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きょう「千葉国」誕生 /千葉
2005年1月1日、独立国家「千葉」が建国された。日本国ではここ数年、ひっ迫する財政問題を背景に、地方分権が時代のすう勢になっていた。「三位一体の改革」「平成の大合併」に加え、「道州制」論議も盛んだった。「首都圏連合」を叫ぶどこかの知事もいた。だが、千葉県民はずっと思っていた。「何かおかしい」。野菜は日本一取れて、全国有数の漁港もある。この豊かな土地が、産業廃棄物や航空機騒音といった首都圏の『負の要素』を背負わされてきた。四方を海と川に囲まれ、地理的条件も整っている。「千葉だけでやっていけるぞ!」。600万県民のエネルギーが、遂に独立を実現させた。初代大統領選挙(従来の知事選)は3月13日に行われるが、入閣が確実視されている方々に、所信を表明して頂いた。【千葉独立取材班】
◆初代国務大臣、熱い一言
◇水産大臣−−堀井康司・銚子市漁協組合長
近い未来に、エンジン燃料は重油から、水素や太陽熱に切り替えることができる。漁船はボタン一つで操縦が可能になり、職業病である難聴も一掃される。「ロボット漁師」が誕生する可能性だってある。そうなれば、陸にいながらリモコン操作でロボットに操業させ、人間の漁師が遭難する心配がなくなる。
銚子市出身。70歳。
◇財務大臣−−加藤寛・千葉商科大学長
21世紀は食糧、エネルギー、情報の奪い合いの時代。生き抜く条件であるこの3要素を備えるのが千葉国だ。生産量の多い野菜や魚介類は関税をかけ東京などに輸出する。エネルギー源は天然ガスが豊富。千葉市の幕張新都心には情報産業が集結し、市川市の千葉商大には世界有数の超高速通信システムがある。財政再建のためには独自通貨を発行する。千葉国だけでしか使えないから、国内での消費や不動産取引が活発化し、景気も上向く。住宅供給公社の経営難もクリアできる。
前政府税制調査会長。78歳。
◇観光大臣−−額賀信・ちばぎん総研社長
世界中から観光客を呼ぶ目玉施設を作る。それは、東京湾アクアライン(木更津−川崎、15・1キロ)の道路両側を走るジェットコースター。風をきって海上道路を走る壮快感はここでしか味わえないはず。休憩施設「海ほたる」(海面まで約36メートル)を利用したバンジージャンプや、水陸両用船を走らせるのも面白い。規制など課題はあるが、アクアライン総工費(約1兆4000億円)の1%程度でも施設はできるはず。
日本銀行神戸支店長など歴任。「観光立国」「観光立県」を提唱。58歳。
◇農業大臣−−木内博一・農事組合代表理事
千葉国の農地は、商業地でいえば丸の内ほどの価値がある。提唱したいのは「農地ファンド」。小規模な未耕作地などを持つ地主たちに奨励金を出し、一つの大規模農地に改修してもらう。農道整備などで付加価値を高めれば地価も上がる。就農希望者や生産拡大に意欲的な人に貸し、地代は提供した土地面積に応じて地主に分配される。農地の効率利用や活性化で地主や生産者の収入が増えれば、国の税収増加や消費拡大にもつながる。
山田町の農事組合法人「和郷園」代表理事。農協に依存せず、野菜輸出や資源循環型農業を実践。37歳。
◇NPO大臣−−牧野昌子・NPO法人理事長
千葉のNPO法人認証数は全国4位(04年で774法人)。数だけではなく、活動の質が充実すれば地域生活は豊かになる。そのために「NPOハローワーク」を設置する。映画好きな人たちが登録すれば、「映画館で鑑賞したい障害者らと一緒に行く」というNPOを立ち上げることもできる。退職した人たちに培った技術を生かしてもらったり、不登校児やニートの人たちに就業体験の場を提供することもできる。活動資金は、市民や企業の寄付などを原資にした「コミュニティーファンド」で提供する。NPOをさまざまな人が夢を描ける場にしたい。
NPO支援のNPO「ちば市民活動・市民事業サポートクラブ」理事長。52歳。
■千葉国の成り立ち
房総半島に安房、上総、下総の3国が成立したのが8世紀。平安時代末期から千葉氏、室町時代中期からは里見氏が勢力を伸ばした。江戸時代には天領、旗本領も置かれ、江戸の食糧供給基地でもあった。1871(明治4)年の廃藩置県を経て、2年後に千葉県に統合。2005年1月1日から千葉国。
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◇これが脅威の国力だ!!
千葉国は産業のバランスが取れている。日本国の「県」だった当時、全国で▽農業産出額2位▽漁業総生産量5位▽製造品出荷額8位▽商品販売額10位(いずれも02年)−−と各産業ともトップクラスだった。天然ガス生産量は2位(02年)でエネルギー資源も豊富。空と海の玄関口は成田空港や千葉港がある。世界一や日本一を誇ったものも多い。千葉の国力を総点検した。
◇基礎データ
●人口605万人 (※デンマーク530万人、シンガポール402万人)
●面積4996平方キロ (※東京、神奈川の合計4517平方キロ)
●平均海抜約43メートル(※日本一低い)
☆経済力
千葉以外のデータの出典は総務省統計研修所編集「世界の統計04」。01年は1ドル=121・53円、02年は1ドル=125・39円の年平均値で換算。
☆食糧自給率
02年の野菜産出額は1794億円で1962年から41年連続で日本一。漁業総生産量(20万4007トン)のうち、イセエビやカタクチイワシは日本一。米の生産量は32万トンで全国9位。自給率は重量ベースで、生産量÷(日本国民1人当たりの年消費仕向量×千葉の人口)×100。
☆野菜占有率
品目別占有率では75・4%のカブを代表格に14品目で1位(02年)。
☆成田空港
03年の貨物取扱量は世界の空港で2位。国際線の旅客者数は2578万人で国内トップ。
☆千葉港
千葉港は94年から01年まで8年連続で日本一。02年は名古屋港に次ぐ2位。
☆観光施設
世界のテーマパーク入場者数(04年見通し、米国レジャー専門誌アミューズメント・ビジネス誌)で、東京ディズニーランドは約1320万人で3位、東京ディズニーシーがほぼ同数の4位。千葉の海水浴場数は81カ所で日本一(03年)。白子町は約400面のテニスコートがあり「密集度日本一」を主張。
☆図書館
浦安市立中央図書館の蔵書数約97万冊と市民1人当たり年間貸出数12・4冊(対象は人口10万〜15万人の都市)、光町立図書館の年間総貸出数約58万冊(対象は人口2万人未満の町村)は日本一(03年度)。インターネット検索最大手のヤフーが、「クールサイト」として利用推奨する市町村立図書館のホームページは市川市立図書館のみ。11月のアクセス件数は8万件超。市は「レファレンスサービスが充実した日本一の図書館サイト」。
☆貝塚
全国の縄文時代の貝塚(約5000〜3000年前が中心)3974カ所のうち、千葉は約2割の753カ所で最多(01年)。集落跡や古墳、城跡なども含めた遺跡数は全国44万1364カ所のうち、千葉は2万9162カ所(同)で最多。
◇主な世界一(初)、日本一(初)
●野田市の東京電力新野田発電所の変圧器合計出力786万キロワットは世界最大(99年ギネスブック認定)
●木更津市のかずさアカデミアパークのかずさDNA研究所は、世界初のDNA専門研究施設
●千葉都市モノレールは世界最長の懸垂型モノレール(営業距離15.2キロ)
●ヨウ素は世界総産出量の28%の6140トン(03年)
●県立登録博物館数は10館で日本一(02年)
●県立中央図書館は日本初の移動図書館を運行(1949年)
●丸山町は日本酪農発祥の地(1793年に白牛酪製造開始)
●野菜を含めた農産物は20品目(落花生、なし、水仙など)が産出額日本一(03年)。製造品出荷額日本一(01年)はしょうゆ・食用アミノ酸、みりん、小麦粉、病院用器具・装置、ポリスチレン、娯楽用具・玩具の部分品・付属品など
毎日新聞 2005年1月1日