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イラクは戦場 (ビル・トッテン)
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投稿者 エンセン 日時 2004 年 4 月 20 日 19:32:05:ieVyGVASbNhvI
 

 
題名:No.625 イラクは戦場

From : ビル・トッテン
Subject : イラクは戦場
Number : OW625
Date : 2004年4月19日

OWNo.620で、イラクで大量破壊兵器の捜索を行ったデビッド・ケイ氏が公聴会でイラクに大量破壊兵器がなかったという証言を行ったにもかかわらず、日本政府から何の弁明もなかったことを書いた。それについてアメリカの友人が送ってくれた記事から、タカ派の国防族として知られ1990年に引退した元衆議院議員の箕輪登氏が、自衛隊のイラク派遣差し止めを求めて提訴していることを知った。

(ビル・トッテン)

政権内からも派遣批判

 箕輪氏は小泉首相が誤った法解釈に基づいて自衛隊を出動させたことに対して、『外国に“防衛のため”に自衛隊が出ることはできないし、武力の行使もできない』という、当たり前のことを訴えたのである。

 戦車も壊せるほどの重火器を持って戦場へ行くことは正当防衛を超えている。アメリカの占領に抵抗するイラク国民に対して、アメリカの手下として重装備でいく日本の自衛隊の行為は、『武力による威嚇』という憲法違反である。なぜそう思わないのかと多くの日本国民が反対しても聞く耳を持たない日本政府に対して、箕輪氏は派遣を止めるには司法の判断を仰ぐよりほかないとして立ち上がったという。

 また私は、当時レバノン大使だった天木直人氏がイラク戦争に反対する意見具申書(公電)を川口外相に送って外務省を事実上「解雇」されたということも知った(それについては天木氏の著書、『さらば外務省−私は小泉首相と売国官僚を許さない』に詳しい。また、天木氏のWebサイトはhttp://www.amaki.info)。

日米で暴露や批判

 イラク派遣に多くの国民が反対しているだけでなく、数は少なくても政府関係者からの反対がでていたことをあらためて知ったのだが、アメリカでも同様なことが起きている。オニール前米財務長官はブッシュ政権が発足直後からイラクへの軍事攻撃を検討し始めていたことを暴露したし、カーター元大統領は英紙で、嘘に気づいていながらブッシュ大統領は不確実な情報を元にイラク戦争を決断したと辛らつに批判した。

 そして今度はアメリカ国防総省と情報部に30年間在籍し、「超タカ派官僚」とされた前大統領特別顧問リチャード・クラーク氏が、ブッシュ政権は国民を欺いて不要な戦争を開始したと非難したのだ。クラーク氏はクリントン前政権およびブッシュ政権でテロ対策担当の大統領特別顧問の地位に就いていたが、2003年1月に辞任している。

 テロとの戦いに熱心だったクラーク氏は、1998年にはスーダンとアフガニスタンへの報復ミサイル攻撃を指揮し、「世界的テロ」を照準にした巨大な勢力基盤をワシントンに作り上げた。ビン・ラディンと同じくらい世界にとって脅威となる人物だと私は思っていた。そのクラーク氏が911同時多発テロ調査委員会の公聴会において911テロの被害者と遺族に対して謝罪し、ブッシュはアルカイダの脅威を無視することでアメリカの安全保障を危険にさらし、イラク戦争にとりつかれたと述べたのだ。

 同時多発テロで3千人を超すアメリカ人が亡くなり、それに対してブッシュ政権は矛先をオニール前財務長官が指摘したようにもともとやりたかったイラク攻撃の口実に向けた。箕輪氏同様、私が日本の自衛隊派遣を違法だと言うのは、それが災害地への派遣ではなく、国際法違反の侵略であり嘘の積み重ねによって正当化されてきたイラク戦争への派兵だからである。実際、クウェートで記者会見した津曲義光・航空幕僚長は航空自衛隊が武器を携行する米兵を輸送していたことを明らかにしている。これがアメリカのイラク占領支援でなくて、なんであろう。

 イラク情勢が悪化をたどる中、イラク担当補佐官の岡本行夫氏が辞任した。イラク支援の一定の成果を得るメドが立ったためだというが、イラクで二人の外交官が殺害された時、岡本氏が彼らの使命感の強さを絶賛し、テロに屈せず日本はイラク復興に励むべきだと強調していたことが忘れられない。

 しかし、岡本氏の「イラク支援の成果を得るメド」がどのようなものであるか、それはイラクで邦人3人が誘拐され、またその後、ジャーナリストが2人、誘拐されたがともに解放されたたということが如実にそれを表していると私は思う。

 3人が誘拐されたとき、アルジャジーラ英語版のインターネットサイトには日本に向けた犯人の言葉が掲載された。

“われわれはイラクのイスラム教徒である。われわれはあなた方の親しい友人だった。なぜわれわれを裏切って、イラクの土地を侵略しわれわれの子供たちを殺している米軍を支持したのか?
 報復の時がきた。あなた方のうち3人を保護している。イラクから撤退しなければ、3人は生きたまま焼かれることになるだろう”。

 このような犯人の言葉が、そのまま日本のニュースメディアに流されたであろうか。即座に「自衛隊を撤退させない」と表明した福田官房長官に対して、ラムズフェルド米国防長官はそれを称賛に値すると言ったという。アメリカに追従する日本政府は、どこまで国民を犠牲にすれば気がすむのか。

 退避勧告を無視した等々、3人に対しては私の予想を越える誹謗中傷が寄せられているという。戦争地域なのだからもちろん危険なのである。しかし、だとすればつい数ヶ月前に、公明党の神崎代表がイラク南東部のサマワを訪問し「サマワ市内は比較的安全だ」「ヘルメットもかぶる必要はないと(現地の治安維持にあたっているオランダ軍の)司令官から言われた。防弾チョッキやヘルメットを着けても危険というイメージがあったが、決してそういうことはなかった」とする記者会見はいったいなんだったのだ。
 
 イラクは戦場である。イラクの人々はテロリストなどではなく、アメリカの不法占領に抵抗する人々なのである。いま、ファルージャでアメリカ軍がイラクの人々にしていることを見て欲しい。そしてそのアメリカ兵を運んだり、アメリカ兵のために物資を運ぶなどの支援をしているのが日本の自衛隊なのである。人を殺しにいくと知っていて、その殺人犯の運転手をしたら日本の法律では罪になる。自衛隊のしていることはそれと違わない。(以下、アルジャジーラのホームページ)
http://english.aljazeera.net/NR/exeres/8CB7C17E-F69E-48A2-8034-DEA425192815.htm

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著作:株式会社 アシスト  代表取締役 ビル・トッテン
発行/翻訳/編集:株式会社 アシスト

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