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指定暴力団山口組旧五菱会系ヤミ金融グループによるマネー・ロンダリング(資金洗浄)事件で、「ヤミ金融の帝王」と呼ばれた梶山進被告(54)名義のスイスの金融機関の口座には、米国や香港、シンガポール、日本の少なくとも4ルートから送金されていたことが5日、警視庁の調べで分かった。
口座は同グループの摘発が強化された昨年2月ごろに開設されたことも判明。警視庁では海外に流れた同グループの資金を徹底解明し、スイスの口座に集められたとみられる違法収益の没収を目指す。
調べによると、スイス・チューリヒにある国際金融機関「クレディ・スイス(CS)」本店には、梶山被告名義で2口座が開設されていた。いずれも、警視庁が同グループ傘下のヤミ金融業者らを出資法違反容疑で逮捕し始めた昨年2月ごろの開設だった。
梶山被告にはスイスへの渡航歴がないことから、梶山被告が昨年2月、CS香港行員・道伝(どうでん)篤容疑者(41)(組織犯罪処罰法違反容疑で逮捕状)と一緒に香港を訪れた際、CS香港で本店口座の開設手続きも行っていたとみられる。
この2口座について、スイス検察当局は昨年11月、「資金に不審な動きが見られた」として凍結。当時の預金残高は計約6100万スイス・フラン(約51億円)だったが、その後の調べで、凍結までの約9か月間に、1回につき数千万円から数億円の入金が計十数回繰り返されていたことが判明した。
送金元は、CS香港、CSシンガポールのほか、米国ニューヨークの金融機関などで、日本の大手都銀の支店から数千万円が直接送金されたケースもあった。送金は、ドル、ユーロ、円建てと複数の通貨が使われていた。日本からの送金は、銀行名義の口座を使うなどして、金融当局のチェックを免れていたとみられる。「債券の償還金」名目で入金されたものもあり、同グループが債券を購入して資金運用していた疑いも出ている。口座凍結後も計数千万円の送金があった。
警視庁では、これら一連の送金についても、道伝容疑者が梶山被告らに指南したとみている。
一方、スイスの2口座からは、預金の引き出しも頻繁に行われていた。残高が凍結時の51億円を超えていたこともあったといい、引き出された資金が日本に還流していた疑いもある。
また、口座凍結後、CS本店の窓口に直接訪れ、「預金を下ろしたい」と申し出た不審な人物がいたが、CS側は「凍結されているので無理だ」と断ったという。この人物について詳しいことは分かっていない。
これまでの調べで、梶山被告らはヤミ金融の違法収益で計約98億5000万円分の割引金融債を購入。うち46億円分を換金してCS香港の梶山被告の口座に送金していたことや、この一部がさらにCSシンガポールに送金されるなどし、同口座の残高はほとんどないことが確認されている。
警視庁は今後、送金ルートを解明することで、凍結された約51億円に犯罪収益が含まれることを立証し、スイス当局による没収に協力。その後、没収金の日本への引き渡しを求めていく方針だ。
(2004/6/6/03:06 読売新聞 無断転載禁止)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20040606i201.htm