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[イラク] 北部クルド人地域をルポ 独立の夢捨てず
2004 年 3 月 16 日
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イラクの「暫定憲法」ともいえる基本法で、北部クルド人地域(クルディスタン)が、自治権の強い特別な「地域」として認められた。「連邦」イラクの一員として先駆的な民主主義のモデル地域を目指すが、民族の悲願である独立の夢も捨ててはいない。【スレイマニヤ(イラク北部クルド人地域)で大木俊治】
「一クルド人としていえば、他の99%のクルド人と同じように、独立を望んでいる。しかし、クルド愛国同盟(PUK)の立場からいえば、連邦の一員としてイラクの国家建設に貢献したい」
クルド民族運動の発祥の地、スレイマニヤ市から北へ車で約30分。「カラ・アチュアラン」と呼ばれる標高約2000メートルの山岳地にある本部で、同盟幹部のニアス・サイド・アリPUK研修所長(37)が、二つの交錯する思いを口にした。
緑草が覆う山々の間をパナレ川が流れ、雪を頂くイラン国境の山が目と鼻の先に見える。砂漠に囲まれたイラク中南部とは別世界の風景だ。
今月8日に調印された基本法で「クルド地域政権」はスレイマニヤ、アルビル、ドホークの3県などを管轄領域とする「正式な政権」として認知された。ただ、クルド側が要求したキルクークの併合を含む「クルド地域」の境界画定、独自の武装組織「ペシメルガ」の公認など、先送りになった問題も多い。イラクの多数派であるシーア派勢力が、クルド自治強化によるイラクの分裂を警戒しているためだ。
クルド勢力内部の課題もある。現在は、スレイマニヤを管轄するPUK政府、アルビルとドホークを管轄するクルド民主党(KDP)政府の二つが分立したまま。過去の内紛の遺産だが、政府の統合を目指す協議が現在進められており、いずれは「地域政権」の首都は、すでに統一議会のあるアルビルに完全に移行される見込みだ。
PUK政府のストラン・アブドラ広報部長(35)は「今の国際情勢で独立は非現実的。当面、連邦制を通じてイラクの再建に参加する道を選んだ。しかし、新しい世代から、さらに大きな要求が生まれてくる可能性もある」と、クルド人の秘められた思いを代弁する。
昨年7月、スレイマニヤで知識人が集まって市民団体「イラク・クルド国民投票運動」が発足。同運動は今年2月、地域の将来を決める住民投票の実施を国連に求めるクルド人150万人の署名を集め、国連や欧州連合(EU)、イラク統治評議会、米英占領当局あてに送付した。
「今独立が難しいことは十分理解している。しかし、声を上げなければ忘れられてしまう。かつて、ウクライナがソ連からの独立を求めた時、誰もが“非現実的”と考えた。その後、何が起きたか。国際情勢は変わるものだ」
運動リーダーの一人で詩人のシェルコ・ベカスさん(64)は穏やかに笑った。その背後には、イラク、トルコ、イラン、シリアにまたがる「クルディスタン」の地図が高々と掲げられていた。