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[表示写真:爆破された列車のターミナル駅マドリッド・アトチャ駅入り口にて]
(転載者)「バルセロナから愛を込めて」さまの一件、私も他人事ではないと思います。というわけで、他のルートでの現地レポートがないか個人的に調べたところ、このようなサイトがありましたので、ご紹介いたします。マドリッド(マドリード)の列車が止まった理由が、連続爆破事件だったと知ったという筆者の生々しいレポートも必読ものだと思います。詳しくは一読を。
http://perso.wanadoo.es/takeshi/
喜多武司のぼちぼち宿
http://perso.wanadoo.es/takeshi/election040316.html
マドリッド報告 スペイン総選挙
・・・喜多 武司・・・
3月14日(日)。スペインの総選挙だ。大方のアンケート調査予想では現政権・民衆党(Partido Popular、通称PP、中道右派)が絶対過半数である175議席を確保する勢いであった。バブルぎみとはいえ経済発展著しい現政権の内政問題には野党第一党・社会労働者党(PSOE)といえどもケチをつけるようなところが見当たらない。
8年前まで政権を担当していた社会労働者党の時には20%を超える失業者数であったが民衆党政権下では半減以下の10%を割っている。非の打ち所がないみごとな経済運営を民衆党は行ってきた。逆にサパテロ書記長率いるPSOEは内部はバラバラ、サパテロ氏の指導力低下が問題となっていた。またお手盛りの民衆への耳障りの良い政策にはシンパ新聞であるエル=パイス紙からももう少し現実味のある政策を、とはっぱをかけられる始末。
だれもが民衆党政権がゆるぎないものに見えた。しかし、山が動くことになる。スペイン総選挙に標準を合わせた通勤電車連続爆破テロがその3日前に起こったのだ。スペインではちょうど1年前にイラク派兵にともなう大規模なデモがおこった。国民の9割がイラク派兵に反対の意を唱えた。マドリッド中心部には100万の人間が集まる。スペインの主要都市でも数十万単位の反戦デモが展開されたのだ。
しかし、アスナール政権のイラク派兵強硬策のまえに急速に反戦運動はしぼんでいく。だれもがフセインは大量破壊兵器を隠し持っているのではないか、というマスコミの喧伝に馴らされていく。イラク派兵は問題ではあるが、経済は好調だし、自分の生活は潤うわけだし、まあ、いいか、というところが一般国民の本音の部分であった。
しかし総選挙3日前の通勤電車連続爆破テロが事態を一変させる。初めアスナール政権はバスク地方の分離独立を叫ぶETA(バスク祖国と自由)が犯人である、と決めつける。しかし、私には今回の列車テロがETAの仕業とはどうしても思えないいくつかの兆候があった。この20年ほどは常に政府要人・軍関係・警察関係といった権力側の人間を狙ったテロを繰り返していた。時には一般民衆が巻き添えをくうことはあるが、市民を殺すことが目的ではない。それに爆破テロを行うときは常に事前予告をしている。
ETAが事前予告もなく今回の列車爆破テロのように一般民衆を無差別殺戮するとは考えにくい。それにETAシンパの幹部が今回の列車テロはETAと無関係である、という声明を公式に表明している。使われた事件爆弾は通常ETAが使用するものと酷似している、ということがETA犯行説の有力な決め手とアスナール政権は考えたのだが。
その後、アルカイーダ犯行説が浮上するが、アスナール政権はETA犯行説一点張りに終始する。なんとか14日の総選挙を自党に有利に展開させたい。アルカイーダの犯行となったら、イラク派兵をした見返りとしての列車テロということになり、選挙の行方が渾沌となる。しかし前日の13日にはアルカイーダの犯行というのがほぼ定説となり、アスナール政権は事実を知っていながら、一般国民にウソをついていたのではないか、という疑惑が急浮上する。
うそつきは政権の始まり。アスナール政権にむけて一般国民はうそつきコールの大合唱となる。日頃選挙になど興味がない若者が正義感に燃え大挙して、投票所にむかう。アスナールがイラク派兵をしたから列車テロという報復をアルカイーダから受けたのだ。イラク派兵反対を掲げてきたPSOEに票がどっと流れこむ。投票率;77.22%。
山は動いた。PSOE;164議席、PP;148議席となり社会労働者党が下院で8年ぶりに第一党になる。選挙の翌日には辛辣にブッシュ・ブレア政権批判をし、イラク暫定政権が樹立される6月30日までにスペイン軍のイラク撤退をサパテロ次期首相は言明する。
一票の重さ、迫力をまざまざと見せつけた瞬間であった。
2004年3月16日 喜多武司
http://perso.wanadoo.es/takeshi/mad040317.html
マドリッド報告 通勤電車連続爆破テロに想う
・・・喜多 武司・・・
今回の通勤電車連続爆破テロの路線は日本で言ったら、朝のラッシュ時に数分間隔で走る総武線に似ている。首都圏の郊外から下町地区をはしる路線だ。計4本の列車が合計10個のデイバックに入った時限爆弾で10車両が吹き飛んだ。2階建て電車で屋根から火柱が上がったという。ちょうど携帯でアトチャ駅で家族と話をしている一婦人の会話のなかで爆発音・悲鳴が録音されているテープがテレビで公開された。
自分の生活維持のために黙々と働く罪のない人々が一瞬のうちに地獄に遭遇することになる。200名が死亡。1463人が怪我をし、いまだ370名ほどが危篤状態や重体で入院している。アフガニスタンやイラクで起こった戦争が遠因で、ブッシュ大統領の力の政策に賛同したスペイン・アスナール政権がスペイン軍派兵をしたばかりに、報復としてアルカイーダにスペインが標的にされたわけだ。世論を自分たちに有利に動かすには社会の底辺の犠牲者が必要とアルカイーダの参謀どもは考えたにちがいない。よりによって低所得者層が多く住む路線を選び連続爆破テロをした。
こんなことが許されていいわけがない、と人々は口々にいう。しかし現実には映画の中でしか起こり得ないような大惨事が起こった。平穏な生活が一瞬にして吹きとんだ。しかしブッシュが今イラクでしていることと、どこがどう違うというのか。いきなり爆弾の雨を降らせる米軍にイラク市民はどのような感情をいだくか、すこし考えただけでおわかりだろう。イラクではブッシュの戦争のために1万人の市民が殺された。スペインではアルカイーダの報復のために200人の市民が殺されたんだ。
日本のみなさんもイラク派兵の重大性を充分に認識して欲しい。世論調査では40%以上のひとが自衛隊のイラク'派遣'に賛成だという。国際貢献をしにいっているのだからいいではないか、と思っているのだろう。何が'派遣'だ。言葉の綾に惑わされないでもらいたい。自衛隊がイラクに行くことは立派な'派兵'なんだ。いいかげん権力よりの大マスコミに騙されないでもらいたいもんだ。
何でもお上の言うことをハイハイと聞く忠犬'ポチ公'のままで日本国民がいたならば、とんでもないしっぺ返しが今後の日本社会を襲うことになる。イラク派兵を止められなかった日本国民はアルカイーダから報復をうけることになろう。今回のスペインでの通勤電車連続爆破テロはいい教訓ではないか。
6月には参院選挙がある。自分や自分の家族が殺されたくなかったら、選挙なんて関係ねえや、と思っている君、イラク戦争反対を唱えている政党に投票しにいくことだ。その1票が大変な力となり、今回のスペイン総選挙のように盤石な保守政権をひっくり返すことができる。ちょっとした権利の行使が世の中の流れを代えられるんだ。直接生活に関係がある経済の浮沈のことなんか殺されることに比べてたらどうということはあるまい。
知り合いの5歳になる女の子がママに質問をしていた。「ママ、テロと戦争ってどこがどう違うの?」子供は本質を見抜いている。
2004年3月17日 喜多武司