http://www.asahi.com/international/update/0324/002.html

生まれたばかりの男の子は「ヤシン」と名付けられた。イスラム過激派ハマスの精神的指導者アハメド・ヤシン師の殺害から１日がすぎた２３日、パレスチナ自治区ガザは喪に服している。だが、過激派組織は最大規模の報復を宣言。次に何が起きるのか、人々は息を潜めている。

　検問所を抜けてガザ市内に入った。商店や町工場などは軒並み扉を閉ざしている。学校も休校。表通りを歩く人の姿は少ない。

　イスラエル軍のミサイルによって命を落としたヤシン師の葬儀のため、数十万人が集まり、叫んだ前日とは、うってかわった静かさだ。自治政府は２２日から３日間の服喪を決めている。

　パレスチナ放送によれば、この日、市内の病院で生まれたパレスチナ人の男の子が「ヤシン」と命名された。ほかにも、同じ名前をもらった赤ちゃんがいるという。

　ビルや商店のシャッター、建物の壁などいたる所に、新しいスローガンが書き連ねてある。「ヤシン師は我々の心」「我々は新たな闘争を誓う」「ユダヤ人に報復を」

　その傍らに、ハマスをはじめ、イスラム過激派の各組織名も一緒に書かれている。

　「ヤシン師の死はパレスチナ人に団結をもたらした。ハマスのメンバーに限らず、誰もが今いかにイスラエルに報復するかを考えている」

　電器店の経営者ムスタファさん（４５）はそう話した。店のシャッターに赤い大きな文字で「報復」。店先には、ヤシン師の遺族に届けるためだという花輪が用意されていた。

　パレスチナ自治政府の幹部は「イスラエルはタブーを犯した。ハマスは組織の体面を守るため、報復に出ざるを得ない。喪が明けてから収拾のつかない事態が起きるだろう」と指摘する。

　一方、学校教師だという４０代の男性は「ヤシン師殺害は残虐で、野蛮な行為だ。だが、報復で何も得られないことを我々パレスチナ人は知っている。対話によって事態を打開する動きが出てくることを期待したい」と声を潜めて語った。 (03/24 00:25)

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