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衝撃映像に米メディア苦慮 イラク米民間人殺害事件
http://www.asahi.com/international/update/0403/001.html
歓喜の声を上げた民衆が遺体を切り刻み、車で引きずって橋の上につるす――イラクのファルージャで3月31日に起きた米民間人殺害事件が、米国内に波紋を広げている。残忍な映像をどこまで伝えるかをめぐり主要メディアの対応は分かれ、ブッシュ政権は沈静化に必死だ。93年に米兵18人が似たような形で殺され、撤退を余儀なくされた「ソマリアの悪夢」を思い出しながら、米国社会はイラクへの関与を自らに問いかけている。
<分かれる対応>
事件の一報は31日の朝、米国に飛び込んできた。発生当初、CNNなど米主要テレビは、燃えさかる車両や歓喜する住民の映像にとどめていた。同日夕になって身元が判明し遺族に連絡されたことを確認すると、CNNや公共放送のPBSは相次いで遺体映像の放映に踏みきった。
しかし、FOXやNBCは「卑劣な行為の恐怖を伝えるためにすべてを見せる必要はない」(NBCプロデューサー)との判断から、遺体の放映自粛を継続。ABCやCBSは一部にぼかしを入れた。
一方、新聞はどの面に載せるかの判断は分かれたものの、多くが翌4月1日付朝刊で遺体写真の掲載に踏みきった。ニューヨーク・タイムズは焼けこげた遺体2体がロープで鉄橋につるされた写真を1面に大きく掲げた。ワシントン・ポストやロサンゼルス・タイムズはさらに、残虐な行為の場面を含むビデオ映像をインターネット上の自社のウェブサイトで公開した。
米メディアが対比の対象として持ち出すソマリアでの事件では、エリート部隊の米軍兵士が武装した群衆に殺され、遺体が引きずり回された。その映像は「一日で派遣の全面的見直しにつながるほど作戦面で影響を与えた」(ブルッキングズ研究所のオハンロン上級研究員)。
<撤退の機運>
殺害された米国人らが勤務していたノースカロライナ州の警備会社にパート勤務する技師は、米CNNに対し「彼らの死は無駄死にだ。イラク人は我々が現地にとどまることを望んでいない」と話した。住民の一人は「イラクの情勢には驚かないが、遺体を損傷したことには驚いた。彼らの死でこの町と戦争が結びついた」と話す。事件の映像は、現地の反米感情の強さと治安情勢の悪化を改めて米国民に印象づけた。ABCテレビの書き込みサイトには、事件をきっかけに「どうして我々は嫌われるのか」のテーマで、さまざまな意見が寄せられている。
ただ、今回の事件は、今のところイラクからの撤退論議には結びつきそうにない。戦略国際問題研究所(CSIS)のサンダーソン研究員は「平和維持活動(PKO)部隊として派兵されたソマリアと、米国自らが今の状況を作り出したイラクでは事情が違う」と指摘する。ある程度の安定を回復しない限り、撤退という選択肢はないというのが多くの専門家の見方だ。
<沈静化目指す政権>
ホワイトハウスのマクレラン報道官は1日、「我々が凶悪犯らの攻撃にひるむことはない」と述べ、占領政策に変更がないことを強調した。一方で遺体映像の放映については「取材の際には、責任ある行動をとってほしい」とも語り、神経質になっていることものぞかせた。国防総省も31日「どの映像を放送すべきかを各局に助言するのはペンタゴンのすることではない」と介入を否定した上で「適切な判断」を求めていた。
ブッシュ政権がメディアの扱いに気をもむのは、衝撃的な映像はこれまで米世論に大きな影響を与えてきたからだ。ブッシュ政権や暫定占領当局(CPA)は、事件について、フセイン元大統領の支持基盤だったスンニ派三角地帯で起きた特異な事件とみて、南部やバグダッドでの治安の進展を強調している。
ただ、復興事業の民間請負業者を狙った殺害事件は、バグダッドや南部でも発生しており、占領行政に対する不満や反発は全土に広がっているのが実態だ。アラブ事情に詳しいジョージタウン大のハドソン教授は「占領への反発は三角地帯を超えて広がっている。今回の出来事がほかの地域のイラク人を刺激し、類似の事件が起こる可能性もある」と語る。
事件後を含む30日から1日までのCBSの世論調査では、ブッシュ大統領の「対テロ戦争」に対する支持は2週間前の64%から58%に急落。約1年前の昨年5月の79%に比べても落ち込みぶりが際だってきた。オハンロン氏は「もしこうした事件が今後、頻発すれば、どこかの時点でイラク政策に対する世論が変質しはじめるかもしれない」とみる。
(04/03 01:18)