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国会と政府と報道が無視したイラク人道支援論 [JANJAN]
http://www.asyura2.com/0403/war50/msg/540.html
投稿者 なるほど 日時 2004 年 4 月 05 日 14:52:00:dfhdU2/i2Qkk2
 

2004/04/05

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 国会は04年度予算が成立し後半の関連法案審議へ焦点を移したが、前半の最大論点になった自衛隊のイラク派遣をめぐる論戦を振り返るとき、参考人として意見陳述した日本国際ボランティアセンター(JVC)代表理事熊岡路矢氏の復興支援論が光っている。

 24年にわたる紛争地での国際協力活動の体験に裏付けられた同氏の論理は、小泉政権がよりどころにした自衛隊派遣の論拠をことごとく打ち砕いた。にもかかわらず、新聞・テレビはどこも報道しなかった。多くの人に熊岡論を読んでもらうために、ここに再録する。

 熊岡氏がイラクの復興支援について意見陳述したのは、イラクへの自衛隊派遣の承認案を審議中だった1月29日の衆議院「国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動並びにイラク人道復興支援活動等に関する特別委員会」。4人の参考人の1人。民主党推薦として招かれた。

 熊岡氏は15分の冒頭発言のなかで、まず、
 ・自分自身は24年間にわたって世界各地の紛争地で国際人道支援の活動を続けてきたこと
 ・昨年1月にイラクを訪れたときの印象は、湾岸戦争以降12年間の経済制裁と米英空軍による限定的空爆、大量破壊兵器の査察によって軍事的脅威は相当減退していると感じたこと
 ・米国がイラクを攻撃した3つの理由(大量破壊兵器、反テロ、民主化)はいずれも根拠がなかったこと
 ・現在、イラクの人々の不満は、治安、インフラ復旧の遅れ、経済(雇用・収入)の悪化の3点があること
 ・一般治安はイラク警察の復興、充実と並行して昨年9月頃からよくなってきているが、政治治安は占領軍とそれに関連する組織への攻撃など相変わらず悪く、過半は占領軍に対する抵抗組織による抵抗運動とみられること

 などと、一般的な状況を説明。そのうえで、小泉政権の自衛隊派遣についての論理矛盾を次のように論破した。

 熊岡氏は自衛隊派遣が憲法・専守防衛政策、イラク特措法の「非戦闘地域」という条件から見て違法性があることを前置きしたうえで、人道復興援助のあり方に観点をしぼり、「自己完結型の自衛隊でなければイラクでの人道復興支援はできない」という小泉政権の言い分に、4つの事例を挙げて反論した。

 1、NCCI(イラクにおけるNGO調整委員会)には、112団体(メンバー58、オブザーバー54)が登録しており、60〜70人の外国人スタッフと約2000人のイラク人職員が一緒に人道支援の活動をしている。武装はしていない。武装していないがゆえに活動できる面がある。

 2、ほとんど撤退したと言われている国連職員も、実はあまり公表されていないが、10名ほどいて、アンマン・イラク間を往復しながら、約4500人のイラク人職員とともに働いている。これも基本的に非武装な、自己完結型でない活動、組織だ。

 3、日本政府(外務省)がジャパン・プラットフォーム(JPF)に所属する3団体に7〜8億円の資金提供をしているのは、NGO活動ができているという前提があるからではないのか。JVCのように市民・民間の資金のみで活動している日本のNGOも数団体ある。単発的に訪問する団体もある。みな武装はしていない。自己完結型でないNGOなどが働いている事実がある。

 4、われわれは基本的に、軍隊的なものが人道復興援助に関係することで人道援助自体がゆがんでしまい、その中立性が失われ、本来の人道援助機関・団体(例えば国連、赤十字なども)、NGOが危険な立場となるという認識を持っている。UNOCHA(国連の人道援助事務所)、赤十字、OXFAMなど多くの機関が、軍、軍隊的なものが人道支援を行うことに反対、もしくは懸念を表明している。

 4つの事例は以上だが、ジャパン・プラットフォーム(JPF)の件についてわかりにくいといけないので解説をすると、JPFは日本のNGOを束ねる組織(17団体)として外務省や財界の音頭取りで2000年に創設されたもので、活動資金の大部分は外務省から出ている。つまり、NGOの看板を掲げながらも外務省の外郭団体的な性格が強い。イラクでの復興支援活動もしており、熊岡氏はジャパン・プラットフォームをNGOと認知する政府を暗に冷やかす論理展開をしたわけだ。

 閑話休題。そして熊岡氏の話はいよいよ核心に入るが、NGOがどのようにして自らの安全確保策をとっているかについて、次の3点を挙げた。

 1、地域社会、地域の人々に溶け込むこと。この方が安全情報も、物理的、精神的な防護も受けられる。紛争地で活動している日本のNGO30〜40団体も、このような方法で自らを守っている。

 2、武器を持つことが武器を持っている人を吸引してしまうという要素があるので、武器を持たないことがかえって安全につながる。われわれは一切武器を持ったことがない。

 3、軍、軍隊的な組織と明確に距離をとることによって安全を確保している。例えば、CPAは昨年11月以降、指令45項に基づいて全NGOは登録しろ、しないと活動できないと言っているが、われわれは占領軍の傘下にある仲間と思われれば思われるほど、活動は難しくなり、危険にさらされると考えており、あえて登録せずに占領軍と距離をとっている。

 つまり、長年にわたるNGO活動から熊岡氏が得た確信は、武器や軍は人道援助活動の妨げになる、武器や軍を遠ざけなければ人道援助活動はできない、逆にいえば、自己完結型の援助はかえって危険がある、ということなのだ。

 次に熊岡氏は、自己完結型は援助の実効性からみても大いに疑問があると、次のように述べた。

 「自己完結型であると、地域社会に根差せないために、ニーズの把握においても、適正な実施においても、援助として成功しない可能性が強い。また、外国人はいずれその地を離れるので、適切な移譲(ハンドオーバー)に困難が生ずる」

 「自己完結型であればあるほど、現地の雇用、収入、経済につながらない」

 「(自己完結型は)費用対効果が相当悪くなる」

 その実例として、現在、イラクで行われているNGOの給水活動を挙げた。OXFAM、CAREなどの国際NGOが実施している給水活動は、8〜10万人を対象にしていて、年間予算は数千万円〜1億円の規模。自衛隊派遣は年間三百数十億円。熊岡氏は具体的な比較数値は示さなかったが、自衛隊の給水対象規模は2万人だから、費用対効果はおそらく1000分の1以下になるだろう。

 熊岡氏は以上の理由からイラクの人道復興援助について「国連、国際NGO、日本でいえばJICAも含めて、民間、NGO、文民で行うべきである」と結論づけた。そして、「第2次大戦以降の日本の非軍事主義、平和主義、国際協調主義、より中立的な立場をとろうとする姿勢、人道主義などが背景にあるので、われわれ日本の国際NGO、活動者も守られてきた。そこがいま揺らいでいる」と付け加えた。

 委員会は4人の参考人の冒頭発言を聞いた後に、各党委員との質疑応答に移ったが、熊岡氏は照屋寛徳氏(社民)の質問に答えて、昨年11月に殺害された外務省の奥克彦氏が防弾チョッキを着たがらなかった事実を紹介し「気持ちがよくわかる。そういうものを着ると相手との距離ができてしまう」と述べた。

 また、劣化ウラン弾による被害について、ある白血病の子供(湾岸戦争で使われた劣化ウラン弾が原因とみられる)が今度の戦争のため病院を離れて実家に帰っている間に死亡した事例を示しながら、「治療の開始から2年以内ぐらいに8割以上の子供が死ぬ」と劣化ウラン弾による白血病の死亡率が極めて高いことを明らかにした。

 このように熊岡氏の意見陳述は大変意義深いものであったが、マスコミはこれを報じなかった。わずかに『朝日新聞』が「集団的自衛権の解釈巡り意見も」の見出しで、イラク特別委の参考人意見を4人平等の扱い(10行弱ずつ)で紹介した。熊岡氏の発言についてどう書いたか、新聞研究の参考にもなるので次に掲げてみよう。

 <熊岡氏 占領軍への攻撃など政治治安は悪いが、強盗など一般治安はイラク警察によって改善されている。100以上のNGOも活動している。軍隊的なものが人道復興支援にかかわると支援がゆがむ。中立的なものに移行する時期だ。>

 ほとんど、肝心な点は省かれている。「集団的自衛権の行使を禁じている政府の憲法解釈を変更せよ」とする自民党推薦の参考人の意見から記事の見出しを付けた。マスコミとは所詮こんなものなのだろう。いつか来た道――大本営広報係――も、そうだった。

 熊岡路矢氏の意見陳述ついての要約を次ペ−ジに掲載する。

 全文は国会会議録検索システムで見られる。
http://kokkai.ndl.go.jp/cgi-bin/KENSAKU/swk_dispdoc_text.cgi?SESSION=28701&SAVED_RID=1&SRV_ID=8&DOC_ID=10740&MODE=1&DMY=28880&FRAME=3&PPOS=4#JUMP1

(高田士郎)

http://www.janjan.jp/government/0404/0404022743/1.php

日本国際ボランティアセンター(JVC)代表理事熊岡路矢氏の衆院イラク復興支援特別委員会(2004年1月29日)での意見陳述

 <冒頭発言の要約>

【自己紹介】
 私は過去24年間、国際協力ということで、紛争地(タイ、カンボジア、ベトナム、ソマリア、エチオピア、旧ユーゴ、ルワンダ、アフガン、イラク、パレスチナなど)で活動してきた。

 イラクには湾岸戦争後の91年から約1年間、給水、食料支援、とくに子供への食料、ミルクなどの配給の活動した。母子保健病院、マンスール子供教育病院には白血病、がん、難病の子供たちが多く入院しており、2002年9月からは、その治療を手伝っていた。子供たちからメッセージと絵を受けとる活動も続けてきた。

【イラク情勢】
 昨年1月に訪れたときに見たイラクは、脅威というよりは、経済的にも社会的にも本当に疲弊した、弱々しい印象の国になっていた。それを分析すると、前回の湾岸戦争以降12年間の経済制裁、米英空軍による北部と南部に限定した空爆、大量破壊兵器の査察がかなり成功しており、イラクが持っていた軍事的脅威は相当減らされていたと見えた。査察委員会の元査察団長からも、おおむね91〜92年の段階でイラクが持っていた大量破壊兵器の90〜95%以上はなかっただろう、もう少し査察を強めればほぼ完全になくすことができる、という発表があったように、軍事的脅威は感じなかった。

【米攻撃の3つの理由】
 米軍攻撃の理由を検証すると、「大量破壊兵器」については、いまだに発見されていないという意味では、あまり根拠はなかった。
 いわゆる「反テロ」については、フセイン政権が9・11事件の首謀者と協力、関連しているという前提も、ほとんど関係がないという発言(昨年9月ブッシュ大統領、ライス補佐官)があった。

 3つ目の「民主化」は、極めて内発的、自発的なプロセスなので、外国軍がミサイルを何千発も撃ち込んで実現できるものでは全くない。これも非常にいいかげんではないかと思う。

【イラクの不満】
 現在、イラクの人々の苦しみは、1つは治安、安全の欠落がある。

 2点目に、インフラの破壊、復旧の遅れがある。湾岸戦争のときは約3カ月で前政権において復旧が完了したのに対して、今回はほぼ一年経つ中で不満がかなり募っている。

 それから、雇用、収入、経済が悪いことによって、家庭、個人、社会全体が非常に不安定化している。

 占領軍行政を含めて、外国軍による軍事占領を段階的に減少させていく明確なプログラムを出しながら、イラク人による政府、行政(警察も含めて)を強化し、完成していくことが大事と考える。

 人道復興支援については、占領軍、軍隊的なものが行うのではなく、より中立的な機関、団体に移譲、移行していくべき時期に来ていると思う。

【イラクの治安】
 治安は大きくいって2つに分かれる。

 1つは一般治安。昨年8月ぐらいまでは、小学生、女の子、女性などに対する暴力、強盗、誘拐などの犯罪、事件が多かったが、9月以降、イラク警察の復興、充実と並行して、一般治安はかなり改善が進んでいる。

 もう1つは政治治安。占領軍行政などへの攻撃に関しては相変わらず悪い。この攻撃については、いろいろな見方があるが、6、7割は占領軍に対する抵抗組織の抵抗運動ではないかと思う。非常に不幸なことに、占領軍及び占領軍行政だけではなく、それに関連すると思われる国連や赤十字国際委員会のビルが攻撃を受けている。
【自衛隊派遣】
 日本の自衛隊派遣は憲法、専守防衛政策から見て問題がある。

 イラク特措法の非戦闘地域という条件から見ても問題がある。全体としてまだ戦争、戦闘が続いていると認識している。

 次に人道復興援助として見た場合、自衛隊派遣をどう見るかという点について話したい。

 防衛庁長官は、武装した自己完結型組織の自衛隊でなければ、現在のイラクにおいて復興援助はできないといっているが、私たちNGOとしては、具体的に4つの事例を挙げて反論したい。

 1つは、NCCI(イラクにおけるNGO調整委員会)という組織があり、58がメンバー団体として、54がオブザーバー団体として登録されている。つまり合計112団体がいまでもイラクで人道支援活動をしているだが、60〜70名の外国人スタッフと約2000人のイラク人職員が一緒に働いている。武装していないグループがこれだけ多く活動している。武装していないがゆえに活動できるという面がある。

 2番目に、国連はほとんど撤退したといわれていて、あまり公表されていないが、じつは国連職員約10名がおり、アンマンとイラクを往復しながら、約4500名のイラク人職員と働いている。これも基本的に非武装、自己完結型でない活動、組織だ。

 3番目に、日本政府(外務省)は、ジャパン・プラットフォームの3団体に合計7〜8億円の資金提供をしている。NGOは活動できているという前提で資金を出しているのだと思う。私たちJVCもそうだが、市民、民間の資金のみで活動している日本のNGOも数団体ある。単発的に訪問しているところもある。みな武装はしていない。自己完結型でないNGOが働いているという事実がある。
 われわれは基本的に、軍隊的なものが人道復興援助に関係することで人道援助自体がゆがんでしまい、中立性が失われ、本来の人道援助機関、団体、例えば国連、赤十字も、NGOも危険な立場となるという認識を持っている。

 この観点で、UNOCHA(国連の人道援助事務所)、赤十字、OXFAM(11カ国、12団体の連合体)など多くの機関が、軍、軍隊的なものが人道支援を行うことに反対、もしくは懸念を表明している。

【NGOの安全確保策】
 NGOスタッフはどのように自らの安全を確保しているかという点について話したい。

 1つは、地域社会、地域の人々に溶け込むことで、安全情報も受け、物理的、精神的なものも含めて実態的に守ってもらっている。
 日本のNGO約400団体のうち、30から40団体が紛争地で活動しているが、いずれもこのような方法をとっている。

 2番目に、武器を持たないことがかえって安全につながる。武器を持つことが武器を持っている人を吸引してしまうという要素があるので、われわれも含めて活動歴20〜30年に及ぶNGOも、一切武器を持たない。むしろそこが安全につながると感じている。

 3番目に、軍、軍隊的な組織と明確に距離をとることによって安全を確保している。例えば、昨年11月以降、CPAが指令45項で、全NGOは登録しろ、登録しないと活動できないといっているが、われわれは占領軍の傘下、仲間と思われれば思われるほど、活動は難しくなり、危険にさらされるという点で、あえて占領軍と距離をとることによって安全を確保している。

【援助の実効性】
 次に援助として見た場合、自己完結型であるとどういうことが起きるかというと、地域社会に根差せないために、ニーズの把握においても、適正な実施においても、援助として成功しない可能性が強い。また外国人はいずれその地を離れるので、適切な移譲(ハンドオーバー)に困難が生ずるという点がある。

 2番目に、自己完結型であればあるほど、現地の雇用、収入、経済につながらないという点がある。

 3番目に、費用対効果が、非常に、もしくは相当悪くなる。

 現在、イラクでは、OXFAM、CAREなどのNGOが、8〜10万人を対象にした給水活動をしているが、NGOの場合、年間数千万円から、機械の装備などを入れても1億円ぐらいで活動している。自衛隊派遣は年間三百数十億円が必要ということで、これは非常に費用対効果が悪いと思っている。

 したがって、人道復興援助は国連、国際NGO、日本でいえばJICAも含めて、民間、NGO、文民で行うべきであると思う。

【平和主義の裏付け】
 24年間、非常に厳しいところで働いてきた1人の活動者として、第2次大戦以降の日本の非軍事主義、平和主義、国際協調主義、より中立的な立場をとろうとする姿勢、人道主義などが背景にあるので、われわれ日本の国際NGO、活動者も守られてきたと思う。いまそこが揺らいでいる。ここをもう一回確認してほしいと思う。
 最後に、いまの時刻、ヨルダンで購入した医療器具を持ってバグダッドに向かっている原文次郎から届いたメッセージを2つ届けたい。

 イラクにおいて、私たちNGO、あるいは国連を含めた国際機関、民間に、復興人道支援を主に委ねてほしいというのが1点。

 2点目は、戦争の前後、戦争中、戦後(に大きな被害を受け)、とくに劣化ウラン弾の影響で小児がんになった者も多いイラクの子供たちのために働き続ける。このことを理解し、支援してほしい。

<主な質疑応答の要約>
 ○藤田幸久委員(民主) 日本政府は五千億円の予算規模を持っているが、これが国際NGOの資金に回れば、どのような活動ができるか。

 ○熊岡参考人 フランスのACTEDはサマワ、バグダッドなどで給水の活動をしている。それぞれ7000万円〜1億円ぐらいの単位。ドイツのAPNは主にバグダッド北のサドルシティー、ハイタリクという地域で浄水、給水の活動をしている。これも費用単位でいうと1億円くらい。現在、112の団体が活動しているが予算規模は数十億円だろう。数千億円はかなり飛躍した額になるので、国連などでやるべきだ。

 イラクは中進国以上のレベル。地方で井戸を掘るということよりは、既にでき上がった上水、下水の仕組みを本格的にメンテナンスすることが求められている。これはかなりの予算を必要とする。とくにバグダッドは人口五百万以上だが、水には非常に困っていて、どぶの水を飲んでいる人々もいる。これを直すには、50〜100億円ぐらいのオーダーになる。国連、場合によっては日本のJICAのような政府系機関が、NGOの協力によってできるのではないかと考える。ほかに、基礎教育、基礎福祉等々も求められている人道支援の分野だと思う。

 ○丸谷佳織委員(公明) NGO活動は軍隊から離れるということが各国NGOのコンセンサスになっているとの話だが、40カ国近い国から軍隊が派遣されいて、各国のNGOは自国の軍隊に対して、来るべきではない、と考えているのだろうか。

 ○熊岡参考人 例えばアメリカのケアが、アメリカ軍が来るべきでないとは言っていないと思う。ただし、軍隊的なものが人道支援を行うと人道支援を本来行う機関が危なくなるということはアメリカの団体もいっている。

 イギリスのOXFAM、クリスチャンエイド、アクションエイドとイギリス軍との協力は基本的にはない。ある程度の意見交換、情報交換の場はあるようだがも、それも含めて極力少なくするようにしている。とくにNGO側はそうしていると聞いている。

 ○山口富男委員(共産) 国連が国際人道法をきちんと遵守しなさいと決議でいっている。となると、国際人道法上、占領国がやるべき復興人道の支援がある。武力行使によってインフラを含めて破壊したのだから、それを立て直すのは当然の仕事だ。そういう占領国がやるべき復興の仕事と、NGOとしての公平性、中立性を保った人道復興支援の仕事と、これはきちんと区分けをすべきなのか。
 ○熊岡参考人 これは国際NGOを含む国際社会で非常に難しい議論になっている。つまり1つは、当然壊した軍なり国が直すべきだという議論がある。亡くなった命、けがに対して補償せよという要求もアフガン、イラクなどに関して出ている。

 他方、攻めていった国、軍隊が、行政部分も、援助部分も含め、いつまでもやるのは好ましくない、治安が悪くなるという点で、どこかでこれを切り離す分かれ道をつくり、より中立的な存在に復興人道支援を委ねよという論議がある。綱引きが続いている。

 ○照屋寛徳委員(社民) 国連などより中立的な機関に復興人道支援の中心を移していく手だてとして、日本は何ができるか。

 ○熊岡参考人 日本政府は、占領軍行政に加担していると見られるよりは、より中立的に動くことによって、亀裂の入った国際社会をまとめる、あるいは国連の復帰を図れるような方向で努力してほしいと希望している。中東諸国の日本に対する感情は一般的にはこれまでよかったのだから。

 ○照屋委員 部族社会というイラクの社会構成と、復興人道支援のかかわりについて意見を。

 ○熊岡参考人 イスラム社会以外でも当然だが、地域社会との協力関係、信頼関係があって初めて支援、援助、協力が成り立つということは、国連の援助関係、日本政府の援助関係、NGOが当然認めているベースだ。

 自衛隊の場合はチームで動き、コマンダーなりの指示がなければ動けない。一人ずつばらばらになって地域社会に入ることがそもそも不可能だ。そういう意味も含めて、復興協力には向かない組織だと思う。

 昨年11月亡くなられた奥克彦さんとは10年来の知り合いだったが、彼が調査に行くときに防弾チョッキを着たくないといっていた気持ちは本当によくわかる。そういうものを着ては相手との距離ができてしまう。自衛隊だけではないが、軍隊的組織では軍隊の秩序、軍隊の服装、装備、銃、さまざまなものが入る。それ自体が本来の協力援助の基本的な妨げになると理解している。

 ○照屋委員 劣化ウラン弾の放射能汚染による自衛隊の生命身体の安全に対して、日本政府は配慮が足りないと思っている。イタリア軍はイラクで7名が被曝をして引き揚げたという。イギリス軍は南部のバスラで1・9トンの劣化ウラン弾を使用したといわれている。湾岸戦争で百万発の劣化ウラン弾が使われて、アメリカ社会で深刻な湾岸戦争症候群がいわれた。劣化ウラン弾による被害の実態について聞かせてほしい。

 ○熊岡参考人 ラナちゃんという白血病の子は湾岸戦争で使われた劣化ウラン弾が原因と推測される。今度の戦争の始まる前後、病院を離れなければいけなくて、実家に帰っている間に亡くなった。われわれは、白血病の子供たちの治療の手伝いをしているが、非常に残念ながら、劣化ウラン弾と思われる原因によって生ずる白血病では、発病、治療の開始から2年以内ぐらいに8割以上の子供が死ぬという高い死亡率を示している。

 湾岸戦争、ユーゴにおけるNATO(米英空軍)による空爆で使われて、現地の人々、アメリカ、イギリスの兵隊の側にも被害ができていることで、結構調査を求める要求は出ている。健康、安全のためにきちんと調査することが絶対必要だが、米軍から、どこでどのくらい使ったかという情報を得ることが大事だと思う。

(高田士郎)

http://www.janjan.jp/government/0404/0404022743/2.php



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