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毎日新聞 2004年(平成16年)1月24日(土曜日)
イラク・キルクーク
駆け込み寺の女性たち
「家族のもとには帰れない」
今なお残る慣習
「夫以外と関係」は殺す
ぺルビンさんは女性たちの食事を作りながら
「社会の偏見をなくしたい」と語った
(註:↑の下に写真が有る)
アラブ・イスラム社会には今も、結婚相手以外と性交渉を
持った女性を父親などが殺害する「名誉殺人」と呼ばれる慣習が
残る。フセイン政権崩壊後、イラク・キルクークにできた
女性たちの駆け込み寺を訪ねた。家族と別れて暮らす女性たちは
「将来も家族のもとに帰れることはない」と悲しい胸の内を語った。
名誉殺人は、女性が結婚相手以外と性交渉を持つことを
父や家族が不名誉と感じ、名誉を守るためには殺害も許されるという
アラブ社会の考えから生まれている。アラブ各地でこうした慣習は残り、
労働者共産党は「91年から03年までにクルド自治区だけで、
9000件以上の『名誉殺人』が発生した」と発表している。
駆け込み寺は「安全の家」と呼ばれ、キルクークの労働者共産党が
昨年6月に設立した。バース党以外の組織の活動が厳しく制限されていた
フセイン政権下では「安全の家」はなかった。
「安全の家」はキルクーク市内の民家を利用。労働者共産党の一部以外
にはこの存在は秘密にされている。現在、30歳の夫、25歳の妻の
夫婦1組と20歳の女性2人の計4人と
食事や洗濯などの世話役のぺルビン・ムハンマドさん(39)が暮らす。
20歳の女性はアルビル出身で、15歳で結婚。
その後、夫以外の男性と恋愛したことが家族に知れ、
父に殺されかけた。また、もう一人の女性はスレイマニア出身で、
12歳の時に男性2人組にレイプされ、それを隠して結婚。
その後、事実を知った夫が女性の父に「事実を隠して結婚させた」と抗議。
父は女性を殺害することを夫に約束したという。
女性たちは同党機関紙などで施設の存在を知って駆け込んだ。
皆は「殺される心配がなくなった」とフセイン政権崩壊で
こうした施設ができたことを喜ぶ。しかし
「一生、家族のもとに帰る日は来ないと思う」と口をそろえた。
【イラク・キルクークで小倉孝保、写真も】