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海水を真水にする国内最大の海水淡水化施設が来年度、深刻な水不足に悩むことが多い福岡市で稼働する。一日五万トン、二十五万人分の水の供給を予定する期待の施設。その心臓部になる特殊な膜を詰めた装置は、岩国市の東洋紡績岩国事業所で製造されている。中東の砂漠地帯も潤している特殊な装置の生産現場を訪ねた。(清水大慈)
機能膜工場へと社員に案内してもらう。パルプを化学処理した三酢酸セルロースを原料に、中空糸膜と呼ばれるパイプ状の細い糸のような膜を生産している。
製造設備ののぞき窓から目を凝らす。複数の小さな穴から糸状のものが押し出されている。髪の毛より少し太い膜は、うどんほどの束になり、設備から出てきた。
中空糸膜は、この後の工程で、約百万本を巻いた糸巻きのような「エレメント」にされる。それを筒状の容器に収めたのが「逆浸透膜モジュール」。長さ約三メートル、直径約三十五センチ。これが何本も集まって海水淡水化施設の心臓部になる。
▽ 塩分をカット
「モジュールに高圧の海水を入れると、束になった中空糸膜のすき間に海水が流れ込み、膜の中に真水が浸透します。外には濃縮された海水が残ります」と同事業所アクア膜技術センターの熊野淳夫部長(46)。
中空糸膜は、ナノメートル(十億分の一メートル)という超微細な無数の穴が空いた、水は通しやすく塩分は通しにくい性質の膜。高圧のモジュールの中では「浸透」とは逆の現象が起き、真水が膜の中へ透過、濃縮海水と分離される。
分離された真水と濃縮海水は、それぞれ別に取り出せるように工夫されている。「通した海水の60%が真水、40%が濃縮海水となってモジュールから出ます」
▽ 中東など輸出
東洋紡は、一九七九年にモジュールの本格生産を開始。これまで中東を中心に輸出し、現在の中東でのシェアは40%という。サウジアラビアでは、東洋紡のモジュールによる一日五万トン以上の大規模施設三カ所が稼働中。さらに新施設の計画もあるという。
同機能膜工場の河村洋二工場長(53)は「現地では人口が増加中。生活スタイルも変わり、水の需要が増えている。市場は間違いなく拡大する」と分析する。
市場は国内にもある。大きな河川がなく、九四年から翌年に二百九十五日間の給水制限に見舞われるなど、恒常的な水不足が続く福岡都市圏。これまで、隣県を流れる筑後川からの導水などで対応していたが、新たな水資源確保策として、約四百四十億円をかけ、日本最大の海水淡水化施設の新設に踏み切った。
▽ コスト高が難点
コストとともに気になるのが環境への影響だ。海水をどんどん真水に変えても大丈夫なのか。自治体や企業でつくる財団法人造水促進センター(東京)の太田敬一淡水化技術部長(60)は「世界の水のうち98%が海水。濃縮海水をきちんと処理して海に戻せば、大きな問題にはならない」とみる。世界をリードする「魔法の膜」への関心は、さらに高まりそうだ。
▽ クリック
海水淡水化 主に蒸発法、電気透析法、逆浸透法の3つがある。逆浸透膜モジュールによる逆浸透法には、東洋紡の中空糸型や東レなどのスパイラル型(シート型の膜を使用)がある。中空糸型は膜面積を稼げ、汚れに強いとされる。逆浸透法による海水淡水化はこれまで、国内では原子力発電所や離島などで活用。海外では中東や地中海に多くの施設がある。1998年にサウジアラビアで運転を開始した世界最大の淡水化施設(1日12万8000トン)には東洋紡のモジュールが使われている。
【写真説明】東洋紡績岩国事業所にある逆浸透膜モジュールの実証試験場。事業所に面した海から海水を取り、性能を確認する(写真上)
逆浸透膜モジュールの内部モデル。中空糸膜が交差するように巻かれている(写真下)
['04/7/20]