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揺れるガザ地区をルポ
【ガザ市(パレスチナ自治区)で樋口直樹】
ガザ地区の将来をめぐり、イスラエルとイスラム原理主義組織ハマス、パレスチナ自治政府の三つどもえの争いが激しさを増している。ガザ地区からの撤退を計画するシャロン・イスラエル首相は、同地区がパレスチナ過激派勢力の一大拠点になる恐れがあるとみて、ハマス壊滅を目指し、ヤシン師の暗殺に踏み切った。130万人のパレスチナ人が暮らすガザ地区で何が起きているのか。ヤシン師が暗殺された22日をはさみ、数回にわたり現地に入った。
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「ここだ。あったぞ」。暗闇の民家の中でイスラエル軍兵士が声を上げた。部屋の隅には地下へと続くトンネルがポッカリと口を開け、内側には昇降用のハシゴの一端が見える。ガザ地区ラファのパレスチナ難民キャンプで行われた密輸トンネル摘発の瞬間だ。
「エジプトからガザ地区に運び込まれる武器弾薬で、テロリストは勢力を拡大している」。イスラエル軍のファインゴールド報道官はこう話した。00年9月にイスラエル・パレスチナ間の衝突が始まって以来、これまでに発見、破壊したトンネルは約80に上るという。
イスラエル軍のトンネル摘発作戦は危険を極める。多数の民間人が巻き添えになり、住民の怒りは増幅され、ハマスなど武装勢力への支持にますます傾いている。ヤシン師の暗殺はこうした傾向に拍車をかけた。
一方、ガザ地区でのパレスチナ自治政府の指導力は低下の一途をたどっている。イスラエルの撤退計画を受け、自治政府の屋台骨を支えるパレスチナ解放機構(PLO)主流派ファタハ自体が「より高い地位と影響力の拡大を求める若い世代による旧世代への挑戦」(パレスチナ人ジャーナリスト)によって、分裂状態に陥る気配を見せているからだ。
今月17日朝、ハマスと自治政府との力関係を示す象徴的な事件があった。ガザ市中心部の交差点で自治政府の警官がハマス活動家の車にあった弾薬類を押収しようとした。活動家の電話要請で多数のハマス活動家が駆けつけ、警官も応援を要請。銃撃戦が起き、通りがかりのタクシー運転手1人が射殺された。
「あいつはバカだ。ここ(ガザ地区)ではこんな時、警察は見て見ぬふりをすることに決まっている。やつ(警官)は素人だったに違いない」。現場を通りがかったホテル従業員の男性は話した。現場で逮捕されたハマス活動家はほどなく釈放されたという。
「イスラエルがガザ地区から撤退しても、ヨルダン川西岸の占領が終わるまで武器を置くつもりはない」。事件前日の16日深夜、イスラエル軍の侵攻に備える覆面姿の武装勢力の一人はこう語った。イスラエルのガザ地区撤退を控え、「ひとつの政府」と「不法武器の回収」を訴える自治政府の掛け声はむなしく空を漂うばかりだ。
[毎日新聞3月27日] ( 2004-03-27-00:04 )
http://www.mainichi.co.jp/news/flash/kokusai/20040327k0000m030103001c.html