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(回答先: これは重要な記事なのですがURLが無いと存在を確認できません。 投稿者 木村愛二 日時 2004 年 5 月 11 日 01:00:51)
MichaelMooreJapan.com に氏の今回の件に関するコメントの邦訳が掲載されているので、参考までに転載します。
http://www.michaelmoorejapan.com/
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星に願いを
2004年5月7日(金曜日)
友人のみなさん
すばらしい応援のお手紙、どうもありがとう。わが映画製作チームはまたもやメディア企業の暴挙と戦うはめになった。やれやれ、この手のことはなくならないのだろうか? もう「表現の自由」は取り戻せないのだろうか? いっそ星に願いをかけようか?(訳注1)
(訳注1)『星に願いを』は〈ディズニー〉のアニメ『ピノキオ』の有名な挿入歌。
〈ディズニー〉の広報部隊は今回の検閲騒動を都合よく収めようと躍起になっている。どうも彼らはこれが公になるとは思っていなかったようだ。誰もがハリウッドの不文律に従うはずだと思っているのだ。その不文律とは、ハリウッドでのビジネスの実態を世間に知らせてはならない、カーテンの奥にいる人物の姿を見せてはならない、というものだ。
〈ディズニー〉は1年近くのあいだ、これが騒ぎになることはないと思っていた。でも水曜日に約束したとおり、ぼくはここで、「おとぎの王国」(訳注2)とぼくとの情けない冒険の背景について詳しくお話ししようと思う。
(訳注2)「おとぎの国/マジック・キングダム」はディズニーランドの別名。
2003年4月に、ぼくは〈ウォルト・ディズニー〉社の子会社〈ミラマックス〉と契約を結んだ。〈ミラマックス〉はぼくの次の映画『華氏9・11』の出資と配給を引き受けた(これは最初の出資者が撤退したからだが、それについてはまた別の機会に)。契約によれば、〈ミラマックス〉は〈ディズニー〉の配給専門の子会社〈ブエナビスタ・ディストリビューション〉を通じて映画を全米に配給することになっていた。〈ミラマックス〉はアメリカでの配給権と、配給権を世界に売る権利を取得したわけだ。
その1ヵ月後、撮影が始まったあとで、〈ディズニー〉の最高経営責任者マイケル・アイズナーが、ぼくのエージェント、アリ・エマニュエルに面会を求めてきた。アイズナーは、〈ミラマックス〉がぼくと契約したことに激怒していた。エマニュエルの話では、アイズナーは撮影済みのフィルムを見るどころか、シノプシスすら読んでいないのに、ぼくの映画を〈ディズニー〉系列の会社で配給することは絶対に許さないといった。そのときアイズナーは、エマニュエルに、自分はフロリダ州知事ジェブ・ブッシュを怒らせたくないのだといった。ぼくの映画を配給すれば、フロリダ州での現在および未来のプロジェクトが抱えている問題がよけいにややこしくなるし、税金面などの優遇措置が危うくなると信じていた。
でもアイズナーは、〈ミラマックス〉に映画製作の中止を命じなかった。それだけじゃなく、その後の1年間に〈ディズニー〉の資金を600万ドル投入した。〈ミラマックス〉はぼくに、配給のことで問題は生じないと保証した。
ところが先月、『華氏9・11』がカンヌ映画祭の本選参加作品に選ばれると、〈ディズニー〉はあまり地位の高くない製作担当幹部をニューヨークに派遣して、映画を見させた(アイズナー自身は、今日まで一度も映画を見ていない)。その幹部は熱心に映画を見ていた。笑ったり、声をあげたりして、終わったあとはぼくたちに礼をいった。そして「この映画は爆発的だ」といった。ぼくたちはそれをいい意味に受けとった。でも彼らが「爆発的」という言葉をいい意味で使うのは、映画の中で爆薬がはでに破裂するときだけのようだった。ぼくたちが考える「爆発的」な映画は、彼らがピューッと逃げだしたくなるような作品だったのだ。
〈ミラマックス〉は、計画どおり映画を公開するよう〈ディズニー〉を説得しようと最善を尽くしてくれた。2社間の契約では、〈ディズニー〉が配給を禁止できるのは、映画がNC-17指定を受けたときだけなのだ(『華氏9・11』はPG-13かRの指定になるはずだ)(訳注3)。
(訳注3)NC-17:17歳未満入場禁止。PG-13:13歳未満は保護者の指導が望ましい。R:17歳未満は保護者同伴が義務づけられる。
昨日の《ニューヨーク・タイムズ》紙によれば、『華氏9・11』の配給問題が〈ディズニー〉の取締役会で議論されたのは先週のことだった。下された決定は、配給せず、だ。
そして今週の初めに、ぼくたちのもとに正式な最終通告がきた。〈ディズニー〉は『華氏9・11』を公開しないという通告だ。これが《ニューヨーク・タイムズ》紙で報じられると、〈ディズニー〉は真実を述べるかわりにピノキオになった(訳注4)。
(訳注4)ピノキオはよく嘘をつき、そのたびに鼻が伸びた。
広報部隊の発言の中から、ぼくのお気に入りを以下に紹介しよう(発言は要約してある)。
「マイケル・ムーアはわが社がこの映画を配給しないことを1年前から知っていた。だからこれはニュースではない」
そう、ぼくもニュースじゃないと思う。だけど、〈ディズニー〉は映画の製作資金を注ぎこみつづけたし、〈ミラマックス〉は問題はないといったのだ。だからぼくは大丈夫だと思っていた。
「政治的に偏った映画を配給すると一部の顧客に不快感を与えるので、わが社にとって利益にならない」
ふーん、〈ディズニー〉は政治的に偏ったコンテンツを提供しないんだ。ショーン・ハニティのラジオ番組を配信しているのは〈ディズニー〉だけどね。ぼくが毎日聞いているラッシュ・リンボー(訳注5)のラジオ番組も〈ディズニー〉傘下のWABCでやってるし。それに〈ディズニー〉は、中間選挙があった 1998年に、ものすごく偏向した映画を配給したような気がするなあ。タイトルは『The Big One』で、監督は……えっと、ぼくだ!
(訳注5)ショーン・ハニティも、ラッシュ・リンボーも、超保守派の論客。
「『華氏9・11』は〈ディズニー〉のブランド・イメージに合わない。わが社が提供するのは家族向けの映画だ」
そうだよねえ。いま公開されている〈ディズニー〉配給映画の一番人気は『キル・ビル vol.2』だもんね。この傑作映画も、古典的名作『パルプ・フィクション』も、〈ミラマックス〉が製作して〈ディズニー〉が配給した。これこそが〈ミラマックス〉の存在理由なのだ――〈ディズニー〉のブランド・イメージとは違う作品を提供するというのが。いま挙げた作品はどちらもNC-17指定じゃなかったから、〈ディズニー〉はちゃんと配給したわけだ。
「ムーア氏はこの問題を宣伝に利用している」
マイケル・アイズナーは、〈ディズニー〉のカリフォルニア・アドベンチャー・パークで新アトラクション「タワー・オブ・テラー」のテープカットをしたとき、こう発言したそうだ(それにしても、「タワー・オブ・テラー」というのは、最近この国が経験したことを考えると、すごいネーミングだよな(訳注6))。でも、はっきりいって、この種の騒ぎを望む映画監督はいないのだ。チケットを売るのにプラスにならないからだ(土壇場で配給会社をかえたせいで映画がコケた例はたくさんある)。ぼくは観客にできるだけ早く見てもらいたいと思ってこの映画を作った。だから今回の騒動はとんでもなく迷惑なのだ。議論が盛りあがってほしいのは映画で提示する問題についてであって、誰がフィルムを劇場に配るかなんていう業界内部のもめ事についてじゃない。『華氏9・11』はかなりいい興行成績が見込めるといっていいだろうと思う。この前の映画は当たったし、今回とりあげる問題(ブッシュ、対テロ戦争、イラク戦争)は、いま一番人々の関心を集めている問題なのだから。
(訳注6)「タワー・オブ・テラー」は「恐怖の塔」の意味だが、「テロの超高層ビル」の意味にもなる。世界貿易センタービルは「ツイン・タワー」と呼ばれた。
さて、映画の公開はどうなるのか? ぼくにはまだわからない。わかっているのは、何が何でもみなさんに見ていただく、ということだけだ。ぼくたちはアメリカ人だ。いまのぼくたちはいろんなヘマをしでかしているけれど、ほとんどのアメリカ人に共通しているのは、誰かにこれは見るなと指図されたくないということだ。ぼくたちは検閲を忌み嫌う。最悪の検閲は、思想信条の表明を制限し、反対意見を封殺することだ。それは非アメリカ的だ。もし映画を上映するために国じゅうをまわって公園を借りる必要があるのなら(あるいは、昨日ある人が申し出てくれたように、個人の家の壁に映して近所の人に見てもらう手もある)、ぼくはそうするつもりだ。
引きつづき情報を提供していく予定なので、ご注目いただきたい。
あなたの友
マイケル・ムーア
mmflint@aol.com
http://www.michaelmoore.com
P.S. 昨日の《ニューヨーク・タイムズ》紙の記事(『〈ディズニー〉の臆病な行動』) をぜひ読んでほしい。