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2004年04月16日
【ガーディアン紙:戦争からの脱出】アン・マッキロイ(2004/4/13)
戦争からの脱出
二人の米軍兵士が部隊を脱走し、イラクへの従軍を拒否してカナダへ亡命を希望している。この戦争は国際法に照らして違法なものであると、彼らは主張する。
アン・マッキロイ
2004年4月13日木曜日
ガーディアン紙
ブランドン・ヒューヘイは見知らぬ人々のもとで暮らすティーンエイジャーだ。友人や家族、テキサス州サン・アンジェロの実家から数千マイル離れ、彼は暮らしている。この18歳の青年は、最近になって部隊を脱走し、亡命者として保護を求めるためにカナダへと逃げてきた二人の兵士のうちのひとりである。彼はこう語る。「僕たちはこう主張するつもりだ。イラクでの戦争は国際法に照らして違法であり、僕には従軍を拒否する権利がある」ヒューヘイはサンタ・カタリナ州オンタリオ市に住むクェーカー教徒の夫婦の家に身を寄せており、法的申し立てを準備しつつ日々を過ごしている。息抜きに、彼はひとりで繁華街を歩く。ヒューヘイは成熟し、落ちついた人物に見える。カナダで新しい人生をはじめることがきっとできるという希望を、彼は抱いている。
17歳のとき、ヒューヘイは軍に志願した。高校の最終学年だった。「志願したのは、それが大学に行くためのただ一つの方法だったからなんだ」と、彼は語る。基礎訓練を受ける合間に、ヒューヘイはイラクでの作戦についてインターネットで調べはじめた。そして派兵についてどんどん不安になっていき、自殺しようかと思いつめるまでになったという。ある司令官に疑問をぶつけたところ、あまり考え込むのをやめるようにと言われただけだった。
インターネットを通じて、彼はカナダに行くのを支援してくれるという人に出会った。逃げる決心を固め、3月2日に基地から車で脱走した。自分の部隊が中東へ向けて出港する前夜のことだった。今や彼は脱走兵であり、カナダ国境を越えるのを手助けしてくれるという一人の平和活動家と出会うまでの17時間にわたり、スピード違反で停められないだろうかとおびえていたという。トロントでの試合を見に行くバスケットボールファンなのだと、彼らはよそおった。
クェーカー教会を通じて、ヒューヘイはジェフリー・ハウス弁護士と出会った。彼はベトナム戦争への徴兵を拒否し、1970年にアメリカからカナダへやってきた。それから大学を卒業し、トロントで社会正義に対する強い信念を持っている弁護士だという高い評価を受けるようになった。「本当に優しい、普通の少年」だというヒューヘイと、妻と子どもを連れて一月にカナダへと逃げてきた25歳の二等兵であるジェレミー・ヒンズマンの代理をつとめるなかで、かつての記憶がハウス弁護士にはよみがえるのだった。
しかし、カナダ移民難民認定委員会から認定を勝ち取ることは、若者らしい主張以上のものを必要とするだろう。昨年、317名という記録的多数の米国人がカナダへの亡命を希望した。そのうちのあるものは迫害されていると主張するマリファナ吸引者たちだった。米国で人権侵害を受けているというムスリムたちもいた。そのうち正当な難民認定を受けたものはひとりもいなかった。実のところ、ただひとりの米国人のみが十分に信頼できる迫害の恐怖を受けていると認定されたものの、裁判所はその決定を覆したのだった。
それでもハウス弁護士は、二人の兵士には見込みが十分あると信じている。すくなくとも一人の高名な専門家に出廷してもらおうと計画しているとのことだ。イラク戦争は違法であると非難している、イギリスの国際法専門家たちのひとりが候補になっており、現地での作戦は国際法を侵害し、正当化することはできないと主張してもらうのだ。彼が語るところでは、依頼者たちはこれまでの歴史のなかで、上官が民間人の子どもを撃てというような、何か違法なことを命じたときに兵士たちが命令を拒否してきたのと同じ、正当な法的立場を主張しているのだという。
ハウス弁護士が知るところでは、これまで同様のケースがただひとつだけ、難民認定委員会で討議されたことがあるという。脱走したイラン軍兵士1名が、イラン・イラク戦争でクルド人に対して毒ガスを使用したくないとして難民認定を求め、カナダの裁判所は最終的に認定を許可する判決を下し、彼は滞在を認められた。
彼はまた、二ヶ月前にイギリスの裁判所が下した判決を引用するつもりでいる。チェチェン戦争に従軍させられるためにグロズヌイへと送られたあと、ロシア軍を脱走したロシア人徴集兵、アンドレイ・クロトフのケースだ。国際法が定める人間の行為に関する基本規約を侵害する可能性のある軍務に就くことを拒否したこの徴集兵に対して、裁判所は難民資格は認められうるとの判決を下した。
ハウス弁護士は、イラク侵略に対するカナダの立場が依頼者の立場を有利にすることを期待している。当時のジャン・クレティエン首相は、戦争が国際法のもとで違法であると主張することはしなかったものの、カナダは参戦しないと決断したからだ。
イギリスと同様にカナダでの難民認定を勝ち取るため、希望者は難民認定委員会に対して自国において迫害されるおそれがあるという十分な根拠を示さなければならない。これは、逮捕と拷問が自由に行われる国々からやってきた人々にとっても難しい場合があるし、カナダの緊密な同盟国である米国市民にとってはなにをかいわんやである。また法律は、迫害されるおそれは訴追されるおそれと同じものではないと定めてもいる。
ハウス弁護士が語るところでは、たとえば禁止されている本をただ単に読んだだけで数年間も投獄されてしまうような場合、難民は迫害に直面しているのだということを、以前に委員会は認めていたという。「そういった場合に訴追することが正当化されているかどうかに、問題はかかっている」
米国が戦時脱走の罪に課すもっとも重い刑罰は死刑であると、ハウス弁護士は指摘する。とはいえ、この場合の死刑は第二次大戦以降適用されたことがなく、依頼者たちがもし帰国した場合、5年の懲役刑が課される程度であろうということは認めている。「しかし、保証はありません」彼は語る。カナダにおいて裁判所は、死刑を受けるおそれがある場合には強制送還することを禁じる判決を出してきた。
ハウス弁護士は、自分が1970年にしたように徴兵を逃れることと、二人の依頼者のように自発的に軍隊に志願したあとで脱走することに、それほど違いはないと考える。「いったん兵士になればあらゆる道徳的感情を捨てねばならない、などという議論はおかしいでしょう」
カナダでの難民認定を求めるもう一人の兵士、ジェレミー・ヒンズマンはこれに同意する。彼は2001年1月17日に入隊した。9/11テロ攻撃の4ヶ月後で、まだブッシュ大統領がイラクへ戦争を仕掛けることを明確にする前のことだった(訳注:入隊したのが2001年というのは正しいようなので、ここは記者の勘違いかと思われる)。結婚してすぐ彼は軍に入隊した。ヒューヘイと同じように、大学へ行くための資金を稼ぐためだった。
ヒンズマンは禅をたしなみ、2002年1月から妻のエンガ・エングイェンと一緒にクェーカーハウスにある教会に通うようになった。クェーカー教徒の非暴力哲学に触れ、彼の心は安らいだ。一方で自分が受けている基礎軍事訓練は、人間の本性である殺人に対する禁忌を壊してしまうかのように思え、不安になった。彼は良心的兵役拒否の申請をすべく準備をはじめた。その後ヒンズマンの部隊はアフガニスタンへ派兵され、彼は食堂で働いていた。昨年4月、司令官が突然彼をカンダハル空港の片隅に連れ出し、これから審問すると申し渡した。弁護士や立会人は認められず、審問は20分で終わり、申請は却下された。
昨年4月、ヒンズマンの部隊はノースカロライナ州フォートブラッグ基地に帰還した。しかし12月、彼はイラクへの派遣命令を受けた。1月に、彼と妻と21ヶ月の子ども、リアムはトロントへと逃げた。彼らもまたクェーカー教徒の家に身を寄せ、現在は自分たちのアパートに住んでいる。ヒンズマンはカナダの平和運動に積極的にかかわり、反戦デモで発言している。ヒューヘイも同じような役割を果たそうと考えている。
イギリスにおけるのと同様、難民認定を受けるためには何年もかかる可能性がある。申請者が認定を勝ち取ろうと望むのならば。連邦裁判所の判決に対して上訴することもできる。移民大臣が介入し、拒否された申請者にカナダにとどまる許可を与える可能性もある。米国政府との関係を修復しようとしているポール・マーティン率いる現政府のもとでは、そのようなことは起こりそうにないが。
1960年代末と1970年代初頭には、難民認定はもっと簡単だった。ハウス弁護士ほかおよそ60000人のベトナム戦争に反対する米国市民は、単に国境を渡ってサインするだけで永住許可をもらうことができたのだ。ハウス弁護士は、依頼者が公正な審理を受けられることを確信しており、彼らはあとに続く大勢の先駆けになるだろうと信じている。彼はすでに、一人の米軍女性兵士から電子メールを受け取っているという。西海岸の都市バンクーバーに行こうと思っているので、そこでの弁護士を紹介してほしいということだ。
何人かが言っているように、イラクはブッシュにとってのベトナムになるのかもしれない。いったいこれからどれだけの人々が、ヒンズマンとヒューヘイが印をつけたこの終わりなき亡命の道をたどるのだろうか。ハウス弁護士は現時点では多数を予想していない。しかし米国のメディアは、ドナルド・ラムズフェルド国防長官の「長く、困難な苦闘」というイラクとアフガニスタンについての予想が正しかった場合、2005年に徴兵が行われる可能性についてざわめきだしている。「もし、徴兵が行われるのであれば」ハウス弁護士は語る。「亡命者の数はとてつもないものになるだろう」
Posted by awtbrigade at 21:08│Comments(0)
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