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件 名 : 原発の耐震設計基準は崩壊した!
差出人 : YAMASAKI HISATAKA
送信日時 : 2004/10/24 21:46
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福島原発市民事故調とたんぽぽ舎の山崎 久隆です。メーリングリストと関心
のありそうな方々に送信いたします。重複された方にはお詫び申し上げます。
今回の地震で被災された皆様には心からお見舞い申し上げます。
この地震の全貌はまだ明らかになってはいませんが、ここまでの情報だけでも恐ろ
しいなと思うものを目撃しました。以下、転載自由です。
耐震設計基準は崩壊した
新幹線脱線の恐怖
史上初めて走行中の新幹線が地震に遭遇し、脱線するという事態になりました。
幸い乗客乗員に犠牲者は出ませんでしたが、思いっきり幸運に恵まれたと言うべ
きでしょう。
脱線した東京発新潟行きの「とき325号」は、18時ちょうどに長岡到着予
定の列車ですので、地震発生時には長岡駅の手前8キロあまりの地点を時速
210キロで走行していたと思われます。場所は直線で、トンネルを出た後だっ
たため、線路から脱落あるいはトンネル壁への衝突や転覆などはせずにすみまし
た。最後尾の車輌は最大傾斜40度にも傾いたのですが、乗客はわずか7名しか
乗っていない車輌で、新幹線全体でも150人くらいしか乗っていませんでした。
おそらく車内は乱気流に巻き込まれた飛行機のように上下左右に揺さぶられたと
思いますが、乗客の少なさが被害者を出さなかった大きな理由の一つだと思いま
す。また、脱線したのは二階建てMAXではなく従来の一階建ての200系のよう
なので、重心が低かったことも幸いしたのでしょう。10両編成でおおむね
900名ほどの定着席員があります。
この時期は行楽シーズンにあたるので、普段の土曜日午後便は割りに混み合う
のですが、三連休にはあたらなかったのと在来線の接続の関係や越後湯沢を過ぎ
ている場所だったことなどの関係で、この車輌は少なかったのだろうと思います。
前後の車輌は400名以上乗車していたものもありますから。
幸運が重なったもう一つは、脱線した路線は外見上大きな損害は受けていな
かったと言うことです。阪神淡路大震災時のように、橋脚が崩落していれば大惨
事になったことは間違いありませんから。
逆に「恐ろしいもの」を見たというのは、橋脚破壊です。
新幹線の路線は、他の場所では重大な損害を受けたところがありました。
今日のニュースで盛んに流している「川口町の橋脚破壊のようす」です。
阪神高速道路でも見られた破壊の形状ですが、橋脚が地上2メートル付近で爆
裂したかのように樽状にふくれあがっているのです。内部の鉄筋もむきだしとな
り大きくへし曲がっています。
橋脚そのものは倒れてはいませんが、強大な横揺れに襲われていたら倒壊した
かもしれません。
橋脚破壊の原因はおそらく強力な縦揺れの一撃だろうと思います。
上下方向に重力加速度を超える大きな揺れが発生しますと、橋脚に圧縮応力が
加えられ、その圧力に耐えられずに圧壊したのだろうと思います。
このときに大きな横揺れが作用すれば、阪神高速道路のような倒壊になる危険
性があるのです。
つまり、とんでもなく大きな縦揺れがこの場所には起きていたことを示してい
るのだろうと思うので、怖いと思ったのです。この上を新幹線が走行中だったら、
たぶん空中に投げ飛ばされるような衝撃と共に脱線転覆は免れなかったでしょう。
史上最大の地震動を観測
今回の「新潟県中越地震」は、マグニチュード6.8と推定されています。阪
神淡路大震災よりもエネルギーでは4分の一以下という水準です。しかし震源の
深さや地盤の状態、断層ずれの方位と角度などいろいろな条件で、強力なエネル
ギーが局所的にではあれ発生していたと思われます。
例えば新幹線に関連して言えば、おそらくJR東日本が所有する強震計だと思
うのですが、毎日新聞にこういう記述があります。「今回の地震では、震源地近
くで阪神大震災の616ガルを上回る846ガルを記録。」重力加速度は980
ガルですから、それに迫る強さです。
さらにもっとすさまじいことがわかりました。毎日新聞の記事を引用します。
「防災科学技術研究所によると、小千谷市のK−NET(強震計)で、最大加速
度1500ガルを記録した。阪神大震災の際に神戸海洋気象台が観測した818
ガルを上回るなど、観測史上最大級の加速度だ。」「(中略)国土地理院は地殻
変動のデータをもとに、今回の地震の震源断層モデルを計算した。それによると、
動いた断層は長さ約22キロ、幅約17キロ、深さ約3.2キロ。これが上下方
向に約1.4メートルずれた逆断層型の地震と推定している。」
1500ガルという値は、いかなるものでも空中に吹き飛ばしてしまう威力が
ある揺れです。たぶん耐えられる構造物は存在しないでしょう。この揺れはおそ
らく横揺れのことだと思いますが、縦揺れもこの半分以上の大きさがあるだろう
と思われます。
また、この記事にはありませんが、揺れの速度は130m/秒、130カイン
にも達したというのです。
史上最大の地震ではないのになぜ史上最大の地震動を観測したかと言えば、こ
の地震で最も大きな揺れに近い場所に強震計が存在したからに過ぎません。阪神
淡路大震災やこれまでの地震でも、1500ガルを超えるような強大な揺れが
きっと存在した場所があったのでしょう。しかしその場に強震計が存在しなけれ
ば、観測できないということです。
これまでの地震についての知見を揺るがすに十分な記録は、たぶんに偶然的要
素により捕らえられたというわけです。
耐震設計基準の崩壊
この値をみて、電力や原子力関係者が何とも思わなかったとしたら、それは失
格です。
原発が想定している揺れは、最も大きな浜岡原発でさえ600ガル、柏崎刈羽
では450ガルで設計されています。1500などと言う値は論外と言うことに
なります。
しかも、浜岡も柏崎刈羽も想定している最大地震エネルギーはマグニチュード
6.8よりはるかに大きいマグニチュード8.5やマグニチュード8.0などと
なっています。これらが起きても最大振動600ガルを上回らないというのは、
どういった根拠に基づくのかと言うことはずっと議論の的でした。そして、新し
い地震が起きるたびにこの想定は特に直下に近い場所で起きる場合は全く誤りで
あることが実証され続けてきたのです。阪神淡路大震災でも最大818ガル、そ
して今回はついに1500というとてつもない数値が観測されました。
強震計というそうちは、日本全国網の目のようにあるわけではありませんし、
あらかじめ地震が起きる場所に設置するというわけにもいきません。
たまたま設置した場所で地震が起きることで、はじめて地震断層の真上でどん
な揺れが起きるかの一端を知ることが出来るだけです。
人の住んでいないところや海底では強震計は設置されていませんので、これま
でなかなか数値データとしては知られなかったことでしたが、体験した人々は
「体が宙に浮いた」「いろいろなものが空中を飛んだ」という表現で、とてつも
ない地震動を証言してきました。しかしそれが数字になっていなかっただけで、
原発の耐震設計などには何ら生かされてこず、遠くの小さな地震をひろって集め
たデータを基準として、マグニチュードと震源距離だけでおおざっぱな揺れの大
きさを決めてきただけだったのです。
それが原発の耐震設計の基礎にされてしまったがゆえに、とんでもな過小評価
の上に、極めて危険な装置が乗ってしまう、そういう事態を引き起こしてしまい
ました。
原発が直下に想定している地震はマグニチュード6.5、これで起きる地震動
の推定値は、せいぜいのころ400ガル程度です。しかし今回は、それの倍程度
のエネルギーを持つ地震でさえ4倍もの強力な揺れを発生させてしまったのです。
耐震設計は、根本から瓦解したと言わざるを得ない。それが大災害を引き起こ
した新潟中越地震の教訓です。
http://www.freeml.com/message/chance-forum@freeml.com/0019891;jsessionid=c87pg8pjh1