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【2004年6月3日 Chandra Photo Album / NASA News Release】
NASAのチャンドラX線衛星の銀河団に関するデータを利用することで、宇宙膨張の減速、加速の変遷が数十億年の単位で明らかにされた。これによって、暗黒エネルギーがアインシュタインの提唱した「宇宙定数」と同じ働きをし、宇宙は永久に膨張を続けるというシナリオが示された。
銀河団Abell 2029(可視光、X線による画像を合成したもの) 提供:可視光画像:National Optical Astronomy Observatory/Kitt Peak, X線画像: NASA/Chandra X-ray Center/IoA |
銀河団中に捉えられた銀河間ガス(赤く写っている部分) 提供:NASA/Chandra X-ray Center |
銀河団までの距離を測ることは、加速膨張する宇宙の広がりを直接観測していることになる。今回の観測結果から、暗黒エネルギーは急激な変化を見せることなくほぼ一定を保っており、アインシュタインの提唱した「宇宙定数」のような役割をしていることが示されたのだ。今回の結果が真に正しいものならば、宇宙は永久に膨張を続けていくこととなり、数十億年後この宇宙で観測できるものは、ほんの数個の銀河をのぞいては、何も見えなくなるという。
われわれの興味をひく宇宙の将来についてのシナリオは、現在二つある。一つは、暗黒エネルギーが増加の一途をたどり、いずれ宇宙のすべての物理構造がひきちぎられ、ばらばらとなるというものだ。これは「ビッグリップ」と呼ばれるシナリオである。もう一つの「ビッグクランチ」のシナリオでは、宇宙は自身の重力によって収縮し、すべての物質と時空がつぶれて、無次元の特異点に収束してしまう。しかし、今回の研究結果が示すように暗黒エネルギーが一定であれば、宇宙の将来は、意外にも、劇的な変化は起こらずに静的なものになるということだ。
NASAのマイクロ波観測衛星WMAPと今回のチャンドラX線衛星によるデータを合わせた結果によれば、暗黒エネルギーの量は75%、暗黒物質は21%で、残る4%が、われわれの目に見える物だという。専門家は、現時点での計測結果については、まだ不確実性が残っている可能性があることを強調している。また、チャンドラX線衛星のデータからは、今後暗黒エネルギーが増加する可能性もあり得るということだ。今後のハッブル宇宙望遠鏡やマイクロ波観測衛星WMAP、さらにはConstellation-X計画などによる、より正確な観測が望まれる。一体、われわれの宇宙の将来はどうなるのか、続く観測や研究結果を待ちたいところだ。
気になる宇宙の将来:ビッグリップもビッグクランチも起こらない!?