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世論調査による“多数の同意=正論"への疑問 大西 赤人 
http://www.asyura2.com/0403/senkyo3/msg/768.html
投稿者 Q太郎 日時 2004 年 6 月 03 日 11:17:40:4V2zl9FyN7Ano
 

※ 阿修羅に来ている人には今更な話かもしれませんが…

世論調査による“多数の同意=正論"への疑問
大西 赤人       

http://www.asahi-net.or.jp/~hh5y-szk/onishi/colum238.htm

 僕は、チャンと見たことはほとんどないのだが、『どっちの料理ショー』(日本テレビ系列)という人気番組がある。関口宏班と三宅裕司班とにシェフたちが別れ、「カレーvsラーメン」「サバ味噌vs肉ジャガ」「パエリアvs五目釜めし」「焼売vs焼餃子」という具合に、一面で似通ってはいるが異なる料理をそれぞれ最高の素材で作ってみせ、七名のゲストに究極の選択を求める。そして、多数となったほうを選んだ人間のみ、その料理を味わうことが出来る。一応、形として勝ち負けは生じるものの、実際に食べて決めるわけでもないから、どちらが正解(より美味と確定する)という話ではない。

 そもそも味覚をはじめ、個人の感覚に基づく好き嫌いの評価には絶対の基準はあり得ず、たとえ他者とは大きく異なる少数派であったとしても、その嗜好は尊重されて何ら構わないはず。しかし、実際には、「そんな物が好きなの!? 信じられない、趣味悪いね」などと軽蔑や侮蔑を受ける場合がままある。反面、「みんな食べている(食べたりしない)」「みんな見ている(見たりしない)」「みんな持っている(持ったりしない)」というように、「みんな」という曖昧な存在を持ち出し、そして自分もその不明確な多数派に所属する――所属しているかのように位置付ける――ことで自らの正当性を補強するやり方もまた、大の大人でも用いがちな詐術《さじゅつ》である。

 多数派の意見が優先される手法は、言わば民主主義の大原則なのだけれど、当然それは、“多数の同意=正論"を必ずしも担保するものではない。先の『どっちの料理ショー』はテレビ番組だが、実生活においても、たとえば何人かで今日の昼飯は何にしようとか、次の休みにどこへ行こうかとかを決めるとなれば、全員一致を見ない場合、多数決に頼らざるを得ないし、それで大きな弊害は起きないかもしれない。でも、事が大きくなればなるほど、少数派の実数は増えるわけだし、それを圧殺する多数派の“数の論理"に歪みが出てしまうことは、ここで改めて述べるまでもない。そこで、多数決と並行して、少数意見の尊重という一種二律背反の考え方も導入されるわけだが、とはいえ、“多数の同意=正論"が圧倒的に誤りとなったら、民主主義など全く成り立たないだろう。

 以前にも書いた事ながら、“多数の同意=正論"を典型的に体現している現象は、不謹慎かもしれないがギャンブルだと思う。競馬を例に採れば、一番人気の馬が一着になる確率が最も高く、二番人気の馬がその次、以下、三番人気、四番人気と順番に下がって行く(もちろん、数多くの競争を通じての話である)。つまり、不特定多数の人々がそれぞれの考え方で「この馬が勝つ」と予想し、その集積として出来あがった人気は信頼に値するということになる。でも同時にそれは、一番人気が間違いなく勝つと保証するものではない。誰も見向きもしないような人気薄の大穴が勝つことも、ごくたまに、しかし必ず起きるわけだ。ギャンブルの場合、そこに配当という要素が絡んでくるから話が一層複雑になるけれども、もし「勝ち馬を当てる(正解を得る)」ことだけを目的とするとしたら、常に一番人気を買うほうがいいに決まっている。

 さて、議会制民主主義の下では、選挙を通じた各議会における多数決で物事が決められて行く。しかし、現実のこの国では、押しなべて投票率が低下し、本当に多数派の意志が反映されているのかさえ疑わしくなりつつある。そんな中、選挙とは別個に人々の見解を集約する手段として多用されているのが、いわゆる世論調査。各マス・メディアは折々に各種の世論調査を行ない、結果を国民の意見として大々的に報じる。国会では、それらの数字に基づいて政府側への質問ないし攻撃を行なう議員もまま見かける。

 たとえば5月30日付『朝日新聞』は、第一回4月21、22日、第二回5月12、13日、第三回5月26、27日の三回に渡って実施した連続世論調査の結果を報じ、自民党を「好き(好き、どちらかといえば好き)」と答えた人が34%→28%→39%、同じく民主党27%→20%→18%、参院選に「大いに関心がある」と答えた人が26%→30%→22%と動いたことなどを掲げている。電話による調査対象は、「無作為3段抽出法」で選ばれたという1000 人前後。たった1000人ばかりで国民全体の動向を象徴するデータが得られるのだろうかとも思うところだが、これは、テレビ視聴率と同じく、科学的・数学的に十分有効な数字なのではあろう。

 これに先立つ24日付同紙一面には、小泉首相の北朝鮮再訪問に関する同様の緊急世論調査の記事もあって、“日朝首脳会談を全体として評価する21%、どちらかといえば評価46%、どちらかといえば評価しない19%、評価しない12%"とか“拉致問題での成果は大いにあった9%、ある程度あった47%、あまりなかった34%、まったくなかった9%"とかという回答のグラフ(「その他・答えない」は省略)が並び、「首相訪朝『評価』67%」と大見出しが付されていた。

 このような大雑把な選択肢からの択一による世論調査が全く無意味とまでは思わない。一人一人に細かい意見を聞いていたら時間が幾らあっても足りないだろうし、それこそ大きな世論としてまとめることも困難だろう。とはいえ、先に述べた通り、これが食べ物やファッションに関するアンケートならば数字の羅列で済むけれど、政策や国のあり方に関する命題の場合は、事の本質的正否をこそ論じるべきであり、その場合には、支持する者の多さが正しさの裏付けには全くならないわけである。しかし、様々なメディアが似たようなテーマで世論調査を実施し、あたかも多数をもって正論である――正論とすべきである――かのごとく無条件に持ち出したり、数%の揺らぎに無理矢理変化を読み取ろうとするとは、基本的におかしいのではないだろうか。
(2004.6.2)

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