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新聞産業で働く青年・女性の全国学習交流集会 [斎藤貴男さん講演]【よし、戦おうじゃないか】
http://www.asyura2.com/0403/war54/msg/557.html
投稿者 なるほど 日時 2004 年 5 月 03 日 21:41:02:dfhdU2/i2Qkk2
 

(回答先: 朝日バクダッド特派員、優雅なネット探索記事【ファルージャ、サダム元部隊復権の日を隠蔽】 投稿者 FakeTerrorWatcher 日時 2004 年 5 月 02 日 19:52:37)

新聞産業で働く青年・女性の全国学習交流集会in北海道
基調講演ジャーナリスト・斎藤 貴男氏

  新聞社に明日はあるのか 働き甲斐のある仕事と職場 あなたならどうするか」というお題を頂いています。結論から言いますと新聞社には当然明日はあるし、大いに働き甲斐のある職場であるといえます。しかし、簡単にそうできるものではない。今、新聞社というのは非常な正念場にあります。インターネットをはじめメディアが登場し、新聞の存在意義が薄れてきたように見えること。速報性ではテレビ以外でもかなわないものが出てきたし、充実性も雑誌などに劣りやすい。ちょうどはざまに置かれた環境である。また、ジャーナリズムという点では、立ち位置が曖昧になっている。そこをクリアにして望ましいポジションに立ち、多くのメディアのなかでも存在意義を確立しないことには危ういことになる。若い方々に新聞そのものがかかっているし、働き甲斐のある仕事にするには皆さん一人一人にかかっていると言えます。
 世の中にはたくさんの仕事がありますが、新聞社の他所にはない決定的な違いは、言論で仕事をしているということです。商品であるから品質を良くしたり、値段をやすくしたりという共通性は在りますが、時には世の体制に対して棹をささなければならない時がある。一般の人に受け入れてもらえないことがあるかもしれないが、それでもやらなければならないことが非常に多い。そこをクリアに出来れば、これほどすばらしい職業はないと思っています。

http://www.shinbunroren.or.jp/seinen/saito1.htm

少し詳しく自己紹介しますと、私は大学を出てから日本工業新聞に勤めます。そこは産経の子会社ですが、人気のない新聞だったわけです。特に経済記者志望でない人が集まって、それでも記者をやりたい一心でやっていました。しかしそれからたった3年で仕事をやめ、週刊誌などに書き、ここ12,3年はフリーでやっています。今でもジャーナリズムの王道は新聞だと思っていますし、もし生まれ変わって仕事を選べるのであれば、今度は本格的な新聞記者をやってみたいと思っています。それほどすばらしいものだと言うことです。
  王道と言う理由のひとつは影響力の大きさです。結局雑誌やフリージャーナリストは訴えかけられる読者の対象が限られています。有り体に言えば部数が少ない。テレビはジャーナリズムというのとはちょっと側面が違う。エンターテイメント性が強い。世の中における新聞の影響力はまだまだ大きいし、これからも大きくなければならない。ただ問題は、現状がその大きな影響力にふさわしいものとはいえない事です。新聞は僕が知っているここ二十数年の間で最低の状況にあるといえる。例えば北朝鮮の拉致事件の報道を見ていると、大新聞ともあろうものが非常に煽情的な報道をしている。遺族の人たちに密着取材をするのはいいのだが、あくまでも個人の話として話している北朝鮮への憎しみをそのまま新聞に載せる。そして日本政府がんばれと、まるでスポーツでW杯のサッカーを報じているような感覚で国対国の対立構造をあおっているように私には見える。永住帰国の問題でも、内閣参与の中山さんが「本人の意志がどうあろうが、国としてそうさせる」という発言をしていました。やはりこれはおかしいのではないか。一連の報道を見る限り、本人はどうでもよいと、国としての面子が第一という考えに新聞が引きずられているようにしか思えない。私にしてみれば、本人の意志以外に何が必要なのか思う。日本も北朝鮮も政府がやるべきことは、その人たちが今後好きなように生きることの出来る自由を保障することであって、その方向にこそジャーナリズムは向くべきだった。いつのまにかこの事件が単にナショナリズムをあおったり北朝鮮差別をあおったりしており、非常に恐怖を感じています。

http://www.shinbunroren.or.jp/seinen/saito2.htm

小泉政権の第二次の内閣が出来ました。新閣僚の顔ぶれをどの新聞社も載せますが、これを見ていて大きな問題を感じています。顔ぶれの紹介が完全なご祝儀原稿になっていること。一人は、防衛庁長官に就任した石破茂さん。衆院憲法調査会議において、徴兵は憲法違反ではないと発言した人です。命をかけて国を守ることは喜びであって苦役ではないから憲法違反ではないと。そもそもその時点でさえ、ほとんどの新聞がその発言を取り上げていない。週刊誌のサンデー毎日が直接取材をし、取り上げているだけです。ここで大きな問題なのは、徴兵制は、はっきり憲法違反なのです。日本政府が80年に政府見解として出している。それほどの重要な発言をした人が防衛庁長官に就任したのに紹介欄では一言も載せていない。新聞社の罪は重い。一衆議院議員ではなく、防衛庁長官になったときでさえ報道しなかった、だから読者は誰も知らないわけです。また自民党きっての安全保障問題の論客と報道していた。政府見解も知らないのに論客だというのです。雑誌で自宅の様子を紹介していましたが、戦車のプラモデルだらけでした。つまり戦争オタクなのです。同じオタクといわれる人種でも立場が違うと、こうも扱われ方が違うのかぞっとしました。戦争オタクが、防衛庁長官になって、しかも十分な知識もないままに徴兵は違憲ではないという発言を平気でするような人間であること、これを新聞は全く報じない。石破茂さんが全くの戦争オタクのままで防衛庁長官になったのであれば国民の不利益は多大なものです。
  もうひとつは、竹中平蔵さんが、経済財政諮問担当大臣に加えて、金融大臣を兼任することになったこと。どこも触れなかったのは、昨年国会でも審議された彼の脱税疑惑です。1月1日の前に毎年彼は住民票を海外に移し、日本にいない。すると、日本の住民税がかからなくなる。これは必ずしも違法ではないかもしれませんが、少なくとも経済をつかさどる担当大臣の節税方法としては行き過ぎである。これも新聞ではなく、週間ポストが報じて、国会で質問にいたった。竹中さんは、しどろもどろの答弁をし、そのままになっている。そういう疑わしい人物が留任どころかより多くの権限を持ってしまった。彼の税制改革の主張は大企業や金持ちには限りなく優遇し、その分貧乏人から取り立てるというものです。とにかく影響力を持つ彼が、自分は脱税に近い節税をしている。これもまた、新聞の紹介では一言も触れていない。人間観を語るのに必要な要素であったが、それを押し殺してしまった新聞は一体何なんだと思うわけです。

http://www.shinbunroren.or.jp/seinen/saito3.htm

実は今、日本の国で最も顕著になっている問題は、国家の存在が肥大化してしまった事です。今までが官僚支配であり、国家権力は小さな政府だと言われていたのですが、実はどうも逆ではないかと思います。規制緩和だとか小さな政府だと言われる背景はグローバリゼーションです。日本の国のあり方がアメリカのようになっていく、と言うことは単に国境がなくなるだけではない。自然になる部分もあるが、具体的には日本の法律だとか社会制度だとかシステムだとかを通してグローバリズムが進んでいくわけです。法制度なりを実際に動かしていくのは国家ですから、国家の力が強くなるのは必然なのです。
 そこで最近急激に変わってきていることがあります。それは「市民」という言葉の使われ方です。4,5年前までは「市民」と言う言葉を使う人は反体制派の人たちでした。最近はむしろ権力中枢にあるひとが使っている。「市民」という言葉の意味が違ってきている。
 「市民」の語源はギリシャ時代の都市国家の市民である。金持ちのブルジョアは自動的に市民である。それ以外の人が市民になるにはそれだけの義務を果たした。義務とは兵役でした。今の日本では金持ちも貧乏人も等しく市民と呼ばれている。デレック・ヒーターというイギリスの政治学者が「市民権とはなにか」という本を出していて、これを読むと市民権の言葉の変化が良く分かります。市民権には、自由主義的市民権と共和主義的市民権とに分けることが出来る。自由主義のほうは、人間の権利を中心に考えたもの。共和主義は先のギリシャのように義務を中心にした考え方です。戦後は特に自由主義が行き過ぎたので、共和主義が見直されていますよという指摘です。古いタイプの保守の人が言っているのではなく、むしろ臣従主義者たちが乗っかっている。グローバリゼーションの中で、小さな政府を目指すと言っている人たちですが、具体的には教育とか福祉の政策を切り捨てたい人たちです。その理屈を正当化するロジックとしてこの共和主義的市民権を使うわけです。つまり、金も税金も払わない、兵隊にも行かない、この人たちは市民ではないのだ、その人たちに対してどうして福祉をしなければならないのか。こういう論理展開において共和主義的市民権が復活している。
  それは住民基本台帳ネットワークにおいて顕著に表れている。5年ぐらい前からずっとこの問題を追っていますが、70年代に論議された国民番号制度の復活であると論陣を張っていました。一連の構造改革の中で、人々の貧富の差がますます広がってしまいました。一種の身分社会のような世の中が作られつつあります。99年の末に住友不動産で夜のセクハラ大運動会というスキャンダルがありました。忘年会だったのですが、人事部主催で参加した女性達は全員派遣だった。こうなると、ただ単に仕事上の上下関係ではない。構造改革というのはやりよう次第によっては人間の身分格差になってしまう。差別意識というのも出来上がっていくわけです。

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もうひとつグローバリゼーションというのは必然的に戦争をもたらします。今、ほとんどの製造業が海外に進出していますが、97年に経済同友会の代表幹事だった牛尾治朗さんは、「アメリカでは企業が進出した先で何かあれば、空母が来て守ってくれる。しかし日本では自衛隊の海外派兵が出来ないからわれわれは指を加えて見ているだけだった」と言っています。前後して経済同友会が集団的自衛権の行使を求める提言を行い、このあたりがベースとなって今の有事法制が作られているわけです。戦争の出来る国づくりというときに、日本には日本なりの事情もあるという考えが経済界と政府与党の中にはあるわけです。海外にある日本企業が行った先の国で内戦がある、権益が侵されそうになったときに自衛隊が行って脅しをかける。全くアメリカと同じような行動原理が日本でも取られようとしている。これをこのままにしておくと、戦後のアメリカがずっと戦争をしていた事が日本もなる。構造改革による身分格差の拡大、日常的な戦時体制になっていく。つまり、戦後半世紀の日本社会を形作ってきた平和と平等を前提とし理想としていた社会構造がはっきりと変わっていくことが今予定されているわけです。そうすると社会秩序は崩壊します。国として犯罪が増えたり、反体制運動が盛んになっている状況は困る。そこで出てきたのが監視社会化という流れだと私は解釈しています。
  住基ネットが騒がれだしたのは施行ギリギリになってからですが、そのきっかけは大阪の代議士が自由主義社会にとって脅威になりかねないと、自民党内におよそ20人の抵抗勢力が出来たことでした。その人達を動かしたのは櫻井よし子さんのグループでした。昨年9月に立ち上げていた、住基ネットに反対する会が活動を繰り広げてようやく、自民党の人たちを動かしたわけです。自民党が動いて初めて新聞やテレビでも取上げるようになったわけです。自民党のお墨付きがついたから、住基ネットを反対とやっても叱られないかな、とか8月の施行が決まっていてもう覆されることはないからいいかなと、マスコミのへっぴり腰の姿勢が見え見えであった。様々な分野で同じ事が今のマスコミに言えます。毎日いろんな新聞が沢山のページを割いて発行されている割には大きな問題がいつのまにか隠されたまま進行している実態がある。

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そういう過程の中で昨年9月11日に同時多発テロが起こるわけですが、この翌々日の朝日新聞の天声人語でかなり恐ろしいことが書かれています。最後の方に「よし、戦おうじゃないか」と書いています。同じ日の紙面でブッシュ大統領が「これは戦争だ」と発言したのが一面トップ、下の方に「小泉首相はブッシュ大統領を支持」という短信があって、天声人語で「よし、戦おうじゃないか」と。これはもうブッシュと小泉と同一歩調を朝日は取ると宣言をしてしまったことになる。まだ何も分からない段階でそういうことをしてしまった。そしてアフガニスタン空爆が始まったら、限定的ならやむを得ないという有名な社説になるわけです。この時「この人たちは本当に新聞記者なのか、これじゃ官僚と一緒じゃないのか」と思った。東大を出て勉強は良く出来る、しかし人へ何かしてあげようという気持ちがない、エリート意識のみ肥大化した人たちがこういう状況に直面した時にパニックになります。おとなしくしていればいいものを自分は指導者だということで、何か無理やり世間を動かそうとする。そこで「よし、戦おうじゃないか」と軽軽しく言ってしまう。戦争に参加している自分や自分の身内、友人を全く想像していない上での発言なのです。あくまでも戦争をする、しないを決める立場ではあるけれども、全く自分は戦争に参加しない安全圏からだけ物を言っていると私には見えたわけです。現在は政治や官僚の状態が良くないわけですが、それをチェックするとしたらそれが出来るのはマスメディアだけなのに、それをしない。むしろそっちに同調してしまっている、そういう状況です。記者には、単に爆弾をくらって死ぬ人、兵隊として連れて行かれる人、従軍慰安婦にされる人、そういう人たちに対する想像力が全くないのです。
  新聞ジャーナリズムはある意味では第四権力であっていいと思います。立法、司法、行政3つの権力に対するチェック機能として力があっていいと思う。然るに今現在の新聞ジャーナリズムはまるで残る3つのプロパガンダ機能になってしまっていると思う。
  崩れ行く社会秩序の中で、インテリだけれども体制そものでない職業がある。それは弁護士や、教師、新聞記者、大学の研究者などで、わりと反体制的なことを言ったり、書いたりしても許されていた。しかし、この職業がいつのまにか体制の側に取り込まれて来ている。例えば弁護士は、司法制度改革で、法科大学院卒が条件になってきている。今まで司法試験は学歴不問であったが、裕福な家庭の子供など一部の人たちにしか扉が開かれない。そうなるとおのずと判決の傾向も変わってくるであろう。大学研究者にしても大学改革のなかで上に評価されないと生き残っていけない。教師も校長の権限が強くなっていく中で、単に教えることがうまいだけではいけない。思想信条の自由はこういう社会でも次第に侵されつつあります。

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メディア規制について反対運動を展開してきたけれども、最近少し考え方が変わりました。いずれも個人情報保護法も人権擁護法案もメディア規制であるというが、与野党の間で調整が進んでいます。報道の自由だけがそうではないほかの分野に比べて特別扱いされてしまうと、最悪ではないかと思います。マスメディアが特権化扱いされてしまうと、今後の新聞はどうなってしまうのか。まさに、現実に訪れているプロパガンダ機能がより強化されてしまうことになるのではないか。つまり大本営発表ばかりの新聞が出来上がってしまうのではないかと。むしろジャーナリズムはそんなものはこっちから放棄するような、普通の人たちと同じ立場に自らなるぐらいでなければならないのではと思っています。それぐらい、新聞が単に取材力や情報収集力というのではなく、原稿を書くときの目線をうんと低くしなければこの戦争体制作りの中でとんでもない役割を果たさせられてしまうのではと思うわけです。
  新聞社といっても企業であるわけですから、記者の中にも成果主義的な賃金体系が採用されつつあって、トップの記事を何本書いたかや、上司の評価によって大幅に待遇面に差をつけられると聞いています。しかしだからといって筆を曲げてはいけないと思います。新聞社に入ったからには普通のサラリーマンであってはならないと思います。記者であったなら保身や待遇などではなくきちんとした記事を書くことを第一の価値観とすべきであるし、直接記事を書かない広告や営業人たちもやはりそういう仕事なのだと言うことを分かってもらいたい。僕らフリーにしてみれば、それによって給料が下がったからといってなんだと思うわけです。僕らには給料はないわけです。書きたいことを書いて給料が下がったりポストを外されたりしても首になるわけではない。それならば新聞記者になろうと思った人ならば一時的な不遇は甘んじて受けて本当に書くべきことを書くことが出来なくてはおかしい。それでこそ新聞社に働く事のやりがいが出来てくるのではないでしょうか。またそれをサポートするのが労働組合の役割ではないかと思います。それができてこそ新聞社の意義は従来にもまして強まっていくし、存在価値を高めていくはずなのです。
  新聞は危機的状況に陥っている。けれどもそれはやりようによって輝きを増すんだと言いたい一心でした。世間の新聞を見る目は非常に厳しくなっています。ましてインターネットを見れば何でも分かるという時代ですから、新聞を読まない若者が増えている。例えば鈴木宗男のことでも田中真紀子でも最初にやったのはやはり新聞ではなかった。一部の情熱的なライターが週刊誌で書いて騒ぎになって、それをそれぞれの対立陣営がリーク合戦を繰り広げることによって初めて新聞はそれに乗る形でニュースを増幅していった。そういう話がものすごく多いわけです。
  私は自分を理想のジャーナリストと比べて見るとまだ二軍の補欠レベルだと思っています。その私が講演をしたりと目立っているのはおかしい。それは一軍の人が本当の仕事をしてないからではないかと思います。二軍のわけのわからない奴が、言いたいことを言っていたと、奮起して仕事をしていただければうれしいと思います。

http://www.shinbunroren.or.jp/seinen/saito7.htm



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