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マドリードで起きた列車同時爆破テロは、容疑者の人脈や起爆装置の仕組みなどから、国際テロ組織「アルカイダ」との関係が濃厚となってきた。高まるテロへの危機感。今後、欧州はどう対応していくのか。そしてスペイン次期政権の「イラク撤兵表明」に米国は、どう動くのか。世界に広がる波紋を追った。【マドリード山科武司、ロンドン岸本卓也、ワシントン中島哲夫】
米国報道によれば、国連スペイン大使は「犯行はバスク人非合法組織によるもの」とした国連への報告を取り消したといい、アルカイダ関与説は次第に強まりつつある。
16日付の地元スペインのエル・パイス紙は「捜査当局が実行犯6人を特定」と報じた。同紙によると6人はいずれもモロッコ人で、うち一人が爆破で生き残り、逮捕されたジャマル・ゾウガム容疑者(30)だという。また、事件の死亡者のうち、まだ身元が判明していない死体の一つは、実行犯の可能性があるという。
捜査当局はこの報道についてコメントしていないが、ゾウガム容疑者は、国際テロ組織「アルカイダ」のスペインでの活動を組織したイマド・ヤルカス服役囚=01年9月の米同時多発テロへの関与容疑でスペインで服役中=の支持者だった。また、昨年5月モロッコ・カサブランカで40人以上が犠牲となった爆破テロ事件の実行犯とのかかわりも指摘されている。
◇難しい「対テロ」共通対策…欧州
今回の事件は、8〜20キロの爆薬をデイパックに詰め、携帯電話のタイマー機能を用いて起爆装置を作動させる仕組みだったことも判明した。
ゾウガム容疑者のほか、モロッコ人、インド人それぞれ2人が携帯電話を偽名で売買した容疑で逮捕され、うちモロッコ人に携帯電話を販売していたインド人2人は釈放されたが、モロッコ人2人はいずれも窃盗や殺人で過去に逮捕歴があったとされる。
一方、AP通信などが伝えたところによると昨年、インターネット上でスペイン上下院選挙前に同国を狙ったテロ攻撃が予告されていた。
ノルウェーの国防研究機関が見つけたもので、アラビア語で書かれた文書は米国への協力国の排除を計画していることを明らかにし、「2、3回攻撃すれば世論が厳しくなり、スペインはイラクからの撤退を余儀なくされるだろう」「攻撃に持ちこたえても社会労働党が選挙で勝利すれば軍は撤退するだろう」などと記されていた。
この文書がアルカイダ関係者によるものかどうかは今のところ不明だが、11日のマドリードのテロ事件は、01年9月11日に発生した米同時多発テロ事件からちょうど911日目にあたることを注目する見方もある。
今回の事件は、01年9月の米同時多発テロ以来の交通機関を狙った大規模テロ事件となった。欧州連合(EU)はテロ対策を根本的に立て直すことにしているが、難問が立ちはだかっている。
鉄道の警備は難しい。ドイツ議会では15日、「空港に匹敵する警備を駅に実施できないか」という議論が巻き起こった。しかし、多数の駅に警備員を配置したり、乗客の荷物検査を行うことはコストの面で無理がある。また、警備強化による鉄道輸送力の低下は経済に打撃を与える。
こうした中、英国・ロンドンの地下鉄は「何もしないわけにはいかない」と、私服警備員を抜き打ち的に車両に潜入させ、不審者や不審物の取り締まりにあたらせることにした。駅構内には「不審物があったら通報を」と書かれたポスターが張られた。「用心深くなれ」というブレア首相の呼びかけをメディアも真剣に報じている。
テロリストの検挙も容易ではない。EUは5月に15カ国から25カ国体制に拡大するが、各国の司法当局の連携は十分とはいえない。新規加盟国と国境を接するオーストリア政府は「米中央情報局(CIA)のような大掛かりな情報機関をEUに作れ」と提案している。
EUは19日に法相・内相緊急理事会を開き、25、26日のEU首脳会議でもテロ対策を最優先議題にする。
スペインはEU域内で出入国審査が免除される「シェンゲン協定」に調印しており、域内の他国経由での入国が可能な上、国内に50万人ものモロッコ人が居住し、小型ボートで地中海を渡る密航者も横行している。
ただ、テロ対策の強化がイスラム教徒に対する人権侵害につながる懸念もある。すでに、欧州のイスラム系団体は「警官から理由のない尋問や拘束を受けたり、地域住民からの差別がひどくなった」と苦情を訴えている。反発するイスラム系社会がテロリストの温床になる懸念も指摘されている。
◇「有志連合」の動揺を警戒…米国
事件は、米国に対しても大きな打撃となった。米国を支持してきたアスナール政権与党が総選挙で敗れ、イラク派遣軍の引き揚げを主張してきた社会労働党が勝利。米国は「有志諸国連合」の動揺や撤兵の恐れに対処せねばならなくなったからだ。
ブッシュ大統領は15日アスナール首相とサパテロ次期首相に電話した。首相には支援に感謝し、次期首相とはテロ対策を含めて協力し合うことを確認したといい、マクレラン大統領報道官は、同盟にはひびが入らないという見方を強調した。
イラク駐留スペイン軍について社会労働党は「6月末の主権移譲までは駐留容認」「7月以降も国連がイラク問題で中心的役割を果たせないなら撤退」という方針を掲げてきた。
このため対処案として急浮上したのが、各国のイラク派兵に明確な「お墨付き」を与える新たな国連安保理決議の採択だ。米国務省高官は15日、「7月までに新決議を、という話は以前から出ていた」と語り、採択を推進する可能性を示唆している。
だが、こうした手を打たざるを得ないのは、苦境に迫られてのこと。アルカイダ犯行説への米国の姿勢も、こうした状況を反映しているようだ。
列車爆破について米国土安全保障省のハッチンソン次官は15日朝、「アルカイダに関係があると確信している」と明言。しかし、直後にホワイトハウスで会見したマクレラン報道官は「まだ分からない」と強調した。
米政府は重要問題については関係当局が統一見解をまとめ、メディアに対応するのが常識で、今回のような不一致は極めて珍しい。スペインとの関係や対イラク政策への悪影響を懸念して「アルカイダの関与を積極的に認めたくないのでは」との指摘も出ている。
◇アルカイダとの関係「分からぬ」…福田官房長官
福田康夫官房長官は16日の記者会見で、スペインの列車同時爆破テロ事件と国際テロ組織アルカイダとの関連について「わが国では、はっきり言って分からない。スペイン政府がどういう対応をするか見守っていくしかない」と判断を留保した。米政府高官がアルカイダとの関連を指摘していることには「いろんな形で(米国と情報交換は)していると思うが、米国自身がそういうふうに本当に思っているのかまだ確認していない」と語った。
[毎日新聞3月17日] ( 2004-03-17-02:06 )
http://www.mainichi.co.jp/news/flash/kokusai/20040317k0000m030141000c.html