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【記者:山村敬一】
4月9日(ブルームバーグ):武装グループが民間人を人質に自衛隊のイラク撤退を迫る−−。イラク復興支援が思いもかけない重大事件に発展して小泉政権を襲った。2001年4月の就任以来、ブッシュ米政権との「日米同盟」と、国連を中心とする「国際協調」を外交政策の両輪に据えてきた小泉純一郎首相。事態の展開によっては政権の命運を賭ける決断を迫られる可能性も出てきた。
「サラヤ・アル・ムジャヒディン」と名乗る犯行組織は、カタールの衛星テレビ「アルジャジーラ」が人質映像の放映から3日以内に自衛隊がイラクから撤退しなければ、人質を殺害するとの声明を出している。アルジャジーラの放映は日本時間8日午後9時だったため、犯行組織が定めたタイムリミットは同11日午後9時となる。
政府は、犯行組織への接触を急ぐとともに、米政府など関係国、国際機関に情報提供など人質救出に向けた全面的な協力を要請したが、9日午後4時時点で「犯行グループとの連絡は取れていない」(福田康夫官房長官)。事態打開への糸口はまったくつかめていないもようだ。
それでも政府は今のところ、「自衛隊は撤退せずに、人質を無事救出する」というベストシナリオを目指している。小泉首相は9日昼、自衛隊撤退の考えは「ない」と明言。3日以内に人質が救出されない場合でも撤退させないのかとの質問にも「人質を早く救出するように全力を挙げる」と強調した。福田長官も「テロの脅迫に踊らされて、そう簡単に自衛隊を撤退できるものではない。テロの思うツボだ」と語気を強めた。
連立与党も政府の方針を支持している。自民党の安倍晋三幹事長は「自衛隊派遣の所期の目的を達成することがイラク国民はもとより国際社会の平和と安定に寄与すると確信している」と表明。公明党も、冬柴鉄三幹事長が「自衛隊の撤退を求められる理由はない」と強調している。
民主は自衛隊派遣の責任追及
これに対し、野党側は、人質の救出に全力を挙げる点では政府・与党と一致しているものの、イラクの自衛隊については、派遣した小泉政権の責任追及や撤退を求める声が上がっている。
民主党の菅直人代表は9日の衆院厚生労働委員会で、人質救出には「できることは何でも協力する」と述べる一方で、宿営地付近への着弾が確認されているイラク南部のサマワは「イラク特措法に基づく非戦闘地域ではなくなる」と語り、自衛隊活動の法的根拠がなくなったと強調。こうした事態を招いたのは「第一義的に小泉首相の責任だ」と追及した。
共産党の志位和夫委員長が「あらためて自衛隊の速やかな撤退を求める」との姿勢を鮮明にし、社民党の福島瑞穂党首も「イラク特措法に反する自衛隊のイラクでの活動を直ちに中止し、イラクから速やかに撤退させるべき」と強く求めている。
求心力弱まる国際社会
一方、国際社会をみても、米英主導のイラク戦争を支持した各国の対応は一枚岩とは言えなくなってきている。開戦直前の2月に、事実上イラクへの武力行使を容認する新決議案を国連安保理に米英と共同で提示したスペインは、次期首相に就任するサパテロ社会労働党書記長が今年3月、同国のイラク派遣部隊を撤退させる方針を表明した。
米国の求めに応じて参戦し、積極的に軍事支援してきたポーランドのクワシニエフスキ大統領も、対イラク戦争の大義名分とされた大量破壊兵器が未発見であることに関して、「わが国はだまされてきた」と述べ、従来の姿勢を転じて米英両国を批判した。
NHKの報道によれば、ラムズフェルド米国防長官は、福田官房長官が自衛隊のイラク撤退の「理由がない」と表明したのを受けて、「明らかにそれは良いことだ。正しい姿勢であり、感謝する」と直ちに反応。日米同盟の絆の強さをあらためて内外に見せつけた。
間もなく発足3年目を迎える小泉政権。テロに屈して自衛隊撤退要求に応じれば、「日米同盟」と「国際協調」に傷が付く。逆に、人質に万一の事態が起きた場合、政権基盤そのものが揺らぎかねない。正真正銘の正念場を迎えた。
更新日時 : 2004/04/09 19:50 JST
http://quote.bloomberg.com/apps/news?pid=90003017&sid=auG6hbOU1JKg&refer=jp_japan