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http://www.nishinippon.co.jp/media/news/news-today/news023.html
福岡市博多区近辺の博多湾で越冬している渡り鳥・ホシハジロの群れ約二千羽のうち、90%以上が雄であることが日本野鳥の会福岡支部(小野仁支部長)の観察で確認された。自然界では、雄と雌はほぼ同じ割合というのが定説で、昨シーズンまでの同支部の調査でも雄雌半々だったという。専門家はこの“異変”の原因について、さまざまな見解を示すが、明確な結論を下すまでには至っていない。
ホシハジロは、ガンカモ科の渡り鳥。バイカル湖以西のユーラシア大陸で繁殖し、十一月下旬から三月にかけて日本などで越冬する。潜水して貝や小魚、水草の葉、茎を食べる。頭部は雄が光沢のある赤褐色、雌は褐色で、外見から容易に識別できる。
同支部は昨年十二月下旬、同区のベイサイドプレイス博多埠頭(ふとう)近くでホシハジロの群れを発見。一月中旬の個体数調査で約二千羽を確認したが、雌は百羽程度にすぎなかった。同支部メンバーは「これまで越冬地となっていた(同市の)大濠公園や和白干潟などでは、ほぼ同数だった。これほど偏っていたのは初めて」と驚く。
山階鳥類研究所(千葉県我孫子市)の平岡考研究員は「ヨーロッパでは、雌は雄より南方へ渡る傾向があり、越冬地では必ずしも数が接近するわけではない」とした上で、「日本でもこれが当てはまるかどうかは分からず、博多湾だけで結論を出すのは難しい」と広域的な調査の必要性を強調した。
また、日本野鳥の会自然保護室(東京都日野市)の金井裕主任研究員は「今はカップリングの時期なので、博多湾の事例は珍しい。原因としては、化学物質汚染でホルモンバランスが崩れた、雄と雌で食べ物が異なり群れる場所が違う、などの可能性がある」と語り、解剖や血液検査など、科学的な究明を提言する。
小野支部長は、一九九六年にオーストラリアで開かれたラムサール条約国際会議の標語「Today Birds,Tomorrow Man(今日、鳥たちに起きていることは、明日は人間の問題になるかもしれない)」を引き合いに出し「足元の生態系が瓦解しているとみるべきかどうか、人間にとっても無視できない事態と思う。早急に原因を突き止めたい」と語る。
同支部は、博多湾以外でも調査してデータを集積、公開する方針。九州、中国地区の野鳥の会と情報交換し、その“謎”に迫るという。 (写真グループ・永田浩)