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http://www.mainichi-msn.co.jp/kurashi/bebe/news/20040509k0000m030131000c.html
イラク人虐待:米政府、対応遅れ不信拡大
イラク人収容者虐待事件をめぐるラムズフェルド米国防長官の7日の議会証言は計6時間に及び、米政府の認識の甘さと後手に回った対応の一端が浮かび上がった。収容者を裸にしていたぶる写真が世界に配信されるまで、ブッシュ政権はなぜ動かなかったのか。虐待写真やビデオはさらに存在し、事件は拡大の様相も見える。米国への信用は地に落ち、占領政策の行方にも不透明感が増している。
◇重大性隠ぺいか 占領政策の行方にも暗雲
ラムズフェルド国防長官の米上下両院軍事委公聴会での証言やこれまでの米政権幹部の説明によると、大統領は2月初旬には虐待事件の概要と虐待写真の存在を知っていたとみられる。しかし、4月下旬に米メディアを通じ初めて実際に写真を見て事態の深刻さに気づき、対応が後手に回った可能性が大きい。一方で、長官らの証言にはあいまいな点も多く、政権内部での「事件隠ぺい」の可能性も指摘され、一連の対応には不透明さがつきまとっている。
昨年10月から12月にバグダッド郊外のアブグレイブ刑務所で発生した虐待事件は、同刑務所に勤務する一兵士の内部告発で1月13日に駐留軍幹部の知るところとなった。
刑事捜査が始まり、16日に記者発表。サンチェス駐留米軍司令官の依頼を受け2月2日、米中東軍のタグバ少将らがイラクでの調査を開始し、3月初旬に報告書をまとめた。捜査の結果、看守役の憲兵6人が告発され、駐留米軍は3月20日、この事実を公表した。
経緯を説明した駐留米軍のランス・スミス副司令官は「対応は迅速だった」と強調。ラムズフェルド長官も「事件自体は世界中に公表していた」と語気を強めた。だが、ブッシュ大統領への報告時期をビル・ネルソン上院議員(民主党)が尋ねると、証言の歯切れはとたんに悪くなった。
「中東軍の発表後の打ち合わせの時だったようだ。私はメモを取らないから」。ラムズフェルド長官はこうかわし、マイヤーズ統合参謀本部議長も「1月下旬か2月初めらしい」とあいまいな表現に終わった。
ネルソン議員が重ねて大統領の反応を要求すると、ラムズフェルド長官は「内密の話なので話したくない」と具体的な回答を拒否。その上で、長官と大統領が虐待写真を見たのは先月末の報道の時点で、「当初は(虐待の)映像はなかった。問題の質が現在とはまるで違った」と述べた。
しかし、マイヤーズ議長は、虐待写真を放送した米CBSテレビから、写真の内容を1月には説明されていたことを明かし、その情報がラムズフェルド長官にも報告されていたと説明。スミス副司令官も「3月下旬には写真を見て、上官に報告した」と述べるなど、軍・国防総省内部で事件の重大性が隠ぺいされていた可能性も出ている。
いずれにしろ、ブッシュ大統領が「深い嫌悪感を覚える」(同大統領)という写真を実際に見て対応に乗り出した時には、すでにアラブ世界を中心に反米感情がわき起こっていた。大統領ら政権幹部は相次いで中東のメディアに登場し謝罪と事情説明を繰り返しているが、「ダメージ・コントロール」は効果を見せていない。【ワシントン和田浩明】
◇米国防長官 続投の可否不明
ラムズフェルド米国防長官は7日、イラク人虐待事件に関する米上下両院の軍事委員会公聴会での証言で、辞任を否定したが、長官が辞任を回避できるかどうかは依然、流動的だ。
米ABCテレビとワシントン・ポスト紙が7日発表した共同世論調査によると、長官は辞任の必要はないという人が69%に上り、辞任を求める人(20%)を圧倒した。ただ、ブッシュ政権の対応になると、「調査した」と「隠蔽しようとした」とに評価は真っ二つに割れる。「米軍による組織的犯行」や「政権内部の事件隠ぺい」が明らかになった場合、大統領選に悪影響を与える可能性もはらんでいる。
7日付けの米主要各紙の社説は、進退に関し意見が割れた。ニューヨーク・タイムズ紙は辞任を要求したが、ブッシュ政権に近いウォールストリート・ジャーナル紙は「長官はイラク政策の象徴的存在。ブッシュ大統領が彼に疑問を持てば、敵対者は大統領が(泥沼化の)イラクから抜け出す道を模索していると理解する」と反対した。
ブッシュ政権の戦略は、事件を「イラク情勢」「ブッシュ大統領」「大統領選」のいずれとも切り離すことだ。
証言で長官は、事件は「ごく少数の米兵」によるものと主張、責任は大統領ではなく「全面的に私にある」と強調した。辞任要求については「問題を政治化しようとする人々のためには辞めない」と民主党をけん制した。公聴会後、ブッシュ大統領は長官に電話し「本当にいい仕事だった」とねぎらったという。
しかし、重大性隠ぺいや組織的犯行が明らかになれば、3項目への波及は避けられない。ホワイトハウスはそうした事態を見据え、長官辞任で局面打開を図る戦略も検討しているようだ。ロイター通信は、その場合に、ウルフォウィッツ国防副長官を長官代理にあてる案が浮上していると伝えた。【ワシントン佐藤千矢子】
◇イラク国内では「戦争犯罪」批判も
ブッシュ大統領やラムズフェルド国防長官による虐待問題への相次ぐ謝罪に対し、イラク国内での評価の声は皆無だ。信頼回復は極めて困難な状況で、6月30日に予定される主権移譲など今後の占領政策が大きく揺らぐ可能性もある。
イスラム社会にとって「性」はデリケートな問題。今回のように人前で強制的に収容者を裸にしたり、犬の首輪のような物を付けるなどの行為は「反イスラム的」と受け止められ、特に女性収容者への性的虐待に対する反発が強い。イラク人の暫定統治機構「イラク統治評議会」メンバーのヤワル前同評議会議長は、「事件は戦争犯罪として国際法廷で裁かれるべきだ」と語った。
イラク有力紙「アルカシド」紙のアブドゥル・ラフマン・アナド編集局次長は「イラク国民の怒りは米国の占領政策自体へ向けられている。自由・民主主義・人権を掲げてきた米国の実態が暴かれ、信頼失墜は取り返しがきかない」と述べた。
今回の問題発覚直後、スンニ派の「イスラム聖職者協会」は、アブグレイブ刑務所前で1000人規模のデモを行った。同協会は以前から刑務所内の虐待疑惑を訴えていたが、米メディアのスクープで問題が表面化するまで米英占領当局から無視されてきた経緯があり、不信感は大きい。【バグダッド杉尾直哉】
毎日新聞 2004年5月9日 1時47分