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2004年4月20日
不安や課題を残しEU拡大へ
ダイナミックな経済成長に期待
欧州連合(EU)は五月一日、新たに十カ国が加わり、二十五カ国体制となる。大半の国では人権や経済分野での加盟条件を果たしておらず、見切り発車となる。経済面で現加盟国に大きく後れを取っている十カ国の加盟がもたらす影響をプラス・マイナス両面から見てみる。
(ベルリン・豊田 剛)
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犯罪増加、官僚主義化への懸念も
ドイツ政府はこのほど、ポスターなどを使った情宣活動をスタート。国民にEU拡大への理解を求める=豊田剛撮影
五月一日には、現在のEU議長国アイルランドの首都ダブリン、EU本部のあるブリュッセル、ドイツとポーランド、チェコと国境を接する地点などで、加盟を記念するイベントが催される。一気に十カ国が加盟するのは前代未聞の偉業だ。
新規加盟国は、ポーランド、ハンガリー、チェコ、スロバキア、スロベニア、ラトビア、リトアニア、エストニア、マルタ、キプロスの十カ国で、大半が中・東欧諸国。これらは戦後、ワルシャワ条約機構に属していたが、現在は北大西洋条約機構(NATO)に加盟しており、ロシア・旧ソ連の影響下から完全に離れた印象を与えている。二〇〇七年の加盟が決定的なブルガリアとルーマニアのほか、トルコ、旧ユーゴスラビア諸国、旧ソ連諸国らも将来的なEU加盟を目指しており、西欧の範囲は今後ますます東方に拡大していくものとみられる。
新たに七千五百万人がEU市民に加わることで、人口は総計四億五千三百万人となり、米国や日本を大きく上回る。中でも、ポーランドは新規加盟国の人口の半分以上を占める。しかし、ドイツの世論調査によると、EU加盟が最も歓迎されていない国はポーランドだ。失業率は約20%。同国経済に占める農業の割合が大きく、ダイナミックな経済が期待できない。EU農業助成金で最大の恩恵国となる上に、EU憲法草案に最後まで反発していることで、ネガティブなイメージが先行している。
新加盟国の国内総生産(GDP)は現EU加盟国平均を大きく下回る。そのため、アイルランド以外の加盟国は、新規加盟国に対して最大で七年間の労働移行期間を設けている。西欧諸国も景気回復が遅れているだけに、東欧からの移民流入の警戒心は強い。
ドイツの時事週刊誌フォルクスが行った調査によると、EU拡大によって国内企業が中・東欧に移転するとの懸念は八割に達した。ドイツや北欧は付加価値税や法人税などの税率が総じて高く、新規加盟国がタックスヘイブン(租税回避国)となる可能性がある。また、安価な労働力の流入で賃金の値下げ、および、失業率の増加を恐れる意見は、いずれも七割を超えている。一方で、新規加盟国の間ではEU加盟に伴うインフレの懸念が高まっている。
犯罪の増加を心配する意見は66%にも達している。EUへの加盟は、人・物・サービスの域内移動を自由にする。そのため、組織犯罪の横行、麻薬流通や売春婦などの人身売買の増加が心配されている。
また、EU加盟国が増えれば増えるほど、EU機構の官僚主義化が進む恐れがある。EUの言語が新たに増えることで、非効率化を憂える意見が出ている。EU将来像協議会は、拡大を前提に透明で市民参加型のEUの改革を進めているが、各国のエゴが対立し、改革のテンポは予想以上に遅い。
一方で、EU拡大による恩恵も計り知れない。加盟国の政治の民主化、経済の自由化が促進される。人・物・サービスの移動が自由になることによって、ビジネスや旅行の面で恩恵を受ける。成長著しい中・東欧諸国の影響で域内経済が活性化することも予想される。また、政治・戦略面でも米国と同程度の影響力を確保できるとする意見も多い。
ただ、EU統計庁によると、旧社会主義圏諸国が経済的に西側諸国に追い付くにはポーランドの五十九年を筆頭に平均五十年程度を要する見通し。新規加盟国が本当の意味での影響力と発言権を持てるようになるまでには時間がかかりそうだ。
<EU新規加盟国の経済指標>
GDP インフレ率 失業率 平均収入 人口
(2004年推定) (03年) (03年) (EUを100) (100万人)
ポーランド 4.2% 0.7% 20.6% 41% 38.6
チェコ 2.6 0.0 7.8 59 10.2
ハンガリー 3.2 4.6 5.6 55 10.2
スロバキア 4.1 8.5 17.7 48 5.4
リトアニア 5.7 −0.9 12.3 40 3.5
ラトビア 6.0 2.5 12.4 35 2.4
エストニア 5.6 1.6 8.6 40 1.4
スロベニア 3.1 5.9 6.4 73 2.0
キプロス 3.4 4.3 3.9 74 0.8
マルタ 2.7 不明 7.0 54 0.4
(出典・EU統計庁)
http://www.worldtimes.co.jp/w/eu/eu2/kr040420.html