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http://www.mainichi-msn.co.jp/column/shasetsu/
なんということだ。
小泉純一郎首相にまで国民年金の未加入期間が明らかになった。これまで小泉首相は「年金未納はない」と説明してきたではないか。未加入は国会議員の任意加入期間だったという弁明も分からないではないが、言い逃れをしてきた小泉首相の責任は重大である。
毎日新聞の全国会議員調査で100人を超える未納・未加入者が明らかになり、年金不信はピークに達している。そこへ、駄目を押すように小泉首相の未加入問題が発覚、政治不信はここに極まった感がある。
自らの未納問題で「迷惑をかけた」と陳謝した公明党の神崎武法代表に対し、小泉首相は「意図的ではないから。僕は秘書がしっかりしているから救われた」と擁護したという。この時点で未加入を知っていたとすれば、どんな気持ちで慰めの言葉を口にしたのだろうか。
小泉首相の未加入はメディアの指摘で明らかになったことも問題である。自らすすんで公表したものではない。政府の最高責任者である小泉首相が国民に真実を伝えなかった事実はずっと消えない。
年金のCMに出演した女優の未納が問題になり、国会議員に波及した。その直後に、首相が与党のリーダーとして全議員の納付状況を公表するように指示していれば、こんなにもばかげた騒動にはならなかった。政治家が自らの納付状況を「個人情報」などと言って隠し続けたことが、結果として取り返しのつかない、深刻な政治不信を招いたのだ。
「自民党をぶっ壊す」と言って選ばれた小泉首相にはスキャンダルがなく、クリーンなイメージがあり、常に国民の支持率が高かった。しかし、年金の未加入によるイメージダウンは計り知れない。それは首相自身に対する不信だけにとどまらない。年金制度に不安を持ち、持続可能な仕組みに変えていくことを期待した多くの国民を裏切るものである。
もはや、年金制度改革関連法案は出し直すしかない。そうでなければ筋が通らない。政府の責任者や閣僚に未納・未加入があったのだから、年金改革法案を提案し審議する資格はない。保険料を引き上げ、給付額を下げるなど、国民に痛みを求める政府案をだれも信用しない。
与党と民主党による3党合意の見直しも当然必要だ。3党のトップ全員が未納・未加入だったのだから、「公党間の合意は軽くない」などと言われても重みがない。
しかも、年金一元化に向けての与野党の考え方は一致しておらず、玉虫色の合意となっている。与野党が国会に協議会を作って検討することは必要だが、あいまいな合意をもとに政府案を可決するというのは納得がいかない。
小泉首相はまず、年金未加入について国民に説明し陳謝しなければならない。国民の政治不信を一層深くした責任は大きいからだ。その上で再三指摘しているように内閣の責任者として、年金法案の白紙撤回を当然行うべきである。
毎日新聞 2004年5月15日 1時53分