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テーマ「先行き不安だらけの日本」
対 談 中村敦夫 × 金子勝さん(慶応大学経済学部教授)
■今の日本は、
価値観が消えうせた社会。
中村 私は「木枯し紋次郎」で悪人を相当斬ってきましたけど、金子さんも政界や経済界の大物を斬りまくっていますよね。
金子 オレは「学界のアルカイダ(テロ組織)」ですから(笑)。テレビでも政治家や学者に向かって「あんたはおかしい!」「そんなのゴマカシだ!」なんて、口汚くののしるから、『通販生活』の読者のような主婦に、オレ人気ないんだよなあ(笑)。今日はソフト路線で行こうかな。
中村 いやいや、良い意味での「口の悪さ」、つまり鋭さと分かりやすさが金子さんの持ち味ですから、今日もズバズバお願いしますよ。
金子 最近、「言いたいことを全部言ってから死にたいな」と強く思うんです。今の若い人を見ていて気の毒に思うのは、みんな自分を守ることを考えるだけで精一杯なんですね。他人への気配りや、日本をどういう社会にしたいとか、そんなことは全く考えないでしょ。
中村 今の日本は「価値観が混乱している社会というより、「価値観が消えうせた社会」と言ったほうがいいかもしれませんね。
金子 「今言うべきことを言っておかないと、本当に社会が崩壊するのではないか」、そんな危機感が僕のパワーかもしれません。
中村 やはり新しい価値観あるいは古くても、みんなが信頼できる価値観をもう一回掘り起こす必要がある。そのためにも、強いメッセージが必要だと思うんですよ。金子さんのメッセージは分かりやすいのだけど、小泉首相の「構造改革なくして成長なし」というスローガンは全く理解できない。
金子 小泉首相の言っていることは、「今までは官が押さえ込んでいたから、その規制を外して市場による淘汰を強めればよりよいものが生き残る」という論理なんです。
中村 規制緩和、民営化信仰ですね。
金子 そんなのは、「構造改革と唱えれば極楽浄土に行ける」という念仏でしかない。
中村 そもそも日本が抱えている財政赤字や行政システムの行き詰まり、そして産業の空洞化を考えたら、一生懸命やってもこれ以上の成長軌道に乗れる環境ではない。どの先進国でも必然的に低成長の時代になるから、それにあった構造改革が必要なんですよね。
金子 中村さんのように「成長が極楽だ」という概念を否定してしまえば、小泉首相の言う構造改革なんて、ほとんどイカサマ新興宗教の呪文と同じだということが分かる。だって、なぜそうなるのか理屈が全くないんだもん。
中村 多面的で質のある成長を小泉さんが目指しているのならともかく、小泉さんが言っているのは単にGDP(国内総生産)を何%上げるとか、数字の問題なんですよね。
金子 価格メカニズムと効率性、それから競争淘汰という論理だけで、多様性とか民主主義などの価値観は全くない。これでは人類は生き残れませんよ。
■環境保護運動にも「落とし穴」がある。
中村 そこで多様性の一環として、環境を重視した経済政策というものが考えられると私は思うのですが。
金子 確かにそうですね。ただし、環境を語るときには「落とし穴」にも気をつけないといけないと思う。僕は「清貧を語る環境論」に同意できない部分もあるんですよ。なぜかというと、そういうことを語れるのはお金とゆとりがある人だけ。今、失業者が330万人いて、実際に食えない人たちが大勢います。
中村 地方だとそういう人たちを雇用するためにムダな公共事業が増えている状況ですよね。
金子 環境保護を訴える人は「循環型」という言葉が好きですけど、経済において大切なのは、地域の中で経済循環を実際にどのように作り出せるかということなんです。「環境に悪いからストップしろ」という発想だけではダメ。「環境を守ること、環境によい製品を作ることが、雇用を守ることにつながるんだ」という、従来とは別の概念をもっと提案していかなければならない。僕はリアリスト(現実主義者)だから、「武士は食わねど高楊枝」みたいな環境論には乗りにくいんですね。
たとえば、EU(欧州連合)は遺伝子組み換え作物の表示を強化すべきだと、WTO(世界貿易機関)の会議で他の国と徹底的に戦っていますよね。あれは市場競争だけでなく、安全や環境も必要だという論理ですが、実はEU側の主張のバックには小規模農民の利害があるんですね。自国の農業に有利な政策を押し通すことが支持につながるわけです。私たちはこのリアリズムをもっと追及しないといけない。日本でも、不況になると公共事業が欲しいという地方の現実があるわけですから。
中村 公共事業を中止すると、現実に明日から食えなくなる人たちがいる。その人たちに対してどんな職業を提供できるのか。つまり産業政策の問題に突き当たりますね。
■中小企業が強くなるような
経済政策の大転換が必要。
金子 僕は最近、制度やルールをどう共有するかということをずっと考えています。たとえば、ドイツの車は一台の車に使われる部品の7〜8割は、再生可能な部品でないといけないのですが、それが「製品の質がいい」という消費者の判断につながっていくんですね。
中村 つまり、時間はかかるけれど、制度やルールが消費者の価値観を変えていくと。
金子 農産物に関して言えば、市場経済に勝つためには環境にいいものを作らなければいけないというのが僕の論理なんです。価格だけで勝負したら、日本の農業も製造業も全部成り立たない。新しいルールを作って、新しい価値観を生み出すしかないんです。
中村 日本の場合、実際問題として労働者の9割は中小企業で働いているわけですが、その特性が全く無視されているのが、今の経済政策の欠陥だと思うんですね。イタリアなどは中小企業が優遇されていて非常に強い。
金子 ボローニャなどは、よくモデルにされますよね。国の経済が上下しても、実際に人々の生活レベルはそんなに揺らがないという面白い構造を持っている。
中村 日本は経済といえば大企業と大銀行が対象で、そこが成長して伸びれば末端の人たちも「おこぼれ」をもらえるという話になってしまう。やはり中小企業が永続していく強さを育てる経済政策に大転換しないとダメだし、それをやらないと地域経済も強くならない。
金子 ボローニャで職人がどんどん自立できるのは、消費者が職人の価値を認めているからなんです。手づくりであるとか安全であるとか、「職人技」というものを認めている。
中村 日本が一番得意な分野ですよね。
金子 実は高級ブランドつて本来はそういうものを指すのに、今は大量生産の高級ブランドばかりをみんなが買うわけですよ。
中村 大量生産と販売拡張こそが企業の最大の目的になってしまったために、質を味わう能力が完全に失われちゃった。
金子 無農薬野菜がいい、再生部品でできた車がいい、そしていいものは長持ちする、そんな消費者の意識が崩れていっている。それがすごく怖い。
中村 今、逆にそれを見直そうという動きも出てきていますよね。『通販生活』の読者はそういう意識が高いですけど、それをもっともっと広めていかないといけない。
金子 回転寿司しか行ったことのない人には、「寿司米が立つ」なんて言ってもチンプンカンプンなんですよね。本来、シャリに使う米には、中山間地のお米にわざわざ古米を混ぜていた。そうすると食べたときにフワッと口の中で広がる。だからこそ握るのが難しい職人技があるんです。だけど、小さい頃から回転寿司しか行ったことのない人には分からない。
中村 奮発して子どもを普通に握る寿司屋へ連れていったら、「この寿司は回らない」と言って食べなかったという笑い話もある(笑)。
金子 今は回転寿司のほうがたくさん客が入るから、普通の寿司屋よりネタがよかったりするんです。そうなると今後、街中の普通の寿司屋は消えてしまい、高級店か回転寿司しか残らなくなってしまう。そんな文化のありようが地域経済をダメにして、街の商店街を「シャッター通り」にするんです。
郊外に大きな駐車場付きのスーパーが次々に出来ても、車を運転しないお年寄りはそんなところに買い物に行けない。でも近所の店はみんな閉まっている。そんな例は地方に行けばゴマンとありますよ。
中村 やはり「幸せ」ということが一番のテーマだと思うんですよね。幸せというのは数と量だという神話に完全に毒されてしまったため、味とか質に無感覚になった。
金子 最近、生産者の顔写真がついた大根などが売られていますよね。ああいうのを「顔の見える市場」と呼んだのは僕なんですが、自分の農産物が売れると作った人は満足感があるんです。生きる価値、自分がやっていることに誇りが持てるような環境もつくっていかないと、私たちの国の経済はもうもたない。
中村 インフラ(社会基盤)はとうの昔に整っているのに、公共事業にたかっていたグループが利権化してしまったのも一因ですね。この政官業の癒着が自民党を永らえさせたんですが、それをずっと続けていたいという連中の強い意思が無駄な公共事業をなくさせない。
金子 地方の建設業従事者は、就業人口の10%以上になっています。その年齢構成を見ると50代以降が約半数。ということは、重厚長大な公共事業を次々にやらなくても、小さな事業を10年間続けていくだけで、彼らの雇用は確保できるんです。
中村 具体的には、どのようなものですか。
金子 たとえば「環境、福祉にいいまちづくり」。空洞化した街の中心をバリアフリー化して、そこに高齢者の入居施設を作ったりする。そうすれば建設業者の雇用も確保できるし、商店街を利用するお客さんそのものを街の中心部に持ってくることで街も活性化する。
中村 長野県の田中康夫知事は、街のシャッター通りに介護施設を作ったりしている。そういう知恵を働かせれば幾らでもできますね。
■世界最低レベルの自給率、
食料問題をどうするか。
中村 経済について言いますと、実は食料問題が最も大切だと思うんです。食料自給率40%というのは、世界でも最低レベルで非常に危険な状況ですね。輸入すればいいという楽観的な発想も、日本経済がこれからどんどんひどくなるなかでは難しい。
金子 食い物がなきゃ生きていけません。
中村 日本が「世界の工場」として一人勝ちする時代は終わって、今いるほとんどのサラリーマンは都市で失業していくわけです。これをどうするか。さらに公共事業に依存している人たちをどうするか。この二つの問題を解決するには、どう考えても農林水産業に積極的にもう一度吸収していかないといけない。
金子 でも、専業農家はこのデフレ下では食っていけませんね。農協に残る人は要するにぶら下がりの零細農家で、力のある農家はどんどん農協離れしちゃっているわけです。政府の農業政策も破綻していますから、農村が中村さんが望む方向に変わっていくには、相当厳しい状況にあるんだろうなと思います。
中村 私は今のまま自由な流れに任せていては難しいと思うんです。日本の産業形態の構造そのものを転換するということで、政治のリーダーシップでもって「農業をやれば何とか食っていける」ということを、国として保障するぐらいの体制を整えないとできない。
金子 ただ、それをやると零細農家への補助金のばらまきになってしまうんですよ。残念ながら戦後の長い農政の中で、一生懸命新しい価値観を創り出して経営してきた人たちは本当にわずかです。私は国の食料自給率はこのままでも仕方ないと思うけど、自分の自給率だけは高めておく必要があると思います。
実際、千葉に農地を買った友達もいますし。
中村 今、増えてきましたよね。自給自足でいいんだと考える人が。
金子 中村さんが憂えるように、このままいけば農業は危ない。だから農林水産業へ人を持っていけばいいという考え方は、理屈としては成り立っているんだけど、どういう農業を再建するのかということは実際かなり難しい。
中村 私は農水委員会にいますから、金子さんが言う難しい事情もわかります。だけど農水省の3兆5千億円の予算の半分以上は、無意味な土木事業なんですよ。私はこの予算配分を動かすことによって、いくらでも農業の復権はできると思っているんです。
■外交戦略がない日本は、
まるで鎌倉時代。
中村 せっかく金子さんにご出演いただいたのだから、政治・経済の話だけではもったいない。でも、本当にいろんな分野について発言されていますよね。
金子 口出ししすぎだって言われます。「モーニング娘。」の話でもしましょうか(笑)。
中村 いや、それはまた別の機会に(笑)。イラク戦争についてもよく発言されていますよね。自衛隊派遣についてはどう思いますか。
金子 ラムズフエルド(米国防長官)は「イラクは危険な状態だ」とはっきり言っています。結局、アメリカは「日本人も死ぬ覚悟で来てくれ」と要求しているわけです。
中村 日本だって本当について行きたいわけではなく、行かざるを得ないというところに追い込まれているわけですね。これは、日本経済そのものがアメリカに対する通商、輸出に頼っていることが原因なのでしょうか。
金子 確かにそうです。でも、たとえばカナダはアメリカへの貿易依存度が異常に高いのに、のらりくらりと要求をかわしている。無条件に賛成した日本とは大違い。日本も独立国なんだから、完全に「ノー」と言えなくても、いろいろ条件をつけながらやらないと。
中村 小泉さんは、無条件に「アメリカは同盟国だ」「いい国だ」と言っているだけ。
金子 そう。偉大なるブッシュ将軍様にお目見えして、「お城に泊めていただいちゃった」なんて喜んでいるわけですよ。単なる牧場なのに(笑)。イラク攻撃の理由だった大量破壊兵器があろうがなかろうが、お金を出して、兵隊を出して、それで領土を安堵してもらおうという魂胆。こんなの鎌倉時代の考え方です。国会も世襲議員ばかりだし、この国の民主主義は封建制に逆戻りしている。
中村 アメリカという国は、ペコペコするやつを軽蔑するんですよね。
金子 日本政府のことをサーバント(召使い)と呼んでいます。なめられて、骨までしゃぶられてしまいますよ。
中村 イラクは完全にベトナム化していますが、その最大の理由は何だと思いますか。
金子 イラク人の犠牲者の問題だけでなく、経済の問題も大きいと思います。イラク復興を統括する「文民行政官」のブレマー(元米国務省)は完全な市場原理主義者で、イラクで外資の100%導入を認めたり、15%の比例所得税を導入しました。自分の国でもできないような「超市場原理主義的」な政策をイラクに導入している。儲けているのは、ブッシュ政権の縁故企業ばかりです。おそらく6年以内に、イラクの銀行のほとんどがアメリカに乗取られるだろうと言われています。イラク市民の生活なんてちっともラクにならない。こんなことが「自由と民主主義を復活させる」などというスローガンのもとに行われているんです。グローバリゼーションの行き着く先の傲慢さは、イラクで象徴的にあらわれています。
こんなバカな経済政策がもつわけないですから、いずれアメリカはイラクから手を引かざるを得ない状況になります。そのとき、言いなりになってイラクに行った日本が、取り残されてしまうなんてことになりかねない。
中村 フランスは国連決議が出た瞬間に、「われわれは2億ドルしか出さない」とはっきり言いましたが、日本ももっと自己主張が必要ですよね。
金子 日本は50億ドルも出す。しかも、絶対に50億ドルでは済まない。湾岸戦争のときは最初90億ドルしか出さないと言っておきながら、最終的には130億ドルになった。この間の衆院選の投票率は低かったけど、棄権した人には「お上がお前らの財産を全部使っているんだぞ−」と言いたいよね。イラク問題は日本の民主主義の試金石だと思いますよ。
■教育基本法の改正を言う前に、
大人が子どもに模範を示せ!
中村 若者が選挙に行かないことがよく取り上げられますけど、もちろん投票に行かない若者もダメだけど、その親、つまり大人のほうにも責任があると思うんですよ。
金子 最近、「日本は教育がダメになった。教育基本法を改正すべきだ」なんて言う奴がいるけど「お前がいるからダメなんだ!」と言いたくなる。子どもはみんな大人を見て真似するわけですよ。会社の中でも、「まずお前が会社を辞めろ!」と言いたくなるような上司が部下を査定している。犯人が裁判官をやっているようなもので、もう無茶苦茶。
中村 私は最大の教育というのは、子どもが親の真似をするということだと思うんですね。
金子 だから大人が模範を示していないのに、子どもだけ立派になれっていうのは無理。
だいたい国自体が何もかもごまかす「粉飾国家」だということが大問題。銀行も、レフリーであるはずの金融庁も腐っている。大量に不良債権が眠っていても正確な査定をしない。どれぐらいの不良債権が残っているか分からないまま、「最終処理」だと言って四度も五度も税金を銀行に投入しているんですよ。
中村 今必要なのは、事実をすべて表沙汰にして、責任者を明確にして責任を取らせること。大人がそんな当たり前のことをしないで、教育も何もあったもんじゃない。
金子 大人、なかでも「団塊の世代」(1947〜1949年のベビーブーム時代に生まれた世代)が一番ひどいと思う。最後まで年金を食い逃げして、若い世代を苦しめて死んでいく。オレは「食い逃げ世代」と呼んでいます。ドイツでは団塊の世代が緑の党で新しい価値観を創ったりしたけど、日本の団塊の世代は新しい価値観を何一つ作らない。もう一度、自分たちの世代の利益や利害を捨てて、日本の社会、特に20代、30代の人にどういう社会を残してやれるのかを考えてほしい。このままじゃ、若い世代は地獄だよ。
社会保険庁の国民年金のポスターに年金もらえないって言った人は誰?」と書いてあるけど、あそこに「オレだ!」と書きたいね。「もらえると言った嘘つきは誰だ!」ってね。
特殊法人全体で60兆円の不良債権があるとか、債務超過は35兆円あるとか言われています。オレたちの財産である年金の3分の2がそこで運用されてドボドボ穴を空けているのに、会計も公開しないんです。ごまかしているから、みんな不安が募るんです。
中村 つまり、当たり前のことが全然なくなってしまっているところが非常に怖い。
金子 まったくそのとおり。僕が地方の講演会などで教育の話とかすると、「いやあ聞いていて胸のモヤモヤがとれました。スッとしました先生のおかげで」なんてき言う人がいるけど、「お前がスッとするためにオレはしゃべってるんじゃねえんだぞ−」という気分になる(笑)。自分たち大人が日本の社会をいかにダメにしてきた世代かということを、もう少し自覚して頑張ってほしいよなあ。
中村 頑張るというのは難しいし、その前に疲れ果ててしまう。だけど、精神的にビシッとした大人が堂々と発言するような、そういう雰囲気が今こそ必要ですよね。
金子 今のところは、「プチ・ナショナリズム」とか「プチ・ぜいたく」とか、みんな内向きだからいいけど、この不満やエネルギーが社会に放出されたとき、国民が一気にある方向に走ってしまう可能性は十分にあります。
中村 そういう傾向は今でも出てきていますね。これだけさまざまな問題があって、多様な提案が必要な時代なのに、衆議院が小選挙区制になって必然的に二大政党制になっていく。
金子 みんな「政権交代があるから」と二大政党制を歓迎しているみたいだけど、そこにも「落とし穴」がある。理念で対決しているときは二大政党制は機能するけど、理念が曖昧になると途端にどちらも似てくる。たとえば、アメリカの民主党がイラク戦争に反対できないように。
中村 政党も政治家もポピュリズム (大衆迎合)が幅をきかしていく。
金子 さらにメディアや有権者の監視機能が衰え出すと、とんでもない方向へ走ってしまう。その危険性をみんなまだよく考えていない。
中村 いったんそうなったら、もう制度を変えるのは難しい。私は多様性を確保する場所は参議院しかないと思っています。でも、二大政党の枠外の社民・共産党の体質を見ると、現実に即した感覚がない。何か博物館みたいになっている。
金子 要するに何もかも保守、「守れ」になっているんですよ。「憲法を守れ」「福祉に金よこせ」とか。その主張はいい。でも、これだけ社会が混迷しているんだから、何か新しいビジョンを出してくれないと持ちませんよ。
中村 積極的な、今と違うイメージを提供しないと第三極になれない。
金子 今は民主党と自民党が対立しているような面があるからまだいいけど、世論の動向次第では二つの政党が妥協して、「憲法九条を変えてイラクへ行きましょう」という状況が簡単に生まれてくる。少し見過ごすと変な方向へサッと行きやすい状況です、今の日本は。
中村 多様性が消えた社会というのは、非常に貧相で怖い社会ですね。多様性を受け入れる社会こそが豊かな社会だと思います。
金子 僕は、いかに社会が耐えて、我慢して多様なものを保持できるかが国の民度を示す物差しだと思う。そういう意味では、僕が発言できる限り、まだ辛うじて日本は文化国家(笑)。僕を試金石、リトマス試験紙だと見守っていただけるとうれしいですね。
中村 金子さんの発言が規制されるようになったら、亡命しか手はないですね(笑)。
(カタログ雑誌「通販生活」2004年春号より)
http://www.monjiro.org/media/040327/index.html