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家族逆攻勢…「劇場型犯罪」に屈せず
ノド元にナイフを突き付ける衝撃のビデオ映像で始まった3邦人誘拐事件。わずか5分40秒の映像で日本国民全員を脅迫した「劇場型犯罪」を逆手に取り、家族は涙のビデオメッセージでイラク国民に訴え、イスラム教スンニ派のムスリム聖職者協会をはじめ、世論を動かした。これまで「外交二流」「弱腰外交」と言われた日本政府も水面下での交渉を含め、人質解放に全力を挙げた。
【涙の訴え】
「どうか彼を早く解放してほしい」(今井紀明さんの母親、直子さん)
「彼が家に帰れるようイラクの人々が助けてくれると信じている」(郡山総一郎さんの母親、きみ子さん)
「彼女のメールには、どうすればイラク人を助けることができるか書かれていた」(高遠菜穂子さんの妹、井上綾子さん)
現地時間の10日、涙ながらに解放を訴える人質家族のインタビュー映像がアルジャジーラとアルアラビーヤを通じ、中東全域に放映された。
アルジャジーラから「24時間以内に解放」という犯人グループの声明が流れたのは、その日のうちだった。
【誘拐ビジネス】
「イラクの家庭では、母親の存在は絶対的。母親が涙を流す映像は大きな影響があったはず。イラク国内でも誘拐ビジネスが頻発しており、イラク国民の同情を引く効果があった」と中東専門家はみる。
解放の期限が過ぎた12日未明(日本時間同日早朝)にも、アルジャジーラは「アラブの友人の皆さん、わたしたちの家族が無事でいる姿を一度でいいから見せてください」という家族のメッセージを放映、重ねて3人の解放を訴えた。
事件の一報を伝えたアルジャジーラは、報道機関としての役割にとどまらず、関係者の情報発信の窓口として、極めて大きな存在感を持った。
【水面下の交渉】
「あなた方が人質にしている3人は、純粋の民間人で、イラクの友人です」
川口外相のメッセージもAP通信、ロイター通信などを通じて世界中に配信されたが、もちろん映像だけで事態は動かない。
政府は8日の事件発覚直後から、3人が拘束されたのは中部ファルージャ周辺とみていた。
バグダッドの日本大使館員やヨルダンの首都アンマンの現地緊急対策本部、そして東京の外務省が動き出した。
自衛隊のイラク派遣にあたり、政府はイラク各地の有力部族長らを首相官邸に招いており、今回こうしたコネクションをフル活用した。電話などで、この地で影響力のある部族長や宗教指導者などの有力者に水面下で協力要請を続けてきた。
【国外からも】
並行して川口外相は、イランやシリア、パレスチナの各外相と個別に電話で会談。人質解放への支援を求めるなどアラブ諸国にも協力を依頼した。
フセイン政権時代に亡命した統治評議会のメンバーが滞在する英国にも協力を依頼するなど、あの手この手で犯人グループへの接触ルートを探った。
【諜報網も】
こうした表の外交活動と同時に、“裏ルート”も駆使した。
CIA(米中央情報局)やMI6(英国諜報部)、ヨルダンのムハバラート・アル・アンマ、サウジアラビアの総合情報庁(アル・イスタフバラフ・アル・アマフ)、パキスタンの統合情報局(ISI)などが、イラク全土に張り巡らせたヒューミント(人的情報網)で、犯人グループの割り出しを進めた。
万一の事態に備えて、人質救出の強硬手段も準備していた。
「フセイン拘束に成功した米特殊部隊の『タスクフォース121』が、突入する準備を整えていた」(政府筋)
【条件提示】
この結果、3人が拘束されたとみられるファルージャに近いラマディのドレイミ族地元部族長や、聖職者協会への働きかけが、早期の解放声明につながったとみられる。
「部族長側には日本政府側から、水面下で何らかの条件提示があったことも推測される」(安全保障専門家)という。
人、モノ、カネ、情報…。日本が持つあらゆる資源を使った“総力戦”が功を奏した形だ。
ZAKZAK 2004/04/12
http://www.zakzak.co.jp/top/2004_04/t2004041234.html