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【2004年6月21日 National Radio Astronomy Observatory, Press Release】
渦巻き銀河の腕が、なぜ数十億年もの間その形を保っていられるのかについては、40年前に理論が提唱されていたのだが、カリフォルニア工科大学のチームが今回初めてその理論の内容を支持する観測結果を得た。
渦巻き銀河 M51の画像。(左)ハッブル宇宙望遠鏡 によるもの、(右)一酸化炭素分子を捉えた電波 による画像(提供:STScI, OVRO, IRAM) |
今回の研究では、カリフォルニア工科大学のOwens Valley Radio Observatoryの望遠鏡とIRAM(The Institut de Radio Astronomie Millimetrique)の口径30m電波望遠鏡を使い、M51の腕に沿って存在する巨大なガス雲の一酸化炭素分子について電波観測が行われた。その観測から荒れ狂うガスの量と温度が決定されたことで、40年前にフランク・シューによって提唱された「密度波理論」の内容を強く支持する結果が得られたのだ。この理論は、渦巻き銀河の渦状腕が、いかに巻き込まれて消えることなく、その形を維持しているのかを説明するものである。
観測で得られたデータを用い、密度波を通過したばかりの腕の後部の縁にあるガスと、前部のガス(過去に密度波を通過したと考えれらるガス)とを比較することで、後部の縁にあるガスがより温かく、より激しい様子であることが示された。過去に密度波を越えたガスは時間と共に温度が下がり、より穏やかな状態にあるというわけだ。このような結果は、まさに密度波理論が予測するものである。
今回の結果は、ガス雲レベルで密度波がどのように作用するか、またどのように星形成を促進したり妨げたりしているのかを、初めて示すものとなった。さらなる一酸化炭素分子の電波観測が期待されるところだが、この分子が発する微弱な電波を捉えるためには、現在南米チリで建設が進められているALMA(Atacama Loarge Milimeter Array)の完成を待たなければならないようだ。ALMAは日本も参加しているプロジェクトで、口径12mの望遠鏡64基からなる電波望遠鏡群だ。完成すれば前代未聞のレベルの観測が可能となり、ミリメートル波で見る宇宙の新しい姿をわれわれに見せてくれることになるだろう。