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置賜の文化遺産「草木塔」【広域広報おきたま】採取・伐採した草木の霊を慰める
http://www.asyura2.com/0403/ishihara8/msg/619.html
投稿者 エイドリアン 日時 2004 年 12 月 20 日 13:54:35:SoCnfA7pPD5s2
 

★ 下に愚民党さんのが投稿された、種田山頭火の一代句集『草木塔』の題名に因んで、”草木塔”発祥の地:山形県置賜地方の”草木塔”を紹介。

  置賜地方では江戸時代、「山川草木悉皆成佛」という日本型汎神論に基づいて、湯殿山の修験者による布教と植林が行われ、それと付随して”草木塔”が建立されたもよう。

置賜の文化遺産「草木塔」 より:


 みなさん、草木塔(草木供養塔)をご存知ですか。
 草木塔は、置賜地方を中心に残されている石碑です。
 現在、確認されている数は、五十八基で、類似物も含めると六十基を越えます。この五十八基のうち、福島県の熱塩加納村の一基と大江町の1基を除けば置賜地方に限られていますが、熱塩加納村のものは飯豊町との境にあり、飯豊町との交流から生まれたものと考えられ、大江町のものも昭和十五年に建立されたものなので歴史が浅いことから、昭和の時代以降のものを除くとすれば、現時点では置賜地方に限られると考えられます。
 このうち、最古のものは、米沢市塩地平にある草木供養塔で一七八〇年(安永九年)に建立されました。
 このきわめてユニークな石碑の由来は、草木の生命を人々の生活に取り入れるために採取したり、伐採したりした草木の霊を慰めようという思想から生まれたものと考えられています。
 今、世界中でフロンガスによるオゾン層の破壊や木の伐採による緑の減少など、これらの環境問題が大きくクロ−ズアップされています。今日のような時代にこそ、置賜の先人たちが残したすばらしい文化遺産「草木塔」の意義を、もう一度振り返ってみてはどうでしょうか。

所在地
 米沢市大字口田沢字中原
建立年
 1823年(文政6年)8月
大きさ
 高さ 84cm
 幅  45cm
 厚さ 24cm


◆ 特集「草木塔」−置賜の山林愛護を−

 置賜地方には、「草木供養塔」ないしは、「草木塔」と呼ばれている石塔が数多くあります。
 米沢市の田沢・簗沢・赤芝・綱木・万世、高畠町の上和田、南陽市の萩、白鷹町の小四王、川西町の玉庭地区・時田・上小松・犬川(下小松)・西大塚、飯豊町の中津川などに分布しています。
 さらに、中津川と小国町との境界である九才峠の小国町大字大石沢の区域に入る箇所に、飯豊町森林組合の建立したものが建っています。
 近年、米沢市内に建てられたものや、新しく発見されたものを含めると、現在、置賜地方一円では、六十三基を数えることができます。
 平成二年、大阪で開催された「花と緑の万博」にに、飯豊町の「草木塔」が展示され、自然保護の立場から全国的に注目されました。
 田沢地区の「草木塔」をモデルにして、長野県茅野市金沢には、植林を記念して、林野庁長官きごう揮毫の「草木塔」が建ち、山形市山寺の風雅の国庭園にも建てられ、さらに、昨年は、寒河江市のチェリーランドにも建立されました。
 このように、置賜地方に存在している「草木塔」にならって建立する動きが県内外とも盛んになってきております。
 「草木塔」の起源をたどってみると、名君、上杉治憲(鷹山)公の時代から始まっています。入田沢の塩地平に長い間に風化摩滅し、読み取りが難しくなった「草木供養塔」があり、「安永九子天」と刻まれています。さらに、口田沢の大明神、旧道の傍らに、自然石でできた、高さ一〇三センチメートルの碑があり、「安永九庚子天講中(梵字)一佛成道観見法界草木国土悉皆成佛 八月一日 口田沢村」と、刻まれてあります。このことから、一番古いものは、安永九年(一七八〇年)から始まったと考えられます。今から約二百年前のことです。また、この田沢地区は、藩政時代には、「おんばやし御林」と呼ばれた、米沢藩の御料林のあった所で、この地の林は、お城や御殿、神社仏閣の用材や城下の大火復興の用材として切り出されてきました。
 安永九年四月十七日に、現在の米沢市粡町・銅屋町・立町など、千余戸焼失の大火があり、その時に、藩主の命令で、この「御林」から、急いで多くの用材が伐採され、運び出されて復興にあてられました。
 多くの樹木や草類が人々のために役立ち、それらの草木に感謝する気持ちが供養となり、さらに、植林した木の成長と山野の山林資源の豊かさを願って、「草木供養塔」が建てられ、時代が経過すると共に、単純化されて、「草木塔」に変化してきたのです。
 今年は、出羽三山御開山千四百年祭で、修験の山、出羽三山は活気をおび、湯殿山参詣も盛んなようです。
「草木塔」の建っている所の多くは、「湯殿山」の碑と並んでいる例が多く、さらに、山村の信仰の場所である「山の神」神社などに建つ例も多いようです。
 江戸時代に、山村の知識人であり、指導者層であった、山を修行の場とする修験者(山伏)法印が、湯殿山参りの先達をつとめたり、人間と共存する草木の霊に「ねはん涅槃経」の「山川草木悉皆成佛」を唱え、鷹山公の植林政策と信仰を浸透させていった現れと考えられます。
 山村の生活と深くかかわりをもつ山岳信仰は、素朴な村人たちに浸透し、修験法印と山林に頼って生活している村人たちが一体になって、湯殿山、飯豊山のお山信仰と共に、後々まで山の森林資源が枯渇しないよう願い、また、雪崩、土砂崩れなどの災害にあわぬよう、さらに、危険な山仕事から命が守られるように願い、草木の成長と成仏を祈って「草木塔」が建てられてきたのです。
 「御林」のあった田沢は、米沢藩の中でも、日光街道杉並木の植樹補植の経験があり、杉林の山林や林業技術でもすぐれた面をもっており、その組織(集団)も統一されたまとまりがあり、藩内の各地にある山村に出かけて集団で山仕事にあたってきたのです。
 その集団の場として代表的なものは、川を利用して運ぶ、燃料用の「バイタ」を流し、引き上げる「木流し」でした。
 「木流し」は、小樽川から鬼面川へ、そして、城下の木場川へと流し、春先の雪どけ水の中へ飛び込んでの作業で、かなりの寒さと危険が伴う重労働でした。
 この「木流し」は昭和十年の春まで木場川を利用して行われていました。
 沢山の人が力を合わせて、カシラ(頭)の采配によって働く共同作業。少しの油断も、怠けも許されない命がけの作業が「木流し」の作業だったのです。
 そこには、秩序と信頼が必要であり、部落ぐるみの共同体、「流木連」「講」が生まれ、信仰を通して連帯を強め、仲間を信頼し、結びつきを深くしてきました。
 「木流し」に参加し山仕事で一人前の働きが出来ることが、部落での大人扱いを受けるしきたりでした。
 この山仕事や「木流し」の組織を結びつけたのが、大荒沢の「お不動様」(不動尊)への信仰でした。山仕事で山に入る時、遠くへ出かけるとき、木流しに入る前になど、この「お不動様」に参詣したそうです。
 この大荒沢の「お不動様」の奥には、御滝と言われる「ミソギ」の場所や拝殿前の山門の前には引き水を流して、「ススギ」の場もあり、敬けんな山の信仰の場所でした。
 このような共通の信仰のもとに、自然とつながる信仰が「草木塔」を発生させた背景と考えられます。
 山仕事の技術(わざ)は人々の交流を通して伝播します。
 田沢から隣接する簗沢、玉庭、中津川へと広がり、泊りがけで、山仕事の交流が行われ「木流し」技術(わざ)とともに、「草木塔」の建立と供養が広がっていったのです。
 簗沢の烏川・大樽川、玉庭の犬川、中津川の白川、萩の吉野川、万世ざる笊籬の梓川、赤浜、刈安の刈安川・羽黒川と、いずれも「木流し」の伝わった所で、これらの地域に「草木塔」が建立されています。
 また、これらの地域は、豪雪地帯でもあり、植林した木々が、雪に倒れず成長するようにとの願いもこめられて、「草木塔」が建てられたのです。
 現在、自然保護や環境保全が叫ばれており、最上川源流の森構想もありますが、「草木塔」の分布している置賜の山林原野を立派に維持していくことが、最上川の空気と水を守ること、つまり、きれいな自然と国土を守ることになるのです。
 「草木塔」の理念を生かし、身近な学校林・町有林・市有林に関心を寄せ、最上川源流の森として、はずかしくない森林を、置賜の子孫のために残していく必要があり、みんなで山林を愛護して行くことが急務のことだと思います。(文は米沢市中央 小山田 信一氏)

米沢市口田沢の、高さ103cmの自然石でできた草木塔米沢市万世笊籬にある草木塔は、草木塔としては最大の大きさで高さ214cm、巾115cm、厚さ33cm

※ 掲載内容は、広域広報おきたま平成3年(1991年)No.3(8月15日号)の掲載記事から抜粋しました。


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