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イラク侵略の不可解 [ドーン・コム/山本史郎氏]
http://www.asyura2.com/0403/war49/msg/244.html
投稿者 なるほど 日時 2004 年 3 月 10 日 08:08:46:dfhdU2/i2Qkk2
 

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  ☆★大量破壊兵器: 誰が誰をダマし、私はなぜ信用したのか?
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●The mystery of Iraq invasion
 ドーン・コム 3月5日 (ロンドン発)
イラク侵略の不可解  by ティモシー・ガートン・アッシュ
http://www.dawn.com/2004/03/05/int5.htm

 1年前の今月、アメリカとイギリスは、サダム・フセインが大量破壊
兵器の秘密備蓄を持っており、それが近隣国と世界への脅威になっ
ていると主張してイラク戦争へと進んだ。だが実際には、サダムはそ
うした備蓄をなんらもって保有してなかったし、ほぼ確実にそのような
兵器を持ってなかった。

 それでイギリスと米国は偽りの趣意書で戦争へと進んだ。

 私はあの戦争を支持しなかったが、しかし積極的に反対もしなかっ
た。私は「どっちつかずの悩める二面性」という立場を弁明するコラム
を書いた。そのような立場を私がとった主な理由は、とりわけ9・11の
あとだっただけに、大量破壊兵器が隠されているという上辺の証拠
が、私には、内政干渉に賛成する強い論証のように思えたからだ。

 それがなければ、私はおそらく明快に「反対」と言っただろう。それ
で今、私は知りたいと思う: なぜ私は間違えたのか? 誰が誰をダ
マしたのか? なぜならば、きっと、どこかにダマされた者がいるし、
ダマした者がいるからである。

 「それでも、少なくとも恐ろしい独裁者を排除できた」とか、「おそらく
中東においてより良い状態へ変わる長い道のりが始まるだろう」と説
明するのでは不十分である。前者は間違ってないし、後者もそうかも
しれないが、しかし、どちらもわれわれがしたこと(=戦争に反対しな
かったこと)を十分に正当化することにはならない。

 解放されたと感じているイラク人のためには私も人並みに嬉しいと
思うが、しかし、イラク戦争は人道的な干渉として過去に遡(さかの
ぼ)って正当化することはできない。それを説明しようとすれば私は別
のコラムで長々と書かなければならなくなる。

 これは過去の議論ではあるが、また未来についての議論でもある。
大量破壊兵器を発見できなかったアメリカの兵器調査官デービット・
ケイはガーディアン紙にこう語った。すなわち、「次の時には、劇場に
行って火事だと叫んでも、人々は疑うだろう」と。しかし次の時には、
火事が本当であるかもしれない。

 それでは、なぜ私は大量破壊兵器問題を信用したのか?

 その重要問題の答に迫る試みとして、「その理由は、私がダウニン
グ街10番地(=英国政府)から聞かされ、そしてニューヨークタイム
ズ紙で読んだからだ」と回答するとしよう。

 皆さんはブレアはウソつきと考えるかもしれないが、私は違う。彼は
サダムがそうした兵器を保有していたので誠実に行動したはずだ。な
ぜ、彼はそう確信したのか? まず第一に、サダムがそのように振る
舞った。彼は絶えず国連決議を破り、国連兵器査察団を妨害した。
それから、今のようなイギリス諜報機関があり、総合諜報委員会ジョ
ン・スカーレット委員長によってブレアに伝えられた。

 ブレアは明らかにMI6(英国諜報機関)の秘技で強い印象を与えら
れたが、しかし、なぜ機関員は必要以上に大げさに言ったりしたの
か? 冷戦が終わって余剰人員のトラウマに悩まされたあとなので、
イギリスのスパイが少しは政府に自分たちの有用性を証明したくなっ
たということか? ジョン・スカーレットが権力への接近に酔いしれてし
まったということなのか?

 世界に広がるイギリスのスパイ網に密告してきた誰よりも有害なこ
とをした本人が、全英諜報機関の上級かつ完璧な当事者であるス
カーレットであったという事実は、本当に皮肉なことである。

 あたかも用心深いプロの警戒心を持つ模範であるかのようにスカー
レットの名前が語られていたなかで、往時のイギリス政府高官のこ
と、私が長いあいだ知遇を得て尊敬していた高潔な人々のことを私は
覚えている。

 しかし皆さんは尋ねなければならない。なぜイギリス政府の内部関
係者はスカーレットの資料をそれほどまでに信用したのか? その回
答を私はこう想像する。なぜなら、彼らはアメリカ政府がおそらく、どう
あってもイラクに「仕掛ける」つもりだと感じたからだろうと。

 ハンブルグのスターン誌編集者がヒットラー日記は本物でなければ
ならないとしてお互いを安心させていたように、イギリス政府の要人
は、確かな証拠のなかで互いの信念を補強するという、ある種の集
団心理があるのだろうと思う。

 今では目を覚ましたアメリカ人デイビッド・ケイと、忘れられがちなイ
ギリス人専門家デイビッド・ケリーも含めて、多くの評判の良い専門家
が、サダムはひじょうに卑劣な秘密を隠していたと信じていたことを、
われわれは公正に思い出すべきである。

 今回のイギリスの物語は、結局、余興であり、主舞台はワシントン
(=アメリカ)であった。

 そこにはニューヨーク・タイムズ紙があり、私にとっては、同紙の報
道記事は長い間、事実に関する的確さとバランス良さの模範だと思っ
ていた。しかし今、ニューヨーク・タイムズがきわめて信頼できないイラ
ク人亡命者の単一情報にもとづいて、イラクの大量破壊兵器につい
て1面トップ向きの記事を掲載しつづけたことが判明した。

 同紙の記者たちは、亡命した指導者アフメド・チャラビとアメリカ人
新保守主義(ネオコン)の支持者によって、これらの有害な情報に
引っ張られた。その嘆かわしい話は、最近の『ニューヨーク・レビュー
・オブ・ブックス』に細部が興味深く書かれている。
  ※New York Review of Books 隔週刊の書評誌/訳者註

 そう主張していたし、サダム・フセインがそうした備蓄をもってなとい
うことを、確かに最初から判っていたはずの人物がいる。その人物と
はサダム・フセイン。そして彼は、われわれがイラク戦争の異常なま
での不可解さを解明するのを助けてくれるかもしれない。

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 ※ ティモシー・ガートン・アッシュ
 ガートン・アッシュは、1945年以降のヨーロッパに焦点を当てる、
国際的にも知られる現代史研究者で、フーバー研究所(the Hoover
Institution)の上級特別研究員。 しばしば主要な新聞、雑誌に寄稿
しており、また『New York Review of Books』に常設寄稿欄を持つ。

http://www.freeml.com/message/organizer-news@freeml.com/0000431

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