★阿修羅♪ 現在地 HOME > 掲示板 > 戦争54 > 1260.html
 ★阿修羅♪
次へ 前へ
イラク虐待写真をめぐる権力闘争【田中宇の国際ニュース】(ラムジー辞任だと徴兵制復活。イラク情勢悪化の惧れがある)
http://www.asyura2.com/0403/war54/msg/1260.html
投稿者 Sちゃん 日時 2004 年 5 月 11 日 17:33:37:4kC3WMVanvmFc
 

田中宇の国際ニュース解説 2004年5月11日 http://tanakanews.com/

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

━━━━━━━━━━━━━━━━
★イラク虐待写真をめぐる権力闘争
━━━━━━━━━━━━━━━━

 イラクに駐留するアメリカ軍とイギリス軍の兵士が、刑務所に拘留中のイラ
ク人に暴行や虐待を行っていたことを示す写真が世界的に報じられているが、
米軍によるものと英軍によるものと、虐待の光景が写された2種類の報じられ
た写真を比べると、異なる点に気づく。イギリスで流出した写真には、虐待す
る側の英軍兵士の顔が分からないように撮られているが、アメリカ軍の写真に
は、米軍兵士の顔がはっきり分かるように撮られていることである。

(アメリカ軍の写真)
http://www.washingtonpost.com/wp-srv/flash/photo/world/2004-05-03_prisonabuse/index_frames.htm?startat=1&indexFile=world_2004-05-03_prisonabuse

(イギリス軍の写真)
http://www.mirror.co.uk/news/allnews/tm_objectid=14199634&method=full&siteid=50143&headline=shame-of-abuse-by-brit-troops-name_page.html

 拘留者に対する虐待はかなり広範に行われ、その光景を撮った写真が兵士の
間で交換されていたと報じられている。兵士はおそらく虐待を悪いことだと認
識しているだろうから、他の兵士と虐待写真を交換するつもりで撮るのなら、
イギリスの写真のように、虐待する側の顔が写らないように撮るのが普通だ。

(英軍の写真がニセモノだという報道があるが、その一方で英軍による虐待が
以前から広範囲に行われていたという指摘も出ており、ブレア首相の謝罪も発
せられた)
http://news.scotsman.com/latest.cfm?id=2906162
http://news.independent.co.uk/uk/politics/story.jsp?story=520119
http://www.abc.net.au/news/newsitems/s1104680.htm

 アメリカ側の写真には、このような仕掛けがない。虐待する側の兵士が誰な
のか、簡単に特定できる。しかも兵士の表情は、まるで親しい仲間内の宴会の
罰ゲームを撮影しているときのように、くつろいでいる。虐待に関与した米兵
には、捕虜虐待を禁じたジュネーブ条約に関する教育が行われていなかったと
いうが、条約を知らなくても、写真が一般に流出したらどうなるか、容易に想
像がつくはずだ。米軍兵士の表情からは、そういう心配が感じられない。

 虐待の写真を撮る行為は、英米両軍の上官が囚人に対する虐待を「黙認」を
超えて「奨励」していたことを示唆している。上官が「虐待はない方がいいが、
欲求不満の兵士が囚人を殴ったりするのは、ある程度は仕方がない」といった
「黙認」だけをしているのなら、虐待しても、その光景を写真を撮って自分か
ら証拠を残すことはやらないだろう。兵舎での持ち物検査などで上官に写真を
見られたら懲戒されるからだ。

 米軍の場合、虐待だけでなく写真撮影も、兵士の業務の一環として行われて
いた可能性がある。顔を写された兵士たちは看守部隊の要員で、監獄内は職場
である。報道された写真には、女性兵士らが自らすすんで被写体になっている
様子が感じられるが、虐待風景を撮影することを上官から仕事として命じられ
ない限り、このような写真が撮られることはないと思われる。
http://news.bbc.co.uk/2/hi/americas/3695569.stm

 いくつかの報道から、虐待が行われた口実が明らかになっている。それは、
拘留者に対して尋問を行う担当者から、看守の兵士に対して「拘留者の口を割
るために、ある程度の虐待をやってくれ」という依頼があったということであ
る。このことから、虐待の写真は、尋問担当者から要請されたとおりに虐待を
やりましたという意味の、看守の兵士たちによる「業務報告」として撮影され
たのではないか、と考えられる。
http://www.commondreams.org/headlines04/0502-03.htm

 軍隊は上下関係が厳しいので、特に写真を撮られるような場面では、下級兵
士は上官に命じられたとおりの行動を行い、命じられていない行動はしないは
ずである。写真には、女性兵士が男性の拘留者を虐待している光景が含まれて
いるが、尋問担当者からは「男性の拘留者に対し、女性兵士がサディスト的な
行為を行い、性的な屈辱を与える形式で虐待を行ってほしい」といったような
具体的な要請が行われたのかもしれない。

 このような構図を察することができるため、女性兵士(イングランド下士官、
Pfc. Lynndie England)の家族や近所の人々は記者会見し「彼女は上官に言わ
れてやっただけであるに違いない」「彼女は囚人に性的虐待を行うような性格
の人ではない」という主張をおこなった。それに対してアメリカでは「娘をか
ばいたい親心」という見方を超える重みを持たせた報道がなされている。
http://www.usatoday.com/news/world/iraq/2004-05-06-soldiers-usat_x.htm

▼「グアンタナモ化」されたアブグレイブ刑務所

 米軍の組織ぐるみの囚人虐待だったのなら、それはどのように行われたのか。
その経緯もかなり報じられている。いくつかの記事によると、ことの発端は昨
年8月、バグダッドの国連事務所やヨルダン大使館などで相次いで爆破テロが
あり、それが誰の仕業なのか、米軍が関係者を拘留して尋問してもほとんど判
明せず、フセイン前大統領の行方も分からなかったことにある。
http://www.nytimes.com/2004/05/09/international/middleeast/09ABUS.html

 イラク駐留米軍のサンチェス司令官と、その配下の諜報担当者であるファス
ト少佐(Maj. Gen. Barbara Fast)は、ワシントンの国防総省から「刑務所に
拘留中のイラク人に対する尋問の効率を何とかして向上させ、テロ計画やサダ
ムの居場所について情報を引き出せ」と命じられた。ファスト少佐は、キュー
バのグアンタナモ米軍基地に応援を頼み、ミラー少佐(Maj. Gen. Geoffrey
Miller)という尋問の専門家がバグダッドに派遣されてきた。
http://www.news.com.au/common/story_page/0,4057,9519057%5E401,00.html

 グアンタナモ基地は、アフガニスタンなどの世界地域から千人近い「テロ容
疑者」を捕まえてきて拘留している場所だ。キューバというアメリカが敵視す
る国の領内にある基地なので、アメリカの法律も国際法も適用されず、拘留者
のリストすら発表されないまま、人権条約を無視した拘留・尋問が行われてい
る。(アメリカはキューバが革命前に親米国だったときに、この基地を半永久
的に貸与させた)

 ミラー少佐はイラクにある米軍の16カ所の刑務所を回った末にアブグレイ
ブを選び、ここに「イラクのグアンタナモ」を作ることを決め、アブグレイブ
刑務所の看守をしていた部隊のカーピンスキ司令官(准将、Brig. Gen. Janis
Karpinski)にそのことを伝えた。正式な命令系統を無視した依頼だったので、
カーピンスキは拒否したが「サンチェス司令官から、好きなようにやって良い
と言われている」といって黙らせた。
http://msnbc.msn.com/id/4934436/

 ミラー少佐配下の尋問担当者たちは、刑務所内の一つの区画(A1区)に陣
取って尋問を開始し、そこにはカーピンスキも立ち入れないようになった。ミ
ラーはカーピンスキに対し、A1区の看守として何人かの兵士を貸せと言って
きた。カーピンスキは、イングランド下士官(虐待の写真を撮られた女性兵士)
らを、A1区の看守として派遣した。
http://www.newyorker.com/fact/content/?040510fa_fact

▼権謀術数を駆使する国防政策委員会

 A1区でどんな尋問が行われていたかは、明らかになっていない。尋問にた
ずさわっていたのは、国防総省の諜報担当者、CIAの担当者、国防総省と契
約した傭兵企業の尋問の専門家たち、イスラエルから派遣された諜報要員など
だとされる。
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/articles/A15981-2004May10.html
http://www.counterpunch.org/smith05102004.html

 傭兵企業の専門家は、大半が国防総省の諜報担当者を辞めた人だが、辞職は
表向きだけで、軍籍を抜けることで人権条約やアメリカの公務員としての縛り
から解放されて振る舞える仕組みになっている。イスラエルの要員はパレスチ
ナ占領地で抑圧的な尋問を行う技術を磨いており、助っ人として呼ばれていた
のだと思われる。
http://english.aljazeera.net/NR/exeres/C182D988-28E3-4D48-ADFC-F15D6509B0EC.htm

 また、CIAは国防総省と非常に仲が悪く、特にイラクでは最近までCIA
・国務省の筋は外されていたので、CIA要員はほとんどいなかったのではな
いかと思われる。国防総省には2つの諜報部局がある。一つは旧来からあった
DIAで、もう一つは911後に国防政策委員会の傘下に作られた新組織で、
こちらは正式な名前もないが、CIAやDIAを駆逐して権力を持った。グア
ンタナモ基地で尋問を行っているのは、主にこの諜報組織である。

 国防政策委員会はリチャード・パールら「ネオコン」が仕切っている国防長
官の諮問機関で、イラク侵攻の開戦事由となった「大量破壊兵器」などのウソ
情報をねつ造し、「中東の強制民主化」政策を打ち出したのは、この委員会で
ある。(国防政策委員会にはキッシンジャー元国務長官ら「中道派」も混じっ
ており、中道派とネオコンは敵どうしではなく役割分担をしているのではない
かとも感じられる)
http://www.cooperativeresearch.org/organization/profiles/defensepolicyboard.html
http://www.telegraph.co.uk/news/main.jhtml?xml=/news/2002/08/07/wsaud07.xml

 ネオコンは、チェイニー副大統領やラムズフェルド国防長官と直談判して権
限を獲得し、既存の指揮系統を無視して「横入り」して、あいまいなかたちで
権力を行使するやり方を得意とする。(ネオコンにはユダヤ人が多く、中世ヨ
ーロッパの宮廷ユダヤ人や、大英帝国を牛耳ったロスチャイルド家などが培っ
た権謀術数の技能を継承しているのかもしれない)

 国防政策委員会という組織自体、正式な指揮系統から外れた諮問機関である。
国防政策委員会傘下の人物と思われるグアンタナモのミラー少佐がアブグレイ
ブ刑務所に入り込み、囚人の虐待につながる「効果的な尋問」の態勢を作った
やり方は、まさにネオコン的な手法だった。
http://www.sptimes.com/2004/05/08/Worldandnation/Report_steers_clear_o.shtml

 指揮系統を乱しても、本当に尋問の「効率」が上がったのなら、まだ米軍に
とってはプラスかもしれないが、イラクで米軍やその他の外国勢力が攻撃され
るケースはますます増え、尋問の効果は上がっているとは思えない。そもそも、
暴露された写真にあったような、囚人の顔に女性用パンツをかぶせる行為が
「嫌だから尋問に答えよう」という気持ちを囚人に抱かせるとも思えない。
http://www.washingtonpost.com/wp-srv/flash/photo/world/2004-05-03_prisonabuse/index_frames.htm?startat=4&indexFile=world_2004-05-03_prisonabuse

▼ラムズフェルドが辞めたら徴兵制になる?

 虐待写真が暴露され、ラムズフェルド国防長官の責任が問われる事態となっ
たが、実は米軍は全くやり方を変えていない。アブグレイブ刑務所の規律を正
すために、看守部隊の司令官が交代したが、従来のカーピンスキに代わって着
任したのは、意外にもアブグレイブを「グアンタナモ化」した張本人のミラー
少佐だった。責任は、抵抗した方のカーピンスキに押しつけられた。
http://msnbc.msn.com/id/4934736/

 ミラー少佐をグアンタナモから呼び込んだイラク駐留軍の諜報担当責任者で
あるファスト少佐は、アリゾナ州にある米軍の諜報訓練学校の校長に栄転する
ことが決まっている。その上司であるサンチェスは、依然としてイラク駐留軍
の最高司令官である。
http://www.sptimes.com/2004/05/08/Worldandnation/Report_steers_clear_o.shtml

 米軍の報告書では、民間傭兵会社CACI社の2人の「尋問の専門家」が、
アブグレイブ刑務所での虐待に関与していた嫌疑で解雇されたと指摘されてい
るが、実はこの2人は解雇されておらず、今もアブグレイブでイラク人を尋問
し続けているという指摘がある。
http://truthout.org/docs_04/050504C.shtml

 これらの人事からは、今後も国防総省が「悪事」を止めるつもりがないとい
う姿勢がうかがえる。だが意外なことに、国防総省のトップであるラムズフェ
ルドだけは、マスコミや議会から辞任要求の集中砲火を浴びている。
http://www.economist.com/printedition/displayStory.cfm?Story_ID=2647493

 この「謎」を解くことができそうなキーワードは「徴兵制」である。ラムズ
フェルドは、再選に向けて人気を落としたくないブッシュ大統領の意を受けて、
これ以上イラク駐留米軍の兵力数を増やしたくないという意志表示を続けてい
る。(米軍はベトナム戦争後に徴兵制を止めて以来、公募制をとっている)
http://www.washtimes.com/national/20040422-114404-5320r.htm

 これに対してネオコン系のシンクタンクからは「兵力さえ増やせばイラクは
安定する」「ベトナム戦争以来止めていた徴兵制を復活すべきだ」「兵力増派
をしないラムズフェルドのやり方は失敗した」といった主張がなされていた。
http://www.iht.com/articles/516859.html

 徴兵復活論者は議会にもおり、たとえば民主党のジョセフ・バイデン上院議
員や、共和党のジョン・マケイン上院議員などは「徴兵制を復活して兵力を増
派し、イラクを安定させるべきだ」と主張してきた。虐待写真が暴露された後、
すかさずラムズフェルド辞任要求を発したのは、バイデンやマケインらだった。
http://www.cbsnews.com/stories/2004/05/05/iraq/main615754.shtml

 つまり、一部の上院議員やネオコン系の人々は、虐待写真事件をテコにラム
ズフェルドを辞任に追い込み、後任の国防長官には徴兵制に賛成する人物を据
えることで、兵力増派を実現しようと考えたのではないかと思われる。タカ派
のラムズフェルドが辞めたらイラク情勢は良くなると考えがちだが、全く逆に
なる恐れがある。

 5月7日、議会上院で全世界に中継されたラムズフェルドに対する公開尋問
が始まって間もなく行われたとき、議場の後ろの方で市民活動家のような数人
が、横断幕を掲げて「ラムズフェルドは辞めろ」と怒鳴り始めた。
http://www.wreg.com/Global/story.asp?S=1849112&nav=3HvDMw2p

 意外なことに、この行動をすぐに止める人はなく、数人は2−3分ほど怒鳴
り続け、横断幕を降り続けた後、ようやくやってきた警備員に静かに促され、
ゆっくりした足取りで、悠然と議場から立ち去った。テロ警戒でピリピリして
いる米議会とは思えない寛容さだった。有力議員の中に、この抗議行動の計画
を事前に知っていて「国民もラムズフェルドに辞任を求めている」という世論
を盛り上げるために、警備員に2−3分の黙認を指示していた人がいたのでは
ないか、と勘ぐりたくなる光景だった。

 国防総省には、この虐待事件の真相究明を行う委員会が結成された。だが、
委員会のメンバーに指名されたシュレジンガー元国防長官ら3人は、いずれも
「国防政策委員会」の委員である。アブグレイブでの虐待を企画した疑いがあ
る組織のメンバーに、虐待の真相究明をさせようというのである。真相の究明
ではなく、真相の隠蔽がなされる可能性が高い。
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/articles/A9246-2004May7.html

▼以前から頻発していた各種の虐待

 イラクでは、アブグレイブだけでなく他の刑務所でも虐待が広く行われてい
たことが、しだいに明らかになりつつある。アムネスティや国際赤十字は、昨
年4月にフセイン像が倒された直後から、刑務所で米軍による虐待が行われて
いるという報告書を何回もアメリカ政府に送っていたが、すべて無視されてい
る。
http://www.smh.com.au/articles/2004/05/04/1083635134533.html
http://sfgate.com/cgi-bin/article.cgi?f=/c/a/2004/05/08/MNG0G6IFIP12.DTL

 国際赤十字によると、米軍がこれまでに逮捕したイラク人の90%が、何の
罪もない誤認逮捕だった可能性があるという。
http://www.gazettetimes.com/articles/2004/05/11/ap/Headlines/d82g3f9g1.txt

 刑務所だけでなく、イラクのあちこちにある米軍のチェックポイントでも、
何も怪しそうでない人に兵士が暴力をふるったり、通行人の所持金を巻き上げ
たり、下手をすると通行中の自動車に銃を乱射したりする事件が相次いでいる。
テロ容疑で民家を捜索しにきた米兵が、その家庭の人に暴力を振るったり、手
錠をかけたまま立ち去ったり、現金を持ち去ったり、捜索に関係ない家財道具
を故意に壊していったりするケースも無数に起きている。米軍は、組織的にイ
ラク人を虐待し、怒らせようとしているように感じられる。
http://tanakanews.com/d1125iraq.htm

 刑務所での虐待写真が暴露されたとき、イラク人の多くは怒りは表明したが、
さほど驚かなかったと報じられている。刑務所で虐待が行われていることは、
市民の間では口コミでかなり広がっていたし、多くの市民は、チェックポイン
トや家宅捜索などの経験から、米軍兵士はイラク人を虐待するものだと知って
いたので、驚かなかったのだろう。
http://indybay.org/news/2004/05/1679344.php

 米軍兵士に対して軍の上層部から、自然に虐待や悪事をやってしまうように
仕向ける命令が出ている部分もある。たとえば「米軍の攻撃で怪我をしたと思
われるイラク人に近づいてはならない。怪我をしたふりをして米軍兵士を接近
させ、自爆テロを行うという戦法をとるイラク人がいるためだ」という指令が、
米軍内で出された。イラクで「怪我をした市民がいても、米軍は何もしてくれ
なかった」といった指摘が多数出ているのは、この指令と関係がありそうだ。
http://rutlandherald.com/04/Columns/Story/82808.html

 こうした数々の虐待行為は、マスコミでも小さく報じられ続けていた。私自
身「米軍はわざとイラク人を怒らせている」という指摘をすでに何回か書いて
いる。だが、日米などのマスコミがこの件を大きく報じることはなかった。
http://tanakanews.com/d0811iraq.htm

▼国際法上のグレーゾーンを維持する戦略

 米軍が虐待行為を行っているは、イラクだけではない。アフガニスタンでは
2年近く前に拘留者を尋問中に殺してしまったことが知られており、そのケー
ス以外にも、米軍はかなり手荒なことをやっていると指摘されている。
http://www.sundayherald.com/41906

 米本土の近くでは、グアンタナモ米軍基地の収容所が虐待の多い尋問所とし
て存在している。インド洋にある小島、ディエゴ・ガルシア島(イギリスの保
護領)には英米軍の海軍・空軍基地があるが、ここにも尋問・虐待所があり、
アフガニスタンで捕まったアルカイダの幹部などは、ここに拘留されていたと
報じられた。それから世界各地の洋上に浮かぶ米軍の航空母艦にも、拘留尋問
設備があり、ここにずっと拘留されている「テロ容疑者」もいるとされる。
http://www.infoplease.com/spot/dg.html

 イラク、アフガニスタン、グアンタナモ、ディエゴ・ガルシア、航空母艦上
という各地域に共通する点は、アメリカの法律も、国際法も適用されにくいグ
レーゾーンの地域であるということだ。イラクとアフガニスタンは、政府が設
立される前の「国家以前」の状態だし、グアンタナモ、ディエゴ・ガルシア、
航空母艦上は、すべて米軍が管轄し、事実上、どこの国の司法権も及ばない地
域である。
http://msnbc.msn.com/id/4934734/

 イラク、アフガニスタン、グアンタナモのいずれにおいても、アメリカは問
題の早期解決を望んでいないふしが見受けられる。アフガニスタンでは、故意
に地方の武装勢力を放置し、政府樹立のための選挙を難しくしている。こうし
たアメリカのやり方を見ていると、アメリカは国際法上のグレーゾーンをなる
べく長く維持することで「テロ戦争」の永続化を狙う戦略をとっているように
感じられる。

 とはいえその一方で「アメリカはもうこんな戦争を続けられない」という警
告が、アメリカの上層部からも出てきている。虐待写真が暴露されたのは、4
月28日のCBSテレビの番組「60ミニッツ2」で、これは米軍がまさにフ
ァルージャに総攻撃をかけようとしているときだった。虐待写真の暴露は、米
軍が暴走してイラクを再び戦闘に引きずりむことを止めるために行われた可能
性がある。
http://www.cbsnews.com/sections/60II/main3475.shtml

 虐待写真の暴露そのものは、米軍の暴走を止めたい勢力によるものだった可
能性が大きいのに対し、その暴露によってラムズフェルドが辞めさせられそう
になったことは、すでに述べたように、米軍を暴走させたい勢力によるものだ
った可能性が大きい。アメリカ中枢におけるイラクをめぐる暗闘は、泥仕合の
度合いを増している。


この記事はウェブサイトにも載せました。
http://tanakanews.com/e0511iraq.htm


●お知らせ

・韓国語版のサイト(間島通信)ができました。
http://www.ganland.com/tanaka/

・音声訳のサイト(STUDIO-M)もできました。
http://studio-m.or.tv/index.html

いずれもボランティアの方による努力の結晶です。
この場を借りて制作者のお二人にお礼を申し上げます。

●関連記事

Iraqi Recounts Hours of Abuse by U.S. Troops
http://www.nytimes.com/2004/05/05/international/middleeast/05INMA.html
この記事に出てくるイラク人は「虐待を受けたのは短期間だけだった」と述べ
ているが、虐待は頻発していたという、今やほぼ事実だと思われることと食い
違っている。彼は虐待写真が暴露される直前に釈放されており、米軍から命じ
られたとおりに話しているのではないかと感じられる。この記事を書いたニュ
ーヨークタイムスの記者は、そのことを察知しつつ、政府のプロパガンダに協
力したのかもしれない。

US Army Report on Iraqi Prisoner Abuse
http://www.antiwar.com/news/?articleid=2479
軍の報告書

Warnings of abuse in Iraq's prisons that were ignored
http://politics.guardian.co.uk/iraq/story/0,12956,1208192,00.html

Tomgram: Juan Cole on our Photo Wars
http://www.nationinstitute.org/tomdispatch/index.mhtml?pid=1416

25 Prisoners Died While Held by U.S. Forces
http://www.reuters.com/newsArticle.jhtml?type=topNews&storyID=5038799§ion=news

The Mystery of Abu Ghraib
http://www.antiwar.com/justin/?articleid=2477

Pentagon Approved Tougher Interrogations at Guantanamo
http://www.washingtonpost.com/ac2/wp-dyn/A11017-2004May8?language=printer

 次へ  前へ

戦争54掲示板へ



フォローアップ:


 

 

 

  拍手はせず、拍手一覧を見る


★登録無しでコメント可能。今すぐ反映 通常 |動画・ツイッター等 |htmltag可(熟練者向)
タグCheck |タグに'だけを使っている場合のcheck |checkしない)(各説明

←ペンネーム新規登録ならチェック)
↓ペンネーム(2023/11/26から必須)

↓パスワード(ペンネームに必須)

(ペンネームとパスワードは初回使用で記録、次回以降にチェック。パスワードはメモすべし。)
↓画像認証
( 上画像文字を入力)
ルール確認&失敗対策
画像の URL (任意):
投稿コメント全ログ  コメント即時配信  スレ建て依頼  削除コメント確認方法
★阿修羅♪ http://www.asyura2.com/  since 1995
 題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
掲示板,MLを含むこのサイトすべての
一切の引用、転載、リンクを許可いたします。確認メールは不要です。
引用元リンクを表示してください。