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深々と頭を……。
2004年4月14日(水曜日)
友人のみなさん
大統領があそこまで深々と頭をお尻に突っこむのは(ファルージャ風の表現を赦されよ)初めて見たぞ(訳注1)。ゆうべ見たジョージ・W・ブッシュの「記者会見」のことだけど、あの男はいまだに「大量破壊兵器」が見つかったとかいってるんだよね――今回の発見場所はサダムの「七面鳥牧場」ときた(訳注2)。まさしく七面鳥だ(訳注3)。大統領選で接戦が予想される17の州にはそれを信じバカがうんといると、ホワイトハウスは考えているらしい。実際には、有権者は苦い現実に目覚めることになると思うけどね。
(訳注1)「頭をお尻に突っこむ」は「ばかなことをする」という意味。
(訳注2)ここはムーアの誤解。ブッシュは「リビアの七面鳥牧場で50トンのマスタード・ガスが発見された」といった。ただし「50トン」は「23トン」の間違いで、マスコミに指摘され、あとで訂正した。
(訳注3)英語の「七面鳥(turkey)」は「失敗」とか「だめなもの」の意味にもなる。
このところ、ぼくは次の映画(『華氏911度』Fahrenheit 911)を仕上げるため、編集室にこもっている。それでずっとご無沙汰していたけど、ゆうべホワイトハウスでブッシュがリンドン・ジョンソン(訳注4)の物真似をするのを見て――とりわけイラクの泥沼に部隊を増派するというのを聞いて――このメッセージを書かずにいられなくなった。
(訳注4)ヴェトナム戦争当時の大統領。
まずいいたいのは、オーウェル流の言葉遣い(訳注5)はやめて、物事を本当の名前で呼ぼうじゃないか、ということだ。ファルージャで殺された4人のアメリカ人は「 請負業者」じゃない。イラクで屋根を修理したり、ガレージ前の通路にコンクリを打ったりしていたわけじゃない。彼らは傭兵だった。金のために戦争に参加する冒険家だったのだ。お金ってやつはいいものだけど、生きてそれを使えるならの話だ。
(訳注5)ジョージ・オーウェル『1984年』で描かれる全体主義国家では、権力に都合のいい新語法が強制された。
〈ハリバートン〉はただの「会社」じゃない。戦争利権屋だ。アメリカ国民から何百万ドルもの金を騙しとってポケットに入れた連中だ。過去の戦争でそんなことをした連中がいたら、逮捕されるか、もっとひどい目にあわされるかしたはずだ。
占領軍に抵抗しているイラク人は「暴徒」でも「テロリスト」でも「敵兵」でもない。彼らは革命勢力であり、ミニットマン(訳注6)であって、その数はますます増えるだろう――そして最後に勝利するだろう。わかりますか、ブッシュさん? あなたはサドル師の週刊紙を閉鎖しましたね。あなたは自由と民主主義の偉大なる贈り主のはずなのに! それで大混乱が生じてるんです。あの新聞の購読者はたった1万人なんですけどね! あなたのそのせせら笑いはなんなんです?
(訳注6)アメリカ独立戦争に参加した民兵。
サダムの銅像の顔を星条旗でふいて、引き倒してから一年たったいま、バグダッドのあの広場にジャーナリストが一人で出かけて、すばらしい1周年記念の取材をするのは、あまりにも危険だ。もちろん、記念式典なんか催されない。例の勇敢でお上品な「埋め込み記者」諸君は、市街中心部の安全な駐屯地を離れることができない。彼らはいまイラクで現実に起きていることを見ていない(ぼくたちがテレビで見る映像のほとんどは、アラブやヨーロッパのメディアが撮影している)。ぼくたちが受けとる「イラクからの」リポートなるものは、アメリカの占領軍がよこすプレス・リリースだ。それが「ニュース」としてぼくたちに伝えられるのだ。
ぼくには目下のところ、映画のために(米軍に内緒で)取材をしてくれるカメラマン兼リポーターが2人いる。彼らは兵士たちと話し、現状についての本音を聞き出して、毎週フィルムを<フェデックス>の宅配便で送ってくれる。そう、<フェデックス>で。アメリカはイラクに自由をもたらしてないなんて、誰がいってるんだろうね! 面白いことに、その2人によると、飛行機でバグダッドに着いても、パスポートの提示や税関手続きは必要ないそうだ。なぜか? 2人は外国からの渡航者じゃなく、アメリカからアメリカに――イラクと呼ばれるアメリカの新領土に――移動しただけだからだ。
ブッシュに反対する人たちの間では、戦後復興の主導権を国連に引き渡すべきだという議論が高まっている。でも、どうしてほかの国々が――ぼくたちに愚行を思いとどまらせようとした国々が――いまになってぼくたちの大失敗の尻拭いをしなくちゃいけなんだろう? 国連であれどこであれ、ぼくたちを大混乱から引き出すために人命を犠牲にするなんてことには、ぼくは反対だ。嫌なことをいって申し訳ないけど、多くのアメリカ人が開戦を支持したわけで、悲しいことにそのせいで、多くのアメリカ人が自分たちの子供を犠牲にするはめになっているのだ。それが終わるとすれば、あまりにも多くの血が流れすぎたときだろう。そのときには、もしかしたら――もしかしたら――神とイラク人は、ぼくたちを赦してくれるかもしれない。
それまでは、ファルージャの「平定」やサドル・シティーの「制圧」を喜びながら、次のテト攻勢(訳注7)を待つしかない――おっと、テト攻勢じゃない、「バース党忠誠派の小集団によるテロ攻撃」だ(ははは! 「バース党忠誠派」なんて書くのは楽しいな。ピーター・ジェニングズになった気分だ!)。その次に来るのは、われわれは「針路を保つ」べきだ、なぜならわれわれは「人々の心をつかみつつあるからだ」と訴える「記者会見」だろう。
(訳注7)一九六八年に北ヴェトナムとヴェトコンが開始した一斉攻撃で、アメリカ国民がヴェトナム戦争に勝てないと実感するきっかけとなった。
また近いうちにメッセージを書きたいと思う。絶望しないでほしい。アメリカ人はそこまでアホじゃないことを思い出してほしい。たしかにぼくたちは、恐怖のあまり、戦争に駆り立てられることもある。でも、いつだって、遅かれ早かれ、正気を取り戻してきたのだ――この戦争がヴェトナム戦争と違うのは、国民が嘘をつかれたことに気づくまで、4年もかからなかったという点だ。
ブッシュが公の場で話したり、映画の題材を無料でどんどん提供するのをやめてくれたら、ぼくは仕事に戻って映画を完成させることができる。完成までの猶予期間は、あと1ヵ月しかない(訳注8)。
(訳注8)5月中旬の、カンヌ映画祭への出品が予定されている。
あなたの友
マイケル・ムーア
mmflint@aol.com
http://www.michaelmoore.com
転載者注
参照:
マイケル・ムーア・イン・カンヌ 新作911ものドキュメント、カンヌに進出!
http://www.asyura2.com/0403/war53/msg/731.html