかと私は思うんですね。
退避勧告に関しても、何回も何回も出している、これはお上の発想ですよ。勧告を出せばいいというものじゃないですよ。やはり、実際にそういうふうに行こうという人をとめたら、それはその人へ向かって説得しなきゃいけない。例えば私なんかがイラクへ行こうとすると、わあっと人が来て、先生が行くんだったらCPAに通告しますよとか、いろいろおどしをかけてくるじゃないですか。
だから、もしこういう、アンマンからバグダッドへ行こうという人がいたら、もうアンマンのタクシープールというのはどこか決まっているんですよ。アンマンの日本人が泊まるホテルというのは決まっているんですよ。あるいは国境で、そこを必ず抜けていくんですよ。バスのプールも決まっているんですよ。そこの人に連絡したら、大使館へ連絡してくれと言ったらすぐ連絡が来る。そこで、ちょっと待ってください、もう一週間待ってください、今ファルージャで作戦やっているんでしょう、あなたの通るところはラマディ、ファルージャ、バグダッドのルートですよ、だから一週間待ってくださいと言えば、それはとまらない人もいますよ、私もとまらないかもしれないけれども。今回の若い人だったら、それはやはりもうちょっと考えようということになるんですね。
ですから、その意味では、外務省の不作為というものも非常に大きい。
ですから、ぜひお願いしたいのは、退避勧告というのは、一般旅行業者、旅行に行く一般旅行業者には退避勧告で十分なんですよ。あるいは一般旅行会社には、ホームページに書いてあるじゃないかと言えばそれで十分なんですよ。しかし、今こういう社会の中で、CNNを見たり、アルジャジーラを見た人は、それはその地域と一体化するんですよね。そういういろいろな市民がいるところで、退避勧告だけやっているというのは私は大変問題があると思うんですね。
それから、もう一つここでお聞きしたいのは、では外務省は、自己責任、自己責任とおっしゃいますが、どこまでその解決にやるべきかということですね。
これは実は非常に興味深いのは、二〇〇四年度の外交青書において、人間の盾になられた方に関して、外務省の方がいろいろ、ちゃんとそのコーナーを設けて、外務省がどう対応するかということを書いてあるわけですね。ですから、外務省は、自己責任でいこう、もうそんなのは勝手にやりなさいと言いながら、一方では、最後の駆け込み寺としての役割があるじゃないか、ここに外務省の新しい役割があるじゃないかみたいなことを外交青書にちゃんと書かれているんですよ。
ですから、これからも恐らく出てくると思いますけれども、こういうところの人質が、拉致事件があったら、一体どこまで、どの程度外務省は関与に努力すべきかという、その基準をぜひ外務大臣にお聞きしたい。特に、人質が解放されて、バグダッドに残りたいという方もおられましたけれども、そういう方も全部連れてきて、その飛行機代も払えというのはいかがなものかという考え方もありますけれども、その辺のガイドラインをぜひ外務大臣にこの際聞いておきたいと思いますので、よろしくお願いします。
○首藤委員<中略>ありがとうございました。
自己責任というと、やはり重要なのは、本当に自己責任で、別に拉致されてもほっておいてくれと、危険な目に遭ってもほっておいてくれというのも、これも一つの考え方なんですよ。ですから、本当にどこまで外務省が関与すべきかというのを真剣に考える時期に来ているということですね。
そこで問題なのは、今回、逢沢副大臣が現地に入られた。これ、過去に副大臣が誘拐人質事件、拉致事件で入られた方というのはちょっと余り記憶にないんですが、私も多少は、昔は危機管理問題の専門家だったんですけれども、一九七八年、エルサルバドルのインシンカ事件で、結局、そうした高いランキングの高官を送ったということが事件をフレームアップした。このときから実は高官を送らないようになっているんですよ、外務大臣とか政府特使とか。
例えば、数十人が実はペルーで、これはトゥパク・アマルでしたかに幽閉されたときに、このときは高村政務次官ですか、が行かれたんだと思うんですけれども、バイス・ミニスターが行かれるということは、私は、果たして本当にどれだけの根拠があるのかと。そして、そのことに関して、当然のことながら、偉い、もう日本を代表するような副大臣でございますから、大変一流のホテルで一流の飛行機で行くわけですけれども、物すごいお金がかかる。
ですから、そういうことに関しても、私は、今回のこの事件をぜひ奇貨として、その問題を真剣にとらえて、外務省なりのガイドラインをきちっと明示的に示していただきたいと思うわけであります。
さて、そのイラクでございますが、防衛長官にぜひお聞きしたいんですが、これは御存じのとおり、もう何度も、耳にたこができるぐらい言われていることは、パトロール中に、オランダ軍のパトロールで戦闘になったとか、あるいは先ほどから同僚議員が指摘していますように、スペイン軍が撤退する。これ、どこから撤退するかというと、御存じのとおり、これはナジャフですよ、ナジャフ。
これは御存じのとおり、バグダッドから南下してカルバラ、ナジャフ、サマワ、ナシリヤ、それからバスラ、クウェート、こうなるわけですよ。要するに、サマワの上の都市がナジャフなんですよ。これは宗教上の聖都なわけです。そして、その南はナシリヤです。これはイタリア軍が守って、これはもう爆破されて大変な犠牲者を出した。そうしてまた、バスラはどうかというと、これはシーア派の方が蜂起して、地方政府関係のビルを占拠するような事件があった。
要するに、ここでスペインが撤退するということは、これはもう本当に、この一本しかないルートの真ん中で、六百人の自衛隊、我が国の若者が孤立してしまうという可能性を秘めているわけですね。ですから、こうした状態というのは大変危険なわけですよ。
これは何が危険かというと、いざというときに撤退できなくなるわけですね。砂あらしがあって出られない。平時ならばピストン輸送して六百人を送り出せますけれども、緊急時で全員出なきゃいけないというときには、六百人が乗れる装甲車なんてどこにもないわけですよね。ですから、これをどうされて、どういうふうに計画されているのかと聞いても、恐らく、これは国家秘密だから答えないということだと思いますが、では、これなら答えていただきたいんですね。
要するに、そこで孤立する、そこへやはり過激な、サマワにある例えばサドル派の方なんかがデモ隊を構成して、日本も出て行けという形で押し寄せてくる。そうすると、日本の自衛隊に残された手段は二つ。一つは、撃つ。撃って、威嚇してでもいいですよ、しかし、撃って、帰ってもらう。途中で当たるかもしれない。死ぬかもしれない。流れ弾で人も死ぬかもしれない。二つは、降伏する。
こういう状況において、例えば自衛隊というのは、イラクにおいて交戦国でもなければ、イラク戦争の当事者でもないんですよ。何のためにあそこへ行っているかというと、これは復興のために行っているんです。これは結局何かというと、自衛隊というのは、要するに復興に関係しているNGOと同じようなジュネーブ条約上の扱いになるわけですよ。武装もしているじゃないか、迷彩服を着ているじゃないかと。では、武装NGOですよ。
それにおいて、例えば何らかの形で自衛隊の方が拘束される。これはしょっちゅうあるんです。例えば、道を走っているときに子供をひいちゃったりする。そうすると、地域の慣習法においては、子供をひいたんだからこちらもひかせてくれ、こういうことを言ってきて、もうたくさん悲劇が、私たちも知っているわけですよ。技術者がブルドーザーでひいちゃって、逆に最後は自分もひかれて死ぬとか、そういう嫌な記憶がたくさんあるわけです。
そういう慣習法の社会で、ジュネーブ条約によっても守られていないという状態の中でこうしたトラブルが発生したときに、どのように自衛隊のステータス、自衛隊員のステータスを守れるんでしょうか。防衛長官、いかがでしょうか。
○首藤委員 いや、防衛長官、問題は悲観的に考え楽観的に行動するというんですよ。あなたみたいに楽観的に考えていたんじゃ、これは危機管理にならないわけです。それは確かに、CPAというものの範囲の中で治安ができるときに、CPAの範囲の治安のスコープの中で何かトラブルが起こったら、それは恐らくCPAが守ってくれる、米軍が守ってくれる、イギリス軍が守ってくれるということになると思いますね。
しかし、現実に、自衛隊の方が現地の慣習法管理下で捕らわれたときに、果たしていかなる法理をもって説得できるか。まあ、お金で説得するというのもありますけれども。というと、これはジュネーブ条約上大変難しい問題があるということを理解していただきたいと思うんですね。
さて、そのジュネーブ条約でございますが、このジュネーブ条約に、今回、四条約の国内法案、そして同時に、ジュネーブ条約追加議定書1、2、こういうふうに入るということでございます。
これも代表質問のときに申し上げましたが、ジュネーブ四条約、これは、サンフランシスコ条約で日本が一年以内に加盟することを求められたこのジュネーブ条約でありますが、ここに加盟した。しかし、不思議なことに、これの国内法令は、対応法令はつくられなかった。それからまた、これもさっき同僚議員からも話がありましたように、このジュネーブ条約の非常に重要な義務の一つは、これは、啓蒙活動、教育、それから通告、周知、普及、こういうものが非常に重要な要件としてこのジュネーブ条約にあるわけですね。これもほとんどない。
国会で一体どんな論議が行われたかということをずっと見ました。いろんなコードで検索しているんですが、ほとんど出てこない。出てくるのは、せいぜいが、例えば、捕虜でシベリアに連れていかれて働いた、捕虜で働いたけれども給料を払ってくれない、これはジュネーブ条約で払ってくれるんじゃないかというようなのがちょろっとあるわけですね。
ですから、今度、ジュネーブ条約にいよいよ加盟して、加盟してというか国内法をつくって、国内でも法的効力をつくった。
そうすると、このジュネーブ四条約上、例えば、かつて戦争中に日本に連れてこられたアジアの諸国の人たち、大陸とかあるいは朝鮮半島とか、そういう人たちが、今このジュネーブ条約に基づいて、さあ、いよいよ帰還させてください、戦争で連れてこられたけれども、いよいよ日本でも法律ができたので、さあ、本国に帰還させてくださいというふうになったらどうなるか。
あるいは、ジュネーブ四条約上、個人求償権というのは、今までそれはもう片づいたと言っているんですけれども、今度これがいよいよ入る、今度いよいよ日本でも法的な効力はある。ではこれからだということで、個人が戦争損害や戦時賠償を求めてきたら、これに外務省としてはどう対応する予定でしょうか。あるいは、これは提案者ですか。――外務省。
○首藤委員<中略>私の質問は、個人賠償ではなくて、まず、国内法をつくらなかった理由ですね。その内容として、例えばこういう話が伝えられていると言われているんですが、一体、五三年に加入してから国内法がつくられなかった、この間の不作為の本当の理由は何ですかということをお聞きしております。
○川口国務大臣 これは、本会議のときにお尋ねがありまして、そのときにお答えを申し上げたということですけれども、一九五一年にサンフランシスコ条約に署名いたしましたときに、このサンフランシスコ条約の効力発生後一年以内に加入をするということを宣言したわけでございまして、それを踏まえて国内の立法措置を考えるということですけれども、この実施のために必要な国内立法措置、これの大部分がいわゆる有事法制に属するという判断がございました。それで、まさに必要と判断をされるときに整備をすべきという考え方を政府としては持っていたということでして、したがって、国内法整備が必ずしも十分に行われないままにこれに加入をしたということであったわけです。
それで、有事法制を整備するときにということであったわけですが、委員も御案内のような戦後の国内の政治状況の中で、有事法制について、その整備をする機会に恵まれなかったという現実があったわけでございまして、したがって、十分に整備をされなかったということであるわけでございます。
○首藤委員 ということは、有事法制ができなかったから、論議ができなかったので、ジュネーブ条約の国内法もできなかったというふうに今度言われたと思うんですけれども、それは前回のときよりも一歩進んできたわけですが、果たしてそうかなという問題がありまして、これはまた傍証を出して質問させていただきたいと思います。
また、ジュネーブ条約において一番重要なことは、やはりこんな条約をつくったって効果がなきゃいけないということで、普及、告知義務というものがあるということを前から質問させていただいています。
これは衆議院調査局が配付している参考資料でございますけれども、これはなかなかよくできていまして、質問もちゃんと書いてあるんですね。それの第一に、なぜこの普及義務をやっていなかったか、そして、これから、第一、第二追加議定書への加入後、この義務をいかに果たしていくつもりかと、ちゃんと想定質問まであるんですよ。すばらしい参考資料でございます。
では、なぜ、例えば有事法制だけが問題だから国内法ができないというんだったら、ジュネーブ条約が日本の平和にとってどんなに重要か、そして大戦中これを無視したために多くの日本の兵士がどんなにもう涙を流しながら南海で朽ち果てていったか、当然言うべきじゃないですか。どうして、その周知、教育義務を徹底していないのか。あるいは、学校教育とか、あるいはそれをある意味で資格化させて、資格教員みたいな形でやっていかなかったのか。それはどういう理由によるんでしょうか、外務大臣。
○首藤委員 それでは、井上大臣にお聞きしますけれども、これをどういうふうに今後積極的に普及させていくか、その具体的なプログラムについて御説明をお願いしたいと思います。
○首藤委員 いや、大臣、そこは違うんですよ。私はたまたま教育という話をしていますけれども、それは、小学生がというんじゃなくて、例えば全公務員がこの問題をよく知っていないといけない。緊急事態というのは全公務員が対応するわけですよ。ですから、具体的なプログラム、これはこの今回の一連の国会質疑の中でまた質問をさせていただきますから、それまでにはプログラムもきっちり回答できるようにしていただきたいと、ぜひ、切に切にお願いしたいと思います。
私は思うんですが、この問題に関しても、防衛庁でもそれはきちっと教えていますという話を聞いています。しかし、有事は、ジュネーブ条約、プロトコールの追加議定書第一をよく民防条約というふうに訳す方もおられますけれども、それぐらい民間防衛の問題なんですよ。
ですから、そこで重要となるのは実は警察官なんですが、我が国において、警察官はジュネーブ条約をどの程度告知され、それに対する警察における教育プログラムはどのようになっているかを国家公安委員長にお聞きしたいと思います。
○小野国務大臣 一般教養の中におきまして指導させていただいているところでございます。
○首藤委員 いや、それは違うんじゃないですか。これはもう本当に、今度有事になれば、警察官は最前線に立つんですよ。そこで、例えば戦闘になった場合、捕虜を扱ったり、あるいは非戦闘員、あるいはその捕虜に実は敵側に協力するという人も出てきたりする、あるいはこれを機会に何か犯罪をやったりする人もいる。
そういういろいろなことがあって、まさに警察官はこのジュネーブ条約の最前線に立たされるわけですから、現時点ではどの程度まで周知が進んでいるのか、そして、それが足りないとしたら、どのような教育プログラムをつくられているのか、お聞きしたいと思います。
○首藤委員 ジュネーブ条約というのは、非常に重要なことは、一括の七法案三条約の中の重要な法案であります、米軍との協力関係において非常に重要なんですね。
というのは、これはもう御存じのとおり、日本が敗戦後一時期、日本は自然権的な自衛権までも放棄しなければいけない、あるいは放棄すべきだという有名なマッカーサー書簡が出ておるわけですが、それが否定されて現在の九条になっているというのは御存じのとおりです。それでも、実際に有事になったときにどうするかというところで、日米安保というのが存立していたわけですね。
その過程において、その存立の前提として、ジュネーブ条約というものは日本の安全保障においてそれほど重要な影響を及ぼしてこなかったわけですが、今般、この一連の有事法制をつくるに当たって、日本は果たして国際社会の条約に従うべきか、あるいはアメリカとの関係に従うべきかという非常に難しい問題が実は登場してきているんです。
そこで、これは代表質問のときも申しましたが、これは提案者である井上大臣にもう一度お聞きしますが、有事において、アメリカ軍と日本軍とが共同して行動するわけです。当然、調整も行う。しかし、最後はだれかが決めなきゃいけない。これは、二人で一緒に手をつないでよいしょとやるわけじゃないんですよね。
ですから、一元的な指揮権をだれがとるかということが明記できないと、この有事法制というのは機能しないんです。その一元的な指揮権はどちら側が把握するとお考えでしょうか、大臣。
○井上国務大臣 一元的に行動をしていく、したがって、責任も一元的にとっていく、そういうことを想定していないわけでありまして、まさにこれは共同対処なんですね。十分に調整を図りながら、日本は日本として、米軍は米軍として行動するということでありますけれども、それはあくまで、お互いの意思疎通あるいは調整メカニズムを通して同じ目的のために協力をしてやっていく、こういうことでありまして、いずれが優位に立って行動を決定していく、そういうものではないわけであります。
○首藤委員 いや、大臣、そういうごまかしは許されないんですよ、実際のこの法案において。
一緒に共同歩調をとっていく。では、あるものがあって、それを撃て撃てと言うか、あるいはあれは撃っちゃいけませんと言うか、お互いにどうやって調整するんですか。そこで会議を開いて調整するわけにはいかないでしょう。
なぜ私がジュネーブ条約をこれだけしつこく聞いているかというと、まさにジュネーブ条約というのは、今までの日米安保システム、そこと違うモードが入り込んでくるわけですよ。ですから、今ここで問題になっているのは、日本は、何か問題があったときに、国際社会の規範に従うか、あるいは日米関係の規範に従うかということなんです。そのコンテクストにおいて、一元的な指揮権をだれが握るかということなんですよ。それは大臣としてはどちらなんですか、いかがですか。
○井上国務大臣 日米を拘束しますのは、日米間の条約ですね。これをもとにして日米が行動するということでありまして、その行動につきましてどちらかが一元的に指揮権を持つとかということになっていない、お互いがよく連絡調整をしながら共通の目的に向かって対処をする、こういうことになっているわけでございます。
○首藤委員 ここは私は、もう避けて通れないところ、一番大事なところだと思いますよ。実際に、この法律の中で最も難しいところかもしれない。違う要素があるんですよ、違う系なんですよ、違う体系なんですよ。ハーグ陸戦協定から来て、そしてジュネーブ条約になって、これは人道条約になってきているんですよ。そして、さらに追加議定書ができてきている、人間の保障という概念が入ってくる、国際刑事裁判所ができてくる。こういう一つの系、システムと、日米のシステムというのがあって、さらに、それはある意味で単独行動主義という形で、アメリカ中心主義ということについて、また深化しているわけですよ。違う方向を持った二つの系があって、それを一緒にしているのがこの七法案三条約なんですよ。
その中において、実際に、有事において一緒に協力してやりますとか、そういうのはできないんですよ。ですから、韓国においては、一元的な指揮権は当然アメリカ軍が握るわけですよ。当たり前のことです。そうしなければ軍事行動なんてできないんですよ。会社だってそうじゃないですか。社長が二人いる、会長が二人いるとか、人事部は二つあるところがあるかもしれないけれども、そんなことはあり得ないんですよ。いかなる組織、いかなる管理でも、それは一元的なものでやらなきゃいけない。
だから、それをだれが握るかということが重要でありまして、それも、ただ重要というんじゃなくて、日米関係、日米安保、それから今度入ろうとしているジュネーブ条約において、この七法案三条約の中において、だれが最終的な責任をとり、だれが一元的な指揮権を握るのか。委員長、これに関して統一的な政府見解を求めます。
○首藤委員 さて、本当にこの法案というのは、私は難しい。代表質問の中で、こんな、七法案三条約を一遍に出すのは神を恐れぬ行為だというふうに言わせていただきました。本当に私自身も、これは専門家でないからいろいろ勉強させていただいていますし、毎日毎日少しずつ進歩してきたという、自分でも実感を持っています。
しかし、これをやっていく上で、常に基本的なところでぶつかってしまうんですね。例えば憲法とこの法案との関係などがそうなんですね。
憲法というのは、御存じのとおり、これは平時を予想している。平時どころか、もう恒久平和、もう戦争は関係なくて、日本が巻き込まれちゃいけない、もし巻き込まれるようなことがあれば、それは国連、国際社会が助けてあげますよ、だから自衛権だって本当は要らないですよという形でできている憲法と、現実に、いや、やらなきゃいけない、万一はアメリカと組んでやらなきゃいけないんだ、あるいは国際社会を動かしてやらなきゃいけない、やったことが国際社会で罰せられるかもしれないから国際社会に対してもいろいろ配慮しなきゃいけないという非常に難しい問題なんですね。
いわゆる緊急権というものを世界的に考えていく。これはやはり、先ほども、この質問の中でも、何度も人権、人権ということがあって、それは平時における人権と、例えば、もう負傷者が目の前にたくさんいて、この人たちにランクをつけて、助かる人と助けられない人とを分けなきゃいけない人権と同じものかという質問を前にさせていただきました。回答は不明瞭。これもまたいろいろ詰めていかなきゃいけない問題があると思うんですね。
そこで、いろいろ勉強しますと、やはり緊急時には思い切ってやらなきゃいけないということがある。それは何かというと、これは非常大権。大統領非常権限とか非常大権というものがありまして、これは日本の旧憲法にもありました。だから戒厳もあり、天皇の非常大権というものもあった。
今、こういう非常大権を持っている国というのもたくさんあるわけでありまして、例えばフランスなんかそうですよね。フランスはプーボワールエクセプシオネールという非常大権、エクセプショナルなパワーということで非常大権を規定しているわけです。これがだれにあるかというと、これは大統領にあるんです、大統領にある。
日本のこの今回の七法案三条約を見るにつけ、あるいはその前に成立した緊急事態法制を見るにつけ、全部内閣総理大臣なんですよ。最後は内閣総理大臣がやる、内閣総理大臣がやる、内閣総理大臣がやる、最後は内閣総理大臣、こういうふうになっているんです。
内閣総理大臣というのはプライムミニスターですね。要するにミニスターの中の一番、諸大臣の中の一番重要な大臣が内閣総理大臣でございますね。考えてみれば、この方は元首でもない。ですから、元首でもない、その諸大臣、事務を扱っている行政の長であるところの大臣、その大臣の中においてちょっと頭一つ先んじている内閣総理大臣に、どうしてさっき言われるような非常大権というものがあるのか。元首でもない総理大臣に、大統領でもない内閣総理大臣に、どうしてこれが、権限が集中することができるのかということを、その法理を内閣法制局長官にお聞きしたいと思います。
○秋山政府特別補佐人 お尋ねの大統領非常大権、これは法律学ではいわゆる国家緊急権という言葉で議論されるものでございます。すなわち、戦争とか内乱、恐慌、大規模な自然災害など、平時の統治機構をもっては対処することが困難なような非常事態におきまして、国家の存立を維持するために国家権力が通常の立憲的な憲法秩序を一時停止して非常措置をとる権限というふうに考えられております。
それで、フランスでは、御指摘のとおり、フランス第五共和国憲法は第十六条でそういう規定があるわけでございます。それから、大日本帝国憲法でも、先ほど御指摘のとおりのものがございます。日本国憲法においてはこのような規定は存在しておらず、したがって、先ほど申し上げたような国家緊急権というものは現行の憲法下では認められないものと考えております。
ただ、現行憲法下でも、大規模な災害とか経済的混乱などのような非常な事態に対応すべく、公共の福祉の観点から合理的な範囲内で国民の権利を制限し、あるいは義務を課す法律を制定することは可能でございまして、災害対策基本法、国民生活安定緊急措置法など、既に多くの立法がございます。今回提案しております有事関連の法律も、そのような系列のものに入るものと考えております。
○首藤委員 いや、内閣法制局長官、それは詭弁ですよ、あなたらしくない。
恐らく、それはまだ法律の空白部分なのかもしれない、討議されていない部分かもしれない。しかし、災害が起こるというのは、例えばそれは長崎の雲仙岳でもそうですが、局所的であり、一部的であり、一過性のものですよ。しかし、ここで論議されているのは、我が国の独立を守るための法律なんですよ。ですから、対象は我が国そのものであって、それを個別的な、一時的な緊急権という形で災害基本法などと並列に考えるのは、法律家として認められる行為ではないと思いますけれども、もう一度お答えをお願いします。
○秋山政府特別補佐人 累次、この国会に至る前にも政府側から答弁しておりますけれども、今回の法案は、現行憲法のもとで、基本的な人権の尊重に十分配慮しつつ、事態の特性に応じて必要な制約を加えるというものでありまして、これは、冒頭申し上げましたような国家緊急権の発動というものではないというふうに考えております。
○首藤委員 おっしゃるとおりです。だから、これは、国家緊急権の発動ということは定義されていないんですよ、憲法では。だから、憲法の範囲内でやるしかない。しかし一方、必要としているのは国家緊急権なんです、何らかの形での。まさにそこで必要とされるのは、非常大権、プーボワールエクセプシオネールですよ、本当に。
ですから、唯一私たちに残されたのは、その憲法と、沈黙している憲法と具体的な事例である国民保護法制をつなぐ基本法を前提としなければこの国民保護法は成立しない、それの前提がなければこの法案は本当に成立しないということを最後に意見として言わせていただきます。
以上で終わります。
○吉井委員 上陸という攻撃があって、それで地上戦という想定は比較的イメージしやすいパターンなんですが、せんだって、赤嶺議員の本会質問への答弁では、本格的な侵略事態の生起の可能性は低下しているということを大臣は言っていて、国民保護法制本部の担当者自身がこのようなことは現実にはほとんどあり得ないと言っているわけですね。
ですから、それで考えるわけですから、現在、上陸侵攻を実行し得る意図と能力を持った国は存在するのか、意図と能力を持った国。それをどう考えていらっしゃるかを重ねて伺っておきます。
○吉井委員 近代戦、近代における戦争の性格、とりわけ弾道ミサイル攻撃などを考えると、住民避難による国民保護という対応というのは、そもそも保護措置としての実効性に大変疑問のあるものです。
それから、これまでの戦争の歴史とともに人類の進化というものもあって、武力によって切り取り勝手の時代から、あるいは帝国主義戦争の時代から、やはりそういうものを許さない方向へ人類そのものが発展してきているという歴史の中で、これからどういう二十一世紀以降の社会をつくっていくかということを考えなきゃいけない問題があります。
経験からしますと、例えば予測事態で避難といっても、沖縄戦のときでいえば、予測して学童疎開という避難を図った子供たちが乗船していた対馬丸が撃沈されて命を落とすとか、避難すれば安全ということにはならない。それがこれまでにおける戦争というものの実態であります。
ゲリラや特殊部隊による攻撃についても、四つの類型のうち可能性として想定される事態、このタイプは、敵性国家がゲリラを日本に潜伏させたり、特殊部隊が不審船や特殊潜航艇で日本へ侵入する事態であろうというふうに言われておりますが、そのときに、予測事態から住民避難をするということにしても、本来、ゲリラや特殊部隊による攻撃に対しては、軍事力で対応するということはともかくとして、果たして大規模な住民避難は可能かどうかということが、問われてくる次の問題だというふうに思います。
それで、上陸攻撃を受けて、あるいはその他の攻撃を受けた住民が避難した経験というのは沖縄戦ですが、鳥取県の住民避難シミュレーションによると、鳥取県東部の全住民二万六千人がバスで陸路兵庫県に避難するのに十一日間要するという。鳥取県主催の第一回国民保護フォーラムで鳥取市が、鳥取市民十二万人を避難させることは検討の余地を超えているということも言っていますね。あなたは今、地方自治体で考えてもらうという話ですが、地方自治体は既に考える域を超えているんですよ。
この鳥取の国民保護フォーラムで陸上自衛隊連隊長が、沖縄戦の住民疎開の教訓で最も重要なのは、戦闘地域に住民を残さないことなど、戦闘地域からの住民の排除、避難の誘導に当たっては、軍事行動に住民避難が障害にならないようにすることに主眼が置かれておりました。これで国民保護を考えていると言えるのか。
井上大臣、聞いておきますが、そもそも一つの県の規模で住民避難などは現実には不可能ということになるんじゃないですか。
○井上国務大臣 鳥取県がどういうような想定でどういうような訓練をされたのかつまびらかには承知をいたしませんけれども、これは考えられる限り、都道府県の段階で、あるいは市町村の段階でよく検討する、国の段階でも検討するのはもちろんでありますけれども。そういう中で、一番効率的に、迅速に避難をする方法をこれからもよく検討していく必要があると思うんですね。
たまたま鳥取県においてそういう結果が出たからすべてそうだというんじゃなしに、鳥取県だって初めての経験だと思いますので、訓練を積み重ねることによりましてもっと迅速な対応が可能になってくるんではないか、こんなふうに考えます。
○吉井委員 井上さんも私と大体同じ世代に属しますから、委員長もそうだと思いますが、戦争中に生まれ育って、戦争というものを知っている、あるいは小さいながらも経験している世代ですよね。
実際、上陸攻撃を受けて避難できるのか。それはできないというあの沖縄の経験があるわけです。空襲を受けたときに避難できるか。東京も大阪大空襲も、とてもじゃないがそんなことはありませんでした。
鳥取県というのは過疎の県ですよね。第二次大戦のときは大都市部から過疎の方へ疎開したんですよ。過疎の……(発言する者あり)いや、失礼とおっしゃるかもしらぬが、大都市に比べれば少ないからなるわけです。特に兵庫県との境界あたりは決して人口密集地でないということはよく御存じですが、そういう人口の少ないところから大都市とか人口の多いところへの疎開というのはそもそもないんですよ。それでも想定を超えるという話なんですよ。
弾道ミサイルだったら、あなたがさっきおっしゃったように、そもそも穴の中にすっ込んでといいますか、余り外へ出ないですっ込んでおるしかもう方法はない。ですから、国民保護ということを言っても、現実問題としては、それを地方自治体でいろいろな対応を考えてもらうといったって、考えようがないんですよ。住民避難ということを考えるとすると、結局、そもそもそれは現実的に考えることはできないというのが実態なんです。
そこで、石破大臣、さっき国民保護フォーラムでの陸上自衛隊連隊長さんのお話を私しましたが、大体、戦闘地域に住民を残さないことだ、最も重要なのはこのことだということを話をしておられます。つまり、軍事行動に住民避難が障害にならないようにするという発想、これで国民保護を考えているというふうにあなたは考えているんでしょうか。
○吉井委員 国民的経験というものは、私たち戦争の時代に育ってきた人間というものは、沖縄県民を見捨てたのが軍隊だった、がまに住民が逃げ込もうとすると、軍隊が先に占拠していて県民は中へ入れてもらえなかった、泣き叫ぶ赤子が軍の手で殺されていったりもしました。九万四千人の県民が命を落としていますが、この間もお話ありましたが、十五万人以上とも言われている民間人が犠牲になりました。
ミサイル攻撃や空襲、上陸地上戦ということを想定すると、国民保護法を制定して国民を保護するということは、これは非常にバーチャルな発想であって、できない。
だから、一番大事なことは、有事を生み出したら国民は守られないわけですから、武力攻撃を受けない国、有事を招かない国、それをどう実現していくかというところに外交の力を強化していくという、一番大事なことといえば、一番の有事というのはやはりこのことだと思うんですが、ここは川口大臣に伺っておきたいと思います。
○川口国務大臣 紛争を予防するために外交努力を重ねなければいけない、これが重要であるというのは、まさに委員がおっしゃったとおりであるというふうに思います。
○吉井委員 具体的に四つの攻撃類型を言ってきたけれども、それに対しては、実際には、住民避難というのは現実問題としてはできない、そういう状態を招くわけですから。ですから、大事なことは、そういう大規模な住民避難などということを必要とするか否かということ自体が大変大きな疑問になってくる問題で、私は、予測事態で住民避難、これが国民保護法制ですが、仮に立法者の立場に立っても、予測事態で住民避難というのは可能なのか、それは否ですね。
現実に避難とはどういうことか。鳥取のシミュレーションを考えてみても、それは一つの県のシミュレーションということだけになるものじゃなくて、もっと大規模な都市になれば、もっとそれは現実からは遠くなります。沖縄戦の経験からしても、これは国民保護にはなってこない。
やはり、最大の有事対策、国民保護というのは、戦争や有事を招かない外交の力、政治の力をどれだけ強めていくか、そのことが大事であって、そういう立場に立った、本当の意味での有事を招かない対策というものを真剣に考えなきゃならぬということを重ねて申し上げまして、時間が参りましたので、質問を終わります。http://www.shugiin.go.jp/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/013415920040420005.htm
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