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高知県知事の橋本大二郎氏（５７）が、県議会に辞職勧告決議を突きつけられて辞職し、出直し知事選が行われる（１１日告示、２８日投開票）。立候補を予定しているのは、橋本氏と前高知市長の松尾徹人氏（５７）。昨年１１月の選挙と同じ顔ぶれだ。前回の両者の得票差は約４万票で、再戦となれば過熱しそうなものだが県民の関心は極めて低い。
辞職勧告決議の発端になったのは橋本氏が初当選した９１年の選挙資金問題。当時の選挙事務局長が後援会長から借りた１億円の返済に、談合でダム工事を受注した建設業者から得た資金を充てたとされる。昨年９月の県議会で問題が浮上。橋本氏は関与を否定したが、県議会は調査特別委員会を設置した。今年９月に「（橋本氏は）建設業者からの資金が使われたことを知っていたか、強い疑いを持っていたと判断される」との報告書を作成。自民党などが辞職勧告決議案を提出し、公明党議員らが賛成に回った。
橋本氏は、県民らの要請を受けてＮＨＫ記者を退職し、無所属で知事選に出馬。高知に縁はなかったが、女性を中心とした「草の根」層が支援し、前知事から後継指名を受けた自民公認候補の元副知事ら２人を破って初当選した。その後、９５年に県職員採用での国籍条項撤廃発言（撤廃は９７年）をしたり、０２年に行われた「よさこい高知国体」で強化策をとらず、３８年間続いた開催地が天皇杯を獲得する「慣例」を途切れさせるなど、全国的に注目を集める政策を次々と実行。一方で、トップダウン方式の政治手法に対し、「独断専行」「議会軽視」などの批判が年々強まった。
それまでの知事像を打ち破ろうと試みた１３年間の県政改革がさまざまなあつれきを生み、結果として橋本氏を熱狂的に迎え入れた県民の支持離れが進んだ。９１年の選挙では約３２万票を獲得したが、昨年は約２３万票に落ち込んだ。４４歳で初の戦後生まれ知事となった橋本氏も再選されれば５期目。県民からは「東京に帰ってほしい」という声すら聞かれるようになった。
県政改革、選挙資金問題、三位一体改革など難題が山積する状況の中、橋本氏はあえて出直し選という“大勝負”に打って出た。決議案に賛成したある県議は「辞職するとは考えていなかった。橋本氏の議会に対する強烈な先制攻撃だ」と語る。
橋本氏は１０月１３日付で辞職後、元県幹部らに話を聞くなどしてまとめた選挙資金問題に関する調査結果を文書で公表した。「資金の出入りにずさんな点があったことを素直に認め、県民におわびする」としながらも、「一連の出来事には一切関与していない」と潔白を強調した。これに、県議会の反橋本派から「選挙向けの宣伝文でしかない」などと批判が相次いだ。一方、橋本氏も会見で自民党県議らの名前を挙げ、「自分の利益のことなら県政をゆがめても恥じることはないと考えている人が県政の底流にいる」と県議会側を批判。両者の対立が解消される可能性はきわめて低い。
橋本、松尾両氏は「政策論争をしたい」として、選挙資金問題を争点にしない考えを示している。しかし、橋本氏が辞職した背景には、長年の感情的な反目に一定の決着をつけたいという思惑がある。選挙戦に入れば激しいネガティブキャンペーンが展開される可能性もある。
高知県では昨年、統一地方選や衆院選、知事選、高知市長選などが相次いで行われ、今夏には参院選があった。市町村合併に絡む住民投票も数多くあり、県民からは「今さらもう一度知事選をやってもカネの無駄だ」との声も聞かれる。選挙費用は約６億円。“政争の決着”を県民に委ねるだけの知事選を誰も望んではいない。
毎日新聞 2004年11月6日 0時29分
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/wadai/news/20041106k0000m070178000c.html
題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。