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イラク外交官射殺:鑑定で薄まる米軍誤射説 なお疑問も
昨年11月、イラクで奥克彦大使ら日本人外交官が殺害されて4カ月。警視庁が5日発表した鑑定結果は、銃撃の弾道がほぼ水平であると断定、高い位置から撃ち込まれたのではないかとした「米軍誤射」説の根拠の一つを否定した。しかし、民主党は「なお疑問は残る」として追及の構えを崩さない。何が解明されたのか、残る疑問点は何かをまとめた。【松田真、瀬尾忠義、前川雅俊】
民主党の若林秀樹参院議員らが指摘する「米軍誤射」説とは、「奥大使らが乗っていた車は、米軍がパトロールなどに使っている軽装甲車(ハンビー)の上から撃たれたのではないか」とする推論だ。
その根拠として、若林氏は、米軍から外務省を通じて提供された被弾車両の写真の(1)正面中央に弾痕がある(2)両側面の弾痕の位置が上下にずれている−−ことに着目、最初に警告射撃を受け、さらに斜め上から撃たれた可能性が高いと指摘していた。
日米両政府の情報開示をめぐる対応の遅さと不十分さも、若林氏の「誤射説」を加速させた。発生当初の米軍の通報が約6時間後と遅かったうえ、内容が揺れ動いた。また、被弾車両の日本移送が、事件発生から3カ月以上経過した3月4日と遅れ、被弾車両の写真も米から送られた11枚のうち3枚しか公開されなかった。さらに、車両鑑定に1カ月かかったことも疑惑を深めたという。
若林氏らはこれらの疑問を国会で追及、3月には民放テレビの報道番組で、写真を見せながら推論を展開したことで注目を集めた。
しかし、警視庁が、車両の前部、左側面の36カ所のうち鑑定可能な10カ所の弾痕を解析した結果、大半は下から上に向かって貫通、全体的に約1メートルの高さからほぼ水平に銃撃されたということが分かった。
これは、左前方を走行中の乗用車の窓から被害車両に向かって4メートル以内の至近距離で狙撃したことをうかがわせ、「誤射説」を否定する内容になっている。軽装甲車ハンビーの車高は183センチで、車上に銃座をつければ2メートル程度の高さになり、鑑定結果で明らかにされた被弾状況とは合致しないからだ。
問題は、使用銃器の特定だ。鑑定から、使用銃弾は、右回り、右回転4条の銃痕、口径7.62ミリ程度であることは判明したが、銃弾成分からは、使用された銃器の特定はできないという。
ただ、軍事ジャーナリストの神浦元彰さんは、鑑定結果から事件に使われた銃器を「旧イラク軍が使用していた旧ソビエト製の自動小銃AK47(カラシニコフ)の可能性が高い」と判断する。「米軍も口径7.62ミリの機関銃を保有しているが、乗用車の窓くらいの高さから手に持って機関銃を撃つのは、重量と発射時の衝撃を考えると難しい。右回り、右回転4条という銃痕はAK47の特徴と一致し、AK47ならば走行中の車内から発射することも可能だ」という。
しかし、若林参院議員は「この鑑定結果で米軍誤射説を否定するのは間違いだ」と指摘、射撃されたとする1メートル程度の高さは「ハンビー車内の座席から撃ったとの推測もできる」という。若林氏は民主党内で事件の真相究明を求める有志の会を結成し、8日に第1回の会合を開く。
一方、同様に真相究明を求めてきた自民党の舛添要一参院議員は「(米軍誤射説の論拠だった)上から撃ったとすることは否定された」と述べている。
イラクでは、昨年9月にイタリア人外交官の乗った車が米軍から撃たれ通訳が死亡するなど、米軍による誤射事件が多発した。そのうえ、事件発生が、昨年暮れの自衛隊のイラク派遣閣議決定の直前という微妙な時期だったことも、誤射を隠ぺいしたのではないかとの憶測を広げていた。
毎日新聞 2004年4月6日 1時59分