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(回答先: シリア国境で戦闘、米兵5人死亡の報道【朝日新聞】米海兵隊:「武装勢力はファルージャやラマディから来た。」 投稿者 処方箋 日時 2004 年 4 月 18 日 20:49:43)
定森 大治(編集委員)
これはもう、れっきとした民衆蜂起である。イラクの治安を守るはずの米軍が、パレスチナを占領するイスラエル軍と同じようになってきた。
標的は、武装した民兵にとどまらず、一般の民衆にまで広がり始めた。民主党の長老エドワード・ケネディ米上院議員は、「ベトナム化」という表現で、軍事力に頼るブッシュ米政権のイラク政策が泥沼化しつつあると批判した。
バグダッド西方の都市ラマディでの武力衝突では、米海兵隊員12人が死亡した。地上戦としては、イラク戦争後、最大規模である。先に米軍OBの民間人4人が惨殺されたファルージャでは、米軍が武装組織の掃討を理由にモスクや民家を攻撃し、100人前後のイラク人が死亡した。比較的に平穏だった南部バスラでも英軍とイラク側の銃撃戦があり、イタリア、スペイン軍駐留地での交戦も伝えられた。「米軍対テロ組織」の図式が当てはまらず、衝突は拡散しつつある。きわめて憂慮すべき事態だ。
[バグダッドとファルージャを結ぶ幹線道路で14日、
武装勢力に襲撃を受けた米軍車両に群がる人々=AP]
衝突しているのは、バグダッド周辺のイスラム教スンニ派勢力と、南部を中心としたシーア派勢力の両方である。とくに、人口比で約6割を占めるシーア派は、これまで占領統治を事実上、黙認してきただけに、大きな不安材料だ。
フセイン政権に弾圧されてきたシーア派は、ある意味ではイラク戦争の受益者である。しかし、米英が主導する主権回復プロセスで、多数派としての政治参加の機会は十分に与えられていない、との不満がその解放感を打ち消している。
いま注目を浴びているのは、シーア派の強硬派宗教指導者であるサドル師とその傘下にある武装民兵組織である。穏健派の最高指導者シスターニ師と比べ、国連の役割まで否定するサドル師の支持基盤は決して広くないが、占領軍が不必要に弾圧し始めたことで、一般民衆の同情を集めているようだ。
サドル師が発行する新聞を発禁にし、有力な腹心を逮捕したことなどが、シーア派デモと占領軍との戦闘拡大につながった。シーア派といっても一枚岩ではなく、サドル師の反対勢力もいる。主権回復プロセスが米英主導で進む中で、サドル師がシーア派内部での影響力を拡大するために、武装蜂起で民衆を煽っている面は否定できない。
しかし、占領軍がそうした挑発に乗って、武力で押さえ込もうとすれば、イラク人の犠牲者は増え、逆にイラク側の反占領軍感情を増幅しかねない。サドル師の行動を抑制するには、シスターニ師をはじめとする宗教権威にゆだねるのが賢明な方法だろう。
暫定占領当局は、サドル師を逮捕する構えまでみせ、交渉を通じた妥協を拒絶している。しかも米政府は米軍増派まで言い出した。7月までの占領終結と主権の移譲という政治プロセスを打ち出しながら、力でイラクの安定化を図ろうとする。ブッシュ政権の掲げるイラク民主化とはほど遠い、矛盾だらけの「どたばた対応」としかいいようがない。
米共和党のルーガー上院外交委員長らは、治安の悪化を理由に主権移譲を延期する必要性を示唆した。たしかに大統領選に合わせた日程にこだわることが、新生イラクの利益になるのかどうか。
米英は国連に調停を要請しているのだから、いまは占領統治で自制をするときだ。小泉首相は、「民主化を妨害する勢力があるんでしょうね」と、いつもの日米同盟節を口ずさんだ。イラク情勢が危機的な局面に移りつつあるとの認識が、その発言からは感じられない。
[04/04/15 17:10]