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公明幹部の未納 けじめは年金法案の撤回だ
公明党よ、お前もか。
国民は砂をかむ思いである。神崎武法代表、冬柴鉄三幹事長、北側一雄政調会長の党幹部をはじめ13人の国会議員が国民年金の未納・未加入だったことが12日、明らかになった。しかも、衆院本会議で年金制度改革関連法案が可決された翌日になってである。こんな国民をバカにしたやり方はない。言語道断である。
7閣僚や民主党の菅直人代表の未納・未加入問題が国民の厳しい批判を浴びていたのに、公明党は嵐が過ぎ去るのをじっと黙って見ていた。なぜ、ここまで公表が遅れたのか。衆院で年金法案を通すまでは余計な混乱を招きたくない、と考えたとしたらそれは違うとしか言いようがない。
公明党は昨年行われた総選挙のマニフェスト(政権公約)で「年金100年安心プラン」を訴えて、年金制度改革関連法案をリードしてきた。政府の年金改革法案は公明案といってもいいものだ。
年金改革を大看板にしてきた公明党の幹部に年金未納があり、それを法案の衆院通過までの間に発表しなかったことに対し、国民の怒りは一層大きなものになった。これでも「100年安心」などと訴える資格があるというつもりなのだろうか。
未納議員は与野党に広がり、さらに増えそうである。自民党では未納議員が相次いでおり、橋本龍太郎元首相、丹羽雄哉元厚相も未納状況を明らかにした。両氏は有力な厚生族であり、弁解の余地はないはずだ。
与野党は全国会議員の調査、公表でなぜ合意ができないのか。自民党は「議員に任せている」などと突っぱねずに、きちんと公表すべきである。連日のように未納議員が出て謝罪や釈明をする場面をいつまで繰り返すつもりなのか。
国会議員に年金未納者が続出する理由は二つある。ひとつは何度も手直しを繰り返した結果、年金制度がかなり複雑になり、閣僚や国会議員にも分かりにくい仕組みになっていることだ。二つ目は国会議員互助年金の存在だ。国民年金や厚生年金に比べ格段に優遇されているため、議員は国民年金をあまりあてにしていない。
未納議員が続出し、ここまで年金不信が高まった以上、国会は早急に対応策を示すべきである。全議員の未納状況を公表して謝罪し、複雑な制度を分かりやすく変え、そして恵まれすぎている議員年金を直ちに廃止することだ。
神崎代表は記者会見で「国民に大きな不信感を与えたことは慚愧(ざんき)に堪えない」と謝罪し、自らと冬柴幹事長をけん責とするなどの処分を発表した。しかし、これで責任問題を幕引きし、参院で年金法案の成立を急ぐようなことがあってはならない。
未納問題のけじめは国会がつけるべきだ。そのためには未納閣僚や公明党幹部が関与してまとめ、国会に提出した年金改革の政府案を白紙撤回し出直すことだ。年金改革法案を多数の力で成立させても、失った信用を取り戻すことはできない。
毎日新聞 2004年5月13日 東京朝刊
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/wadai/news/20040513ddm005070160000c.html
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神崎・公明党代表ら国民年金未納
◇旗振り役・公明も深手
「年金の党」を掲げる公明党で、神崎武法代表ら首脳を含む13議員の国民年金未納が12日、発覚した。これで未納問題は主要の全政党に及ぶことになった。特に公明党は03年11月の衆院選のマニフェスト(政権公約)でも年金改革を前面に出し、年金改革法案の推進役となった。坂口力厚生労働相の所属政党でもある。同党は内部処分で批判をかわす構えだが、福田康夫前官房長官が辞任、菅直人民主党代表も辞任表明しているだけに、今後の対応を間違えると年金改革の説得力を失いかねない。【坂口佳代、上野央絵】
◇「内部処分のみ」に批判
「大変厳しい批判を受けると思うが、公明党が日本の政治の重要な立場にあることを考えると、批判を甘んじて受けながら、今の体制でしっかり取り組ませていただく」
国会内で12日午後4時過ぎから約1時間に及んだ記者会見。神崎氏はきっぱりと引責辞任を否定した。
神崎氏は4月30日の会見で「私個人は保険料を完済している」と述べていた。さらに、同氏は同じ会見で、未納が発覚した民主党の菅代表について「他党や他人のことを言う前に自らが襟を正すことがなければならない」と批判した。
菅氏のように「未納3兄弟」などの厳しい表現は使わなかったが、人を攻撃した事実は残る。12日、党内には大きな動揺が走っており、中堅議員は「年金を語る資格がなくなってしまう。参院選が戦えない」と話し、若手議員は「支持母体の創価学会が持たない」と悲壮な表情で語った。
ある創価学会幹部は「幹部レベルはおおむね理解している。ただ一般会員がどう反応するか分からない」と語った。また「会員たちの声には耳を傾けてほしい」と条件をつけた学会幹部もいるという。神崎氏らのもとにはすでに支持者から抗議が寄せられており、世論の動向によっては内部処分で収まらず「神崎おろし」の動きが出る可能性もある。
◇法案採決待ち公表?
一方、未納議員13人の公表をこの日に設定したことに対し、民主党から「年金制度改革関連法案の衆院通過のタイミングをはかった」(幹部)との批判が出ている。神崎氏は会見で「そんなことはありません」と気色ばんで否定したが、「再調査、再確認に時間がかかり、ギリギリの段階で判明したものもあり、まとめるのに11日深夜までかかった」と苦しい説明をした。
ただ、冬柴鉄三幹事長は3閣僚の未納が発覚した4月23日、すでに全議員に対して調査を促しており、公表までに約20日もかかるのは不自然。神崎氏は「いろいろ国会の日程も多忙な時期が続いた」とも述べており、法案審議をにらみながらの公表という疑念は簡単に消えそうもない。
「国民の皆様、なかんずく全国の地方議員、党員・支持者の皆様に衷心よりおわび申し上げます」
神崎氏は会見で2度にわたって立ち上がり、深々と頭を下げた。その脇に神崎氏がポーズを取り「与直し公明党」とのコピーが大きく書かれたポスターが張ってあった。
◇参院選「年金語れぬ」−−与野党政界全体に飛び火
国会議員の年金保険料未納問題は、厚生行政に詳しいはずの橋本龍太郎元首相、丹羽雄哉元厚相という自民党厚生族のボスたちの連座に続き、年金改革が旗印の公明党の13議員も巻き込んだ。国会に年金論議を任せていいのか−−。政界からは「年金不信の国民は誰を信用し、誰に期待すればいいか分からないのではないか」(自民党閣僚経験者)と自ちょうする言葉も聞かれ、7月の参院選で各党とも年金改革を争点にしにくい状況に陥った。
この閣僚経験者は未納問題の広がりに、多くの有力政治家が利益を約束された未公開株を受け取った「リクルート事件」を思い起こしたという。リクルート事件では対象者が役職からはずれ、政界は人材不足に追い込まれることになったが、今回は「誰も年金論議ができないことになり、八方ふさがりに追い込まれかねない」と言うのだ。
神崎氏は会見で「年金改革は制度設計の問題で、未納は手続き、運用の問題。別物だと考えている」と述べたが、言い訳と受け取られかねない。まして、負担増・給付減の年金制度改革関連法案をまとめた与党のトップの未納という事態は、国民の信頼を裏切ることになるのは間違いない。
このため、自民党の安倍晋三幹事長は12日、東京都内のホテルで記者団に「針小棒大な形で騒がず、本来の年金のあり方に戻っていくべきだ」と述べ、火消しに躍起になった。同党には各議員の自主的公表が相次ぎ、これ以上の泥沼化は避けたい思惑もある。
民主党も一部には「年金法案の扱いを取り仕切ってきたのに、今になって未納が分かるなど許されない」(若手議員)と、公明党を追及することで年金制度改革関連法案に影響を与えようという動きはみられる。しかし、「強く批判すれば、菅代表の問題を再び呼び起こしてしまう」(幹部)というジレンマもある。
自民党参院幹部は「参院選前に未納問題の世論調査が行われ、『手続きミスなら問題なし』との結果が出ればいい」と語った。
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【公明党議員の未納期間と処分】
<衆院議員>
神崎武法 86年4月〜9月の6カ月。18年前のことなのでよく分からない=けん責
冬柴鉄三 86年8月〜87年3月の8カ月。衆院選への初出馬に伴う転居の際に国民年金加入手続きを怠った=けん責
北側一雄 93年8月〜94年3月の8カ月。大阪府堺市役所で医療保険の切り替えをした際、国民年金脱退の手続きも取られた=戒告
遠藤乙彦 90年2月〜94年4月の4年3カ月、うち2年分追納。衆院選出馬時、国民年金への変更手続きを怠る=戒告
池坊保子 98年6月〜02年4月の3年11カ月、うち2カ月分追納。国民年金に移行後、歳費から天引きと誤認=戒告
漆原良夫 96年11月〜03年5月の6年7カ月、うち2年分追納。国民年金に移行後、歳費から天引きと誤認=戒告
石田祝稔 90年2月〜同年11月の10カ月、うち8カ月分追納。請求がなかった2カ月分未納=処分なし
<参院議員>
森本晃司 86年4月〜02年2月の15年11カ月。加入手続きを失念=中央幹事、参院副会長を解任
風間昶 92年7月〜04年4月の11年10カ月、うち2年分追納。参院選出馬時、国民年金への変更手続きを怠る=中央幹事、参院副幹事長を解任
山下栄一 92年7月〜04年3月の11年9カ月、うち2年分追納。参院選出馬時、国民年金への変更手続きを怠る=参院副幹事長、政調副会長を解任
千葉国男 93年7月〜97年8月の4年2カ月、うち2年分追納。衆院選出馬時、国民年金への変更手続きを怠る=戒告
山本保 95年7月〜96年10月の1年4カ月、うち1年3カ月分追納。振り込み手続きミス=戒告
福本潤一 00年4月〜04年3月の4年、うち2年分追納。転居に伴う不注意=戒告
(敬称略)
毎日新聞 2004年5月13日 東京朝刊
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/wadai/news/20040513ddm003010092000c.html