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対談:大林高士氏(ジャーナリスト)
■劣化ウラン被害がサマワの自衛隊に!
大林 人質となった今井紀明さん(18) がイラクに出発する前日に中村先生に会いに来たそうですね。
中村 彼から面会の申し込みがあって、4月2日に30分だけ話を聞きました。彼については以前から劣化ウラン弾使用の反対運動をしている高校生ということで小耳に挟んでいました。私は、湾岸戦争のときに報道番組のキャスターをやっていて、そのときから劣化ウラン弾の問題に注目して、折を見て書いたり、話したりしていましたから、彼も私に興味を持ったのでしょう。彼の主な用件は、劣化ウラン弾の問題をもっと政治の世界でも重視してほしい。そのために議員連盟を作ってほしい、というものでした。議員連盟は、何百とあって、ほとんどは名ばかり。有名無実では意味がないから、やるからには本格的なものにしないといけない。どういう人を集めればいいか、というアドバイスをしてあげました。元気に「行ってきます」と言っていましたね。「自分が反対している現場を見もしないで、口だけで言っているのも納得ができないから、現場で被害状況を見ておきたい」と説明していました。大変、しっかりした目的意識、見上げた根性だと思いましたよ。
大林 一般人には、今ひとつ“劣化ウラン弾”がピンとこない。少し分かりやすく解説していただけますか。
中村 原発で使う核燃料を処理する過程で出てくるクズのようなものですね。これを砲弾の頭につけて、ぶち込むわけです。一種の小型核爆弾といってもいいようなもので、着弾すると物すごい熱を発生して、普通の砲弾よりもはるかに大きな破壊力を持っています。しかし、着弾した地域は被曝し、土地も水も空気も放射能で汚染されてしまうんですね。特にイラクで危険なのは、爆発した途端に砂嵐が放射能汚染を拡大させてしまう可能性があることです。劣化ウラン弾は、湾岸戦争で初めて使用されたものですが、その後の調査によれば、戦争に勝ったはずのアメリカ、イギリス、カナダの帰還兵を調査したところ、実に70%が被曝していることが明らかになった。
大林 ベトナム戦争での枯葉剤だ。アメリカ政府は、それを問題視していないんですか。
中村 それどころか、当時の米軍の軍医で、帰還兵の健康被害調査をしていたアサフ・ドラコビッチ博士は、この結果に非常に驚き、政府に本格調査をやるように進言したところ、その途端、クビになってしまった。彼は大変怒りを覚えて、自分で研究所を作って自分で戦場に赴いて、調査をしています。ドラコビッチ博士は、昨年の12月、参議院会館でわれわれにイラク問題についてレクチャーしてくれました。それによれば、イラク全土15箇所の空気のサンプルを分析したところ、通常の何千倍もの放射能が確認されたそうです。もの凄い危険な状態で、肺がん、白血病、遺伝子損壊で奇形の子供が生まれたりなど、様々な問題が起きる可能性があります。また、今、サマワの自衛隊はオランダ軍が守っているようですが、オランダ軍が来る前は、アメリカの憲兵が守っていたそうです。彼らが帰還して、そのうち9人が、ドラコビッチ博士の研究所で診察を受けたところ、半数以上が劣化ウランの被害を受けていた。
大林 つまり自衛隊も劣化ウラン弾の被害を受けていないという保証はないわけですね。
中村 受ける可能性が非常に高い。これは、戦争が終われば片付くという問題じゃなく、戦争が終わっても「億」という単位の年数でもって、その土地の人々の命と健康を脅かし続けてゆくわけですから、一番大きな問題だと思います。劣化ウラン弾の問題は実は日本にもある問題です。米軍が沖縄で実際に撃っているんです。だから、人事じゃない。
大林 その劣化ウラン弾の反対運動を続けてきた今井君が、日本に帰ってきた。彼と中村先生が手を結ぶことで、世間もこの問題に目を向けるのではないでしょうか。
■小泉純−郎は歴代最低の軽い首相
大林 さて、自衛隊のイラク派遣については、どのようにお考えですか。
中村 当初から、私は反対しています。大量破壊兵器があるという話で、国連の査察団が何年も調べてきて何も出てこず、しかもアメリカの大量破壊兵器の専門家でスコット・リッターという人は、共和党員であるにもかかわらず、「イラクに大量破壊兵器があるという根拠はない」と明言していました。戦争が終結した今では、ご存知のように「大量破壊兵器」がデッチあげであったことが明らかになった。アメリカの本音は、イラクに眠る石油を自由に使いたいという野心にあった。典型的な侵略戦争です。しかし、そのアメリカの主張を日本は鵜呑みにし、いち早く戦争支持を表明した。日本は、これまで中東といい関係を築いていたわけですから、小泉首相の決断が正しかったかどうか考えるととんでもない話です。しかもアメリカの要求は“派兵”してくれというもの。これは戦後半世紀にわたる日本政治の大転換をなすものですが、深い思慮もなく、あっさりと受けてしまった。日本はアメリカの“プードル犬”ですよ。
大林 国連決議で決まったならともかく、小泉とブッシュの仲がいい、ただ、それだけで言うことを聞いてしまった、という感じさえしています。
中村 国家の命運がかかっているわけですから、個人的な関係で、イラク派遣が決まったというのは困りますね。歴代首相の中でも、小泉首相ほど、軽い、物を考えない人は初めてなんですよ。内閣には国際情勢、中東情勢についての知識が全くない。それで外務省や防衛庁の言うことを丸呑みするしかない。戦後、ずっとそのような状況が続いていて、その間に外務省、防衛庁はアメリカの出先機関のようになってしまった。なぜ自衛隊がイラクに行かなければならないか。これは、日本の都合ではありません。アメリカが国際的な強調行動でイラクを占領するんだと世界に発言した都合上、多くの国に派兵してもらわなければ形にならない。これに加わったのは三十数ヵ国ですが、大国はイギリスぐらいしかない。それで経済大国の日本にも声がかかって、占領統治の見てくれを少しでも整えたいということになった。でも、自衛隊が行って、やる仕事なんか実はないんです。それで給水工事をやることになりましたが、何も軍服を着た人でなく、水道工事業者がやればいいだけのことです。無理やり、自衛隊の仕事を作ったわけですね。サマワから帰って来たジャーナリストに話を聞くと、別に水なんて緊急事態じゃないそうです。
■アメリカの利益追求で地球は滅びる
大林 イラクの問題を聞いていますと、世界はおかしな方向へ向かっているような印象を受けます。パレスチナの情勢も混沌としていますし。さて、話は変わりますが、いよいよ参議院選挙が近づいていますが、主宰している環境政党「みどりの会議」の話を。
中村 イラク戦争は「みどりの会議」設立の理念に関わる問題なんですね。なぜ、アメリカは、そうまでして石油利権に執着するのか。石油の埋蔵量はあと40年分ぐらいしかないからです。これまではイケイケドンドンで石油を採掘し、環境汚染を進めてきた。後先のことは考えずに目先の利益ばかり追求している。これによって、地球上の生命は危機に瀕しています。このままの速度で温暖化が進めば、100年後には平均気温は、1.4度から5.8度高くなると想定されています。5.8度も上がったら、人間は生きていられません。現に異常気象が発生して、去年の夏、フランスでは43度にまで気温が上がって、3000人も死んでしまった。これに対して、97年に採択された京都議定書では、二酸化炭素を出さないということで世界中が一致団結して努力しようとしているのに、アメリカは脱退してしまった。アメリカの態度は自滅的、破壊的です。経済のためには、アメリカは環境悪化はしょうがないと言っているようですが、経済だって人間のためにあるということを忘れてはいけない。日本は議長国ですから、一応条約を批准していますが、実は目標達成のための努カを全然していない。私は環境委員会にいたから、よく分かります。
大林 環境問題というのは、ちょっと騒がれても、すぐまた消えてしまう。大きな広がりにはならずに、やはり地味な印象もある。そこに先生の苦労があると思います。
中村 そうですね。これまでは環境問題を重視すると経済が駄目になると、環境と経済が対立したものとして捉えられてきましたが、私に言わせると、環境と経済は一体化したものなんです。金のためなら死んでもいいなんていうのは、ナンセンスですよ。また、これまでは経済成長は無限だという信仰もどんどん進んできましたが、資源は有限です。だから、われわれが主張しているのは、経済成長に依存するな、ということです。少欲知足という言葉がありますが、ある程度の文化的な生活ができれば、人間は満足できるものです。人間も地域の生態系の一沸に過ぎないという謙虚な気持ちに戻って、これからの社会を考え直さないといけないと思う。
■今の日本に2大政党制は適さない
大林 景気について?
中村 よくならないですよ。あんまり欲をかきすぎて、膨張して破裂してしまったのが、今の日本。また風船を膨らまそうと考えること自体が不可能なんです。戦後、日本は工業国家として繁栄してきましたが、アジア諸国に追いつかれ、産業は空洞化している。昔に戻れと言ったって、戻れない。もう1つは巨額の財政赤字がある。景気が落ちるに従って、公共事業などどんどん無駄な財政出動を行った。さらに今後は人口が減ってゆきます。100年後には今の半分の人口になるという予想もある。40兆ぐらいしか税収がないなかで、80兆円を予算として使い、720兆円もの借金を作ってしまった。その上、役人達が作った隠れ借金が300兆円ぐらいありますから、これを返すなどというのは到底無理。3つ目は金融機関の問題。金融機関は、経済の動脈、静脈と言われていますが、これが今、不良債権問題で止まってしまっている。身体で言えば、心臓と胃と肺が同時に止まってしまった三重苦の状態で、どうやって成長するというんですか。だから小泉はウソをついているわけですよ。
大林 小泉首相は経済のことをあんまり分かってない。道路公団民営化のゴタゴタも結局小泉さんのリーダーシップの不足にある。
中村 あまり、深く考えるということをしないんじゃないかな。その辺で流行っていることを次から次へとポンポン並べるだけ。難しいことは、丸投げ。丸投げされた人間は、どうやっていいか分からないから、ガチャガチャにしてしまう。それで、小泉はサジを投げる。
大林 今回の人質事件に際し、小泉首相の対処の仕方については、どう思われましたか。評論家達の多くが、政府の対応は良かったと発言しています。
中村 何にもできなかったでしょ? 毎日、「分からない」「分からない」で。まあ、分からないのは、当たり前。なぜなら、外務省が分からないから。世界中に大使館なんてものがありますが、情報収集という一番重要な仕事をほとんどやってない。機密費をくすねて、ワインパーティをやっているだけ。せいぜいヨルダンのアンマンに行って情報を集めたけど、隣国に届く情報なんて4次情報、5次情報。ほとんど意味がない。
大林 今回のイラク問題での政府の対応、誰が首相でも官僚でも、これぐらいの処理はします。国から給料をもらっているんですから。さて、この7月には、参議院選挙です。2大政党制への、ソフトがますます進んでゆくなかで戦われるのは、大変なご苦労ではないですか。
中村 選挙制度の物理約な力によって、理念の対立ではなく、2つの雑居ビルができあがったのが、今の2大政党制。ただし、今大事なのは、多様性です。何でも2つに分けられるほど、物事は整理されていないですよ。いろんな意見があって、切磋琢磨してゆく過程が大事なんですよ。参議院ですら、2つの雑居ビルが選挙するような状況になれば、参議院はいらないですよ。そのことを有権者の皆さんも考えてほしい。
大林 ヨーロッパでは、緑の党が政治のキャスティングボードを握るまでに成長しましたが、日本ではまだこれから。次の参院選では、中村先生の「みどりの会議」の真価が問われます。それと、劣化ウランのリサーチをぜひ続けてください。期待しています。
(2004年4月24日「週刊特報」)
http://www.monjiro.org/media/040424/index.html