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ブッシュの知っているアメリカ
ZNet Commentaries、2004年5月7日
ビジャイ・プラシャド
翻訳：寺島隆吉＋寺島美紀子、公開2004年5月9日
＜イラクにおける捕虜虐待が遂に暴露され始めました。しかし、ブルム『アメリカ国家犯罪白書』（作品社）やチョムスキー『アメリカが本当に望んでいること』（現代企画室、いずれも益岡賢・訳））で既に明らかにされてるように、これは米軍が侵略したところでは常におこなわれてきたことです。しかし以下に紹介する記事は、実は同じことが国内の警察や刑務所で頻繁におこなわれてきたことを明らかにしています。これが「ブッシュが知っている」と称するアメリカです。関連する記事として拷問について（益岡賢、5月7日） も御覧ください。＞
ブッシュは５月５日アルアラビアテレビに出かけていき、アラブの大衆に「アブグレイブ刑務所で起こっていることは私の知っているアメリカを表してはいません」と言いました。ブッシュの知っているアメリカとはいったい何なのでしょうか。「私の知るアメリカは自由を信じる哀れみ深い国です。私の知るアメリカは個々人のことを大切にします。私の知るアメリカはイラクに自由をもたらすために軍隊を送りました。毎日イラク人を助けている良き立派な市民です。」
1990年12月19日、アムネスティインターナショナルはクウェートでのイラク軍による虐待に関する報告書を発表しました。顕著だったのは保育器の窃盗とそれによって当然起こりうる300人以上の赤ん坊の殺人でした（後にアムネスティは保育器についての話を撤回しています）。1991年１月19日、ブッシュ大統領は、ブッシュの戦争（パート1）に対する支持を手に入れるために書いた民衆向けの手紙において、この報告書を大いに利用しました。
米国は暗黒世界の人権を守るためのチャンピオンだと称しています。そして「中東」を解放するために「中西」（ヨーロッパを中心とする有志連合軍）を送り出しています。
その一方で、シカゴでは暴露された事実、別の心地よくない事実を隠蔽しなければなりませんでした。アムネスティインターナショナルはまた同時に報告を発表しましたが、それは結果的に発表されませんでした。表題「イリノイ州シカゴにおける警察の拷問という主張」という、1990年12月からの報告書が示していたのは、エリア２という警察署が逮捕された黒人青年に対していかに野蛮な方法を使用していたかというものでした。
エリア２の警官はたとえばマディソン・ホブリー、スタンリー・ハワード、レナード・キッド、デリック・キング、レジナルドとジェフリー・マハッフェイ兄弟、アンドリュー・マクスウェル、リロイ・オレンジ、アーロン・パターソン、アンドリューとジャッキー・ウィルソン兄弟といった黒人グループを逮捕しました。そのひとりひとりは、警官がいかに彼らをぶちのめしたか、熱いラジエーターでやけどをさせたか、ビニール袋で顔を覆い窒息させ、生殖器に電気ショックを与えたかを詳細に語りました。
我々米国はクウェートを解放するためにイラクを爆撃しました。でも誰も警察署エリア２を爆撃しませんでした。ブッシュ大統領はこの暴行について何の発表も行いませんでした。
ブッシュの戦争（パート2）で、ブッシュはアブグレイブでの事件に吐き気をもよおしたと言いますが、当然です。しかし、彼は自国内での拘留中の暴力・強姦・拷問についての絶え間ない報告には言及していません（グアンタナモにおけるキャンプ・エックスレイにおいても同様です）。ここではヒューマン・ライツ・ウォッチ（2001）から数例を例示しましょう。
1999年７月１日、フロリダ州刑務所で４人の看守がフランク・バルデスを殴り殺しました。看守たちはバルデスを肋骨が折れ革ブーツの跡が彼の体に残るほどひどく殴打しました。看守たちはバルデスが自分で自分を傷つけたのだと主張しましたが、2001年２月、州政府は彼らを殺人罪で起訴しました。
2001年６月、州政府はカリフォルニア州のコルコラン州立刑務所の看守８人を、彼らが収容者同士を(古代ローマの)剣奴(ど)スタイルで闘わせた罪で告訴されていたにもかかわらず、無罪放免にしました。
それ以前の1999年11月に、州政府は４人の看守が非常に凶暴な囚人に収容者の一人を強姦させるお膳立てをしていたにもかかわらず、彼らを不起訴にしています。
さらに1999年12月から、次のような事件が複数の女性刑務所で起こっていました。
カリフォルニア州は、11人の元看守と刑務所職員を、16歳の女性囚人に対する性的暴行と性的嫌がらせの罪で起訴しました。その刑務所は民間の矯正会社によって運営される群刑務所でした。
ニューメキシコ州では、刑務所の看守に、囚人の強姦と連邦公民権法違反の罪で、陪審は有罪を宣告しました。ニューヨーク州では、２人の囚人女性に獣姦を強制したことを求めているにもかかわらず、看守に３年間の執行猶予を宣告しています。またオハイオ州では、刑務所職員が３人の女性囚人を性的虐待したとして４年間の刑を宣告されています。
サウスダコタ州では集団訴訟が起きています。というのは非行少女の更生訓練学校に収容されている少女に対して広範囲にわたって肉体的虐待が刑務所職員によっておこなわれたというのです。
その告訴によれば、看守はいつも、少女の衣服をズタズタに切り取ったあと、ワシが翼を広げているような格好で足かせをはめ、裸にしたままでペッパー・スプレイで胡椒を吹きつけ、毎日24時間のあいだ独房に拘置したとされています。
ブッシュがテキサス州の知事だったとき、死刑命令書の最終判断に署名し、5年間に152人の囚人を処刑しました。しかし、彼の刑務所では、たとえば、夏の猛暑の中で女性の囚人を「拘留者用のトレーラー」に収容し水も与えませんでした（これは1999年のドキュメンタリーテレビCourtTVで放映されました）。あるいは、彼の刑務所看守は囚人を強姦し、殴打し、汚物の中を這い回るよう強制し、狂犬に囚人を襲わせ、スタン銃で射殺しています（これもテキサス刑務所労働組合や他の団体によって記録・実証されています）。
米国の看守は、国の内外を問わず、加虐行為・残虐行為を犯しています。しかし彼らはそれを単独でおこなっているのではありません。政治的指導者が彼らの行為を免罪・正当化しているのです。彼らの人間性を剥奪し、彼らを犯罪者やテロリストにまでおとしめているのです。人々は様々な理由によって犯罪行為やテロという手段に訴えるようになっていくのですが、私たちは、それを忘れるように仕付けられているのです。
もし彼らが骨の髄まで悪人やテロリストであり、その存在が悪によって造り出されたものならば、彼らを取り扱う唯一の方法は、彼らを残虐に取り扱い彼らを死刑に処する以外にないでしょう。もしそうであれば、更生、話し合い、政治的解決の道はありません。しかし、たとえブッシュが規則正しく教会に通い、お祈りをしているといっても、世界へのそのような接近法はキリスト教のものではありません。それはマニ教であり、公共のものとなったキリスト教の目からすれば異端の説です。
それは、犯罪行為や暴力行為を産み出す社会的条件を無視し、犯罪やテロという手段を、社会の更生手段の地位にまで引き揚げ、それを人々の心に自然なものとして植え付けるものです。
テロという戦術を止めるためには、政府は政治の世界に立ち戻り歩み寄りの方法を学必要があります。だからこそ、逆に政府は（ブッシュは熱狂的に、ケリーは渋々）我々の敵を悪魔として造り上げ、必死に彼らを爆撃し、意識を失うほど打ちのめし屈服させ、沈静化し鎮圧するのです。
帝国の教育学は、空爆と刑務所における虐待を暗黒国家の抑制策として使用するのです。ペンタゴンはそのやり方を英国から効率的に学びました。「一握りの犯罪者集団が自暴自棄になって警察に抵抗しようとしているが、空爆という恐怖がなければ、彼らの仲間がその犯罪者集団を総体として援助するかも知れない。」（1930）
米国内の残虐行為はイラクに派遣された階層の中では非常によく知られた事実です。その階層は権力のやりかたについて熟知しています。彼らが知っている自由は米国憲法とそれによる保護からの自由です。
http://terasima.gooside.com/znet040507commentaries2prashad.html
題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。