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【ローマ井上卓弥、エルサレム樋口直樹】キプロス共和国(ギリシャ系)と北キプロス・トルコ共和国(トルコのみ承認)によって南北に分断された地中海東部の島国キプロスの再統合交渉は3月31日、スイス・ルツェルン近郊で最終日の協議を行った。協議で、一部修正が加えられたアナン国連事務総長の最終仲裁案をキプロス再統合案として事実上受け入れた。この結果、30年ぶりの再統合の行方は今月24日、南北同時に実施される住民投票の結果にゆだねられた。
外交筋によると、仲裁案の具体的条件をめぐる協議は、トルコの北部派兵(74年)で南に逃れたギリシャ系住民約18万人の帰還や土地所有権問題をめぐって紛糾。とくに、人口や経済力で劣る北キプロス側に配慮した「全面帰還や土地買い戻しの長期凍結」規定に対し、ギリシャ系キプロス側が異議を唱えるなど難航した。
こうした点について、最終仲裁案にどのような修正が加えられたかは不明だが、ギリシャ、トルコ双方に影響力を持つ米国のパウエル国務長官やEU幹部が外交的圧力を強め、すでに合意済みの住民投票実施を確認する形に落ち着いたとみられる。
アナン事務総長は31日深夜、両当事者と後見役のギリシャ、トルコ両首相に対し「(再統合案は)当然ながら妥協案だが、これまでで最も公正な平和と繁栄、安定への機会と信じる。過去の多くの過ちを繰り返さないよう要請する」と述べ、「連邦制国家」に統合されたキプロスの欧州連合(EU)加盟(5月1日)実現に協力するよう強く求めた。
現時点での再統合に対する世論動向は、北キプロスで賛否がほぼきっ抗し、ギリシャ系では約60%が反対姿勢とされる。住民投票の結果、南北いずれかで再統合賛成派が過半数に満たない場合には、ギリシャ系キプロスがEUに単独加盟することになる。また、再統合案に賛成したエルドアン・トルコ首相を除く3者は明確な賛否の意思表示をしておらず、再統合に向けた政治日程が順調に推移するかどうかも未知数の状態だ。
◇キプロス再統合案(原案)の要旨は以下の通り。
一、北キプロス領へのギリシャ系帰還者を北の人口比21%から18%に削減。
一、北キプロス領を全島の36%から29%に縮小しギリシャ系キプロスに編入(ギリシャ系12万人が所有地を回復)。
一、南北所得格差の是正が進むまで、ギリシャ系による北キプロス領内の土地購入を制限。
一、北キプロス駐留トルコ軍は縮小。全面撤退はトルコのEU加盟後(時期は未定)に延期。
一、ギリシャ系6、トルコ系3による大統領評議会が連邦制国家の行政を担当。双方が1人ずつ首相を選びEU代表権を分担。【ローマ井上卓弥】
■ことば(キプロス問題)74年、ギリシャ系とトルコ系住民の内戦にギリシャ軍事政権が介入。トルコが対抗して北東部に派兵し、全島の約36%を占領した。トルコ系は83年、北キプロスの独立を一方的に宣言。現在の人口はギリシャ系キプロス約50万人、北キプロス約20万人。南北境界線をはさみ、北にはトルコ軍約3万人が駐留している。
[毎日新聞4月1日] ( 2004-04-01-12:04 )
http://www.mainichi.co.jp/news/flash/kokusai/20040401k0000e030061001c.html