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小田急線の地下化で“幻の道路”計画復活
シモキタが消える!?
http://www.tokyo-np.co.jp/00/thatu/20041117/mng_____thatu___000.shtml
“シモキタ”の略称で親しまれ、演劇や音楽、ファッションの街として、全国区の人気を誇る下北沢。その繁華街をぶち抜く道路計画が突然、動き出した。東京都世田谷区が小田急線と交差する形で道路を新設し、下北沢駅前を再開発する計画だ。「シモキタの魅力がなくなる」と地元で反対運動も始まった。戦後すぐに計画され、未着工のままだった幻の道路が、なぜ今ごろ造られようとしているのだろうか。
路地が迷路のように入り組む下北沢駅周辺。めったに車が通らず、平日でも大勢の人でにぎわう。青果店にお年寄りの姿があるかと思えば、古着の店には若者があふれる。
そんな駅北口の商店街を道路が分断し、南口の住宅街を貫く予定だ。道路の拡幅ではないため、商店や住宅をつぶさなくてはならない。最大幅二十六メートルと環七並みの幹線道路で、「路地が破壊される」と住民やシモキタファンが猛反発する。
この道路は、都市計画道路・補助54号。占領軍統治下の一九四六年、戦災復興院告示で計画された。世田谷区が施行するのは、約一・三キロの区間。まずは下北沢駅周辺の二百五十メートル区間の着工に入り、約五千三百平方メートルの駅前広場とともに整備する。既に今年七月から用地測量を開始。来年度中の事業認可、二〇一三年度中の完成を目指す。
道路にのみこまれる北沢一丁目に住む女性(56)は「驚いた。道路の計画は知ってたが、やらないと思っていた」と話す。「車のためだけに幹線道路を造る必要を感じない。排ガスや騒音が心配」
地元で三十年以上飲食店を営む山崎千鶴子さんは「路地裏が消えたら街の文化も消える。渋谷や新宿に近いのに家賃が安く、アーティストが集まってきた街。壊してからでは手遅れ」と訴える。
これに対して世田谷区は、整備のメリットに、▽周辺道路の交通量が減る▽バスやタクシーが入れる駅前広場ができる▽小型消防車しか入れない駅周辺の防災機能が高まる−ことなどを挙げる。
木下泰之・世田谷区議は「繁華街を壊してまで造るメリットはない」と区を批判するが、なぜ急に建設へ動き出したのか。区は「小田急線の地下化が決まったのが大きなきっかけ」と説明する。
小田急線沿線では、踏切渋滞の緩和などの目的で、線路を高架化や地下化し、かつ道路と線路を立体交差させる「連続立体交差事業」(連立事業)が進行中。下北沢駅周辺でも、長年、地域住民との協議が紛糾した末、昨年一月に線路の地下化が決まった。
連立事業は、総事業費の86%を道路特定財源や自治体の負担金でまかなう。そのため、国が「都市における道路と鉄道との連続立体交差化に関する協定」(現在は要綱)を定め、「鉄道と幹線道路が二カ所以上で交差する」ことを条件にする。
下北沢駅周辺で、この条件を満たすには、長年未着工だった54号の新設が不可欠。小田急線の地下化が決まったことで、急きょ幹線道路となる54号が必要になり、計画が動き出したわけだ。
小田急線高架化訴訟で住民側弁護団長を務める斉藤驍弁護士は「協定が結ばれたのは日本が車社会になり始めた一九六九年。連立事業は道路建設のための巨大プロジェクトだ。今も全国六十二カ所で施行中だが、道路網の拡大、拠点駅を中心とした大規模再開発が真の目的だ」と分析する。
さらに、戦後の街並みが激変したのに「五十八年前の計画を見直しもせずに建設すること自体が問題」と指摘する。
一方、区は「都の都市計画審議会で重要路線と認められてきたから、必要」(同区北沢総合支所・辻裕光副参事)と強調し、「住民の意見聴取の機会は必要ない」(同)とするばかりだ。
今年五月には住民らを中心に「Save The Simokitazawa(下北沢を守ろう)」という会が発足し、毎週末、駅頭で署名活動を行っている。ピアニストのフジ子・ヘミングさんらも賛同文を寄せた。
会の共同代表を務める歯科医の下平憲治さんと建築士の金子賢三さんは「シモキタが全国区になったのは、人とともに自然に発展してきたから。もはや再開発で街を変える時代は終わった。まずは多くの人にシモキタの危機を知ってほしい」と口々に話している。
文・出田阿生/写真・安江実
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