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テロの闇が生んだ超監視社会 [ニューズウイーク日本版3・10]
http://www.asyura2.com/0403/war49/msg/298.html
投稿者 あっしら 日時 2004 年 3 月 11 日 00:53:49:Mo7ApAlflbQ6s
 


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安全を守るために各国政府が導入する
ハイテク監視網に危険な落とし穴が

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フレッド・グタール(本誌サイエンス担当)
ウィリアム・アンダーヒル(ロンドン)


 あなたの業績のうち最も有意義なものは? 英ケンブリッジ大学の数学者ジョン・ドグマンにそう問えば、脳の信号を解読するのに使う装置の開発と答えるだろう。おかげで神経科学の研究は大いに進み、頼みもしないのに女王陛下から勲章をもらったほどだ。
 しかし、投資家や政治家が目をつけたのは別の業績だ。ドグマンが10年前に導いた四つの数式で、それを使えば瞳の虹彩の複雑な模様をパターン化し、バーコードのように簡単に読み取れる可能性があった。このパターンは各人に固有のものだから、個人認証の手段として使える。虹彩がそのまま身分証明書になるので、紛失する可能性はないし、盗難や偽造のおそれもゼロに近い。
 面白そうなので、ドグマンはとりあえず「虹彩認証技術」の特許を取得しておいた。それが急に注目を集めるようになったのは、あの9.11テロ以降のこと。テロの恐怖に震える人々を守ってやれる画期的な技術として期待されたのである。
 以降、指紋や声紋を利用して個人の身元確認をする生体認証(バイオメトリクス)技術が続々と登場した。ドグマンもアメリカにイリディアン・テクノロジーズ社を設立した。「虹彩認証を通じて世界をより安全な場所にすること」を使命とする会社で、すでに日本やドイツ、オランダの空港では同社の技術がテストされている。ほかにも世界中の企業や政府機関から引き合いがあり、今や生体認証は「時代の波に乗っている」と、ドグマンは言う。
 生体認証の技術としては、今のところ虹彩スキャンが最も信頼できるとドグマンは考える。だが、セキュリティー対策としてどこまで有効かは別問題であり、過大な期待は禁物だという。
 虹彩認証技術を使えば、その人物のデータを当局のもつデータベースと照合できる。しかも正確かつ迅速。出入国管理の窓口に長い列ができることもなくなるだろう。

甘い期待が大きな罠に

 問題は、テクノロジーそのものではない。人々が技術に寄せる期待だ。そもそも膨大な個人データを集めておけばテロを撃退できるという考えがまちがいだと、ドグマンは言う。「個人の身元確認とテロ対策を混同した議論には欠陥がある。自爆テロ犯が個人情報を当局に登録するとは思えない」
 9.11テロ後に各国が導入している監視システムは、テロ組織の脅威に対抗するうえで本当に有効なのか。多くのセキュリティー専門家も、疑問を投げかけている。
 犯罪の抑止につながる可能性はあるが、テロとの戦いでテクノロジーに頼りすぎると、世間に誤った期待をいだかせることになりかねない。その結果、システムの間隙を突いた犯罪者が甘い汁を吸うこともありうるだろう。
 一方、市民はセキュリティー確保の名目で、プライバシーを放棄するよう求められている。空港での厳重な検査や街なかに設置された監視カメラは、確かに市民の安心感を高める。だがプライバシーと引き換えに、果たして本当に安全が確保されるのだろうか。今のところ、はっきりした答えは出ていない。
 しかし、こうした疑念に権力者が耳を傾けることはめったにない。それどころか、テロに対する恐怖から世界中で国家的な監視体制が強化されている。各国政府は生体認証データを登録した身分証明書やパスポートを発行。公共輸送機関や市街地に監視カメラを設置する動きも加速している。
 こうして集めたデータをオンラインで照合・分析できるようになれば、当局は軽微な犯罪歴を含めて市民に関する包括的なデータを把握できるようになる。

いたる場所に監視の目

 こうした監視テクノロジーが最も目につく都市はロンドンだ。IRA(Irish Republican Army:アイルランド共和軍)の爆破テロが続いた1990年代初頭以降、シティー(金融街)には監視カメラが次々と設置された。シティーに入る車両はすべて撮影されると思ってまちがいない。画像はすべて、警察のコンピュータに送られる。通行人には、シティーだけで約100台のカメラが向けられている。
 民間企業も犯罪防止を目的にこの流れに追随している。オックスフォード通りのショッピング街を1〜2キロ歩いただけでも、17台のカメラが待ち受けている。
 ロンドン市民は、平均的な1日に300回も監視カメラに写っているらしい。イギリスには400万台以上の監視カメラが存在し、これは世界全体の5分の1にあたるという試算もある。警官のヘルメットに隠しカメラをつけることも検討中だという。
 だが記録したデータを分析する手段がなければ、カメラは無用の長物に等しい。英内務省は2002年の評価報告書で、監視カメラには犯罪対策に「ささやかな効果」があるとしたものの、テロ対策面での効果には言及しなかった。
 ロンドン警察も人手が足りないことを認めている。監視カメラの画像をテロリスト検挙に活用するには、膨大な数の警官を画面の前に張りつけなくてはならない。
 そのためロンドン警察は、人混みの中から犯罪者を手早く見つけ出すために、顔の形状を識別する方法もテストしている。「有効とわかれば真剣に導入を検討する」と、ロンドン警察のスポークスマンは言う。
 だが今のところ、顔認証システムは所期の成果をあげていない。テストに使用されたのは、米ミネソタ州のアイデンティクス社が開発した「フェースイット」という技術。このソフトウエアは顔のさまざまな部位の位置関係を測定し、これをコード化した「顔紋」を作る。あとは、これをデータベースでチェックすればいい。
 もっとも9.11テロ以降、司法機関は顔認証システムに消極的な姿勢を見せてきた。主な理由は信頼性に欠けることだ。アイデンティクスはソフトに対する過大な期待があると指摘する一方、光の当たり方や撮影の時間帯、撮影の角度によって結果が大きく左右されることを認めている。
 それでも「フェースイット」はアイスランドの首都レイキャビクの空港に導入されているし、米バージニア州の海岸沿いの道路でも活躍している。
 しかし、本当にテロリストの発見や身柄拘束に使えるかというと、おそらくまだ誤判定が多すぎるだろう。メーカー側も、実際には運転免許証の申請者や投票に来た有権者をデータベース上の顔写真と照合するといった本人確認に適しているとしている。

EUでは統一身分証も

 他の生体認証技術もコストがかかるわりに精度が低いため、各国政府はどれを選んでいいかわからない。そのため、複数の生体認証データをデジタル身分証明書に埋め込もうとしている。
 イタリア政府は今春、マイクロチップを埋め込んだ身分証明書を発行しはじめる。「顔紋」や指紋、将来的には虹彩による認証データも入れるつもりだ。「デジタル身分証なら偽造しにくい。グローバルなテロとの戦いに貢献するはずだ」と、政府の広報担当マリオ・バッチーニは言う。
 EU(The European Union:欧州連合)では、渡航書類に載せる各種生体認証データの共通化が検討されている。EU全域で使えるデジタル身分証の導入を求める声も多い。ID嫌いのイギリスでさえ、独自のカードを作ることを検討中だ。
 なかでも意欲的なのがドイツ。生体認証データ入りの身分証を持たせるだけでなく、国民に関するさまざまな情報を登録した中央データベースを構築しようとしている。そうすれば政府は、身分証のデータと、その人について国が管理している情報すべてをつなぐことができる。プライバシー重視派は、こうした情報が税務当局や保険会社などに利用されかねないとして反発している。
 それでも安全が約束されるなら、多少のプライバシーの犠牲はやむをえないかもしれない。だが問題は、国が管理するデジタル身分証やデータベースで本当に安全が確保されるのかどうかだ。
 結論を下すのはまだ早いが、楽観は禁物だ。どんなデータベースの情報にもまちがいはありうる。クレジットカード会社のまちがいに気づいて抗議の電話をした経験がある人なら、身に染みているはずだ。データ量が増えれば、それだけミスの確率も高くなる。
 「テロとの戦いでは、標的を絞り込まないといけない」と、市民団体ステートウオッチ(ロンドン)のトニー・バニヤンは言う。「そうしないと、探す針の数は同じなのに、干し草の山ばかりが大きくなってしまう」
 もちろん、こうしたハイテク技術が無用だというわけではない。データマイニングと呼ばれる分析手法のソフトは、すでに各地の小売り量販店で威力を発揮している。売れ行きや客足を把握し、ある特定の日に何がどれだけ売れるかを予測できるわけだ。

中国の13億人情報ネット

 アメリカの情報当局は数年前から、民間企業の開発した技術を使って、多数の外国語を含む意味不明なデータの山を解読しようとしてきた。こうした「情報管理」がなければ現場のスタッフは情報の洪水におぼれてしまう、と言うのはCIA(Central Intelligence Agency:米中央情報局)系のベンチャーキャピタル、イン・Q・テルのギルマン・ルイ代表だ。
 イン・Q・テルの投資先の一つに、モホマインというカリフォルニア州サンディエゴの会社がある。電子メールや出版物、ウェブサイトなどに含まれる意味不明な情報を整理・分類するのが仕事だ。モホマインの親会社コーファックスは、膨大な文書の山を整理して意味のある情報に変えるシステムを開発した会社だ。
 おかげで、いまアフガニスタンやイラクに駐留している米兵は、集めた文書を片っ端からスキャンして本国へ送ればいい。あとはソフトウエアが翻訳・整理して、しかるべき政府機関に送り届けてくれる。いずれは重要な情報に「優先順位をつけたデジタル書庫」を完成させたいと、モホマインの創業者サミル・サマトは言う。
 イン・Q・テルのルイは、米政府はプライバシーを侵害しない形で新技術を使えるはずだと信じている。だが、技術は誰がどう使うかわからない。
 現に中国政府は、全国民の情報をデータベース化し、全国的なネットワークを構築しようとしている。この計画には、欧米で開発された技術が多く使われている。顔認証ソフトつきの監視カメラや指紋認証データベース、盗聴・傍受に役立つ音声認識ソフトなどだ。中国政府はこの計画の進捗状況を明らかにしていないが、テロリストよりは反体制派の取り締まりに使われそうな気配だ。

アメリカでは反発の声

 こうした監視体制の強化は、多分にアメリカが押しつけたものといえる。最新技術の大半はアメリカの企業が、米軍の資金援助によって開発してきたものだ。
 一方でブッシュ政権は、諸外国にセキュリティー対策を強化するよう圧力をかけてきた。空港の警備体制強化に加えて、通信傍受や盗聴についても「アメリカ並み」にするよう求めている。アメリカの入国管理規則が厳しくなったのを受けて、パスポートに生体認証データを埋め込んだ国もある。
 だが皮肉なもので、ヨーロッパが監視体制の強化で歩調をそろえようとしているときに、米国内では過剰な監視への反発の声が強まってきた。米議会は、ブッシュ大統領が提出したセキュリティー強化案のいくつかを否決または修正する動きに出ている。
 超監視社会を生み出した新技術は、本当に安全をもたらすのか。そうでないとすれば、ヨーロッパの人々は不当に高いツケを払わされることになるだろう。


監視システムの導入で
市民はプライバシーと引き換えに
安全を手にしたのか


ここまで進んだバイオメトリクス技術
指紋や虹彩といった個人の生体情報を用いた認証技術はIDカードやパスワードによる認証に比べて、悪用されたり、ごまかされたりする可能性がはるかに低い。

音声認証

 声のサンプルを取って数値化し、クレジットカードやパスポートに内蔵されたICチップに記録する。顔の特徴や指紋など他の生体情報と組み合わせれば、偽造される可能性は一段と低くなる

顔認証

(1)人混みの中を歩く人の顔を監視カメラが撮影
(2)分析しやすくするため、撮影したときの顔の向きなどを補正する
(3)約80もの顔の特徴を数値化。その後、データベースに登録された要注意人物リストと照合する

虹彩認証

 瞳孔の外側にある虹彩の模様は人によって異なり、変えようとしても視力障害を起こす。この模様をデジタル情報に変換、事前に登録してあるデータベースの情報と照合する。生体情報を使った認証技術のなかでは精度が高い

指紋認証

 広く使われている安価な認証方法。デジタルカメラや電気的装置を使って指紋の特徴を記録・照合する。
 ただし欠点もある。誰かが他人の指紋の型を作って指紋を偽造したり、場合によっては該当者の指を切断したりして使用すれば、システムが破られる可能性がある

ニューズウィーク日本版

2004年3月10日号 P.20


http://www.nwj.ne.jp/

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