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読めぬ真意、政府苦渋 謎の仲介人が混乱に拍車
イラク邦人人質事件は、「聖戦士旅団」を名乗る武装グループが予告した「二十四時間以内の解放」の期限とした十二日未明を過ぎても、解放に向けた動きは出ていない。いっこうに解放が進まない裏には、武装グループとの直接的な接触が図れず、グループの「真意」が読めないことに加え、米軍と地元武装勢力がにらみあうファルージャ情勢も影を落としている。事件の舞台裏を探った。(有元隆志、バクダッド 藤本欣也、アンマン 田北真樹子)
≪つかめぬ足取り≫
「三人が乗った車がヨルダンからイラクに入ったかさえ、実はいまだに確認がとれないんだ」
政府高官は十二日になっても、日本人三人が六日午後十一時(現地時間)にヨルダンの首都アンマンを出発後、拘束されるまでの足取りがつかめないことに苦渋の色をにじませた。
足取りを割り出し、居所を突き止めなければ、武装グループとの交渉で不利に立たされるだけでなく、解放後の移送計画さえ立てられないからだ。
政府は事件発生直後、在ヨルダン日本大使館を通じ、ヨルダン政府に三人の出国を確認。ヨルダン側は当初、「出国した」と回答したが、改めて確認をとると「記録はない」と返答してきた。
三人を乗せたタクシー運転手の所在もつかめないまま。政府高官は「深夜に出発したために記録がないのかもしれないが、通常は考えられないことだ」と漏らす。
カタールのアルジャジーラを通じて、政治アピールを続ける武装グループの「真意」が読めないことも解決を遠のかせる一因となっている。公安幹部は「声明の論理展開を含め、これまでの中東系テロリストと微妙に違う。妙に『日本的なにおいがする』というか不自然なんだ」といぶかしがった。
≪ファルージャ≫
「日本政府から人質解放に向けた仲介を頼まれたのは確かだが、テレビでわれわれの決定事項を訴えるほかなかった」
武装グループに人質解放を呼びかけた「イラク・ムスリム・ウラマー協会」幹部の一人は産経新聞社の取材に対し、グループとの接触ができなかったことを打ち明けた。
同協会は約三千のモスク(イスラム教礼拝所)を傘下に抱える法学者団体。十一日にパキスタン人ら八人を解放した別の武装グループも「協会の要請に応じた」としており、同協会がスンニ派社会で一定の影響力をもつのは事実だ。だが、「聖戦士旅団」はいったんは同協会の要請に従い人質解放を宣言したが、その後いっこうに「約束」を実行に移す気配を見せない。
十一日夕(現地時間)には「仲介人」を自称するイラク人権組織のドレイミ代表がアルジャジーラに現れ、「武装勢力指導者は自衛隊が撤退しなければ二十四時間以内に人質一人を処刑すると警告した」と伝えた。さらに、要求はアンマン入りした逢沢一郎外務副大臣のファルージャ訪問など、ファルージャ情勢を前面に押し出した内容だ。
アルジャジーラはドレイミ氏の主張を「信憑性が薄い」と判断、日本政府にその旨を伝えるとともに、以降の番組で会見は流さなかった。日本側も「ドレイミ氏が次の一手をみせない限り、ドレイミ氏にどう対応するか判断しかねる」(外務省幹部)とするが、「謎の仲介人」の出現が混乱に拍車をかけた格好だ。
≪キーマン2人≫
目隠しされた三人が銃を持った武装グループに囲まれた衝撃的な映像が八日夜に放映された直後、一人の男があわただしくアンマンからイラクへと戻っていった。
上村司駐イラク公使。昨年末に銃弾に倒れた奥克彦大使とともにイラク復興の最前線に立ち続け、「奥大使亡き後、連合軍暫定当局(CPA)や統治評議会に最も顔が利く」(外務省幹部)とされる人物だ。
上村氏はCPAや統治評議会と連絡をとり、三人が拘束されたとみられるファルージャ近郊の部族や宗教指導者を通じ、武装グループに接触を続けているもようだ。
また、警察庁も「赤軍ハンター」の異名を持つ塩川実喜夫国際テロ対策課長を現地に投入。政府筋によると、ヨルダンや米英の諜報(ちょうほう)機関と接触し情報収集を進めている。
この二人のキーマンをはじめ、複数の情報筋が確実に機能しているのは確かだ。政府筋は「人質が殺されることはあり得ないと確信している。焦って譲歩しないことが一番大切だ」と意味ありげな笑みを浮かべた。
http://www.sankei.co.jp/news/morning/13iti002.htm