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(回答先: チシマザクラ 千島桜(Prunus nipponica var. kurilensis)【木々の移ろい】 投稿者 エイドリアン 日時 2004 年 6 月 10 日 13:25:24)
組織培養で育つ苗 センターの施設内には小さなガラス瓶に 入った植物の苗が並んでいる。特殊な寒 天に、新芽の組織を培養して増やす。 |
「チシマザクラはとても個性的で、花の色も木によってずいぶん違います。そして何より、寒さに強く、力強い桜です。育てるのも比較的簡単だと思いますよ」
その性質をいかして、佐藤さんは北海道より寒さの厳しいモンゴルでも、チシマザクラの花を咲かせることに成功した。
7年前に北海道のFMラジオ局が呼びかけた「モンゴルに桜を」というキャンペーンで、佐藤さんはアドバイザーとなり、毎年モンゴルへ出かけて植樹や種まき、管理のアドバイスなどを続けてきた。そして2000年、ついにモンゴルで植えたチシマザクラがはじめて花をつけたのだ。
「北海道よりさらに気候条件の厳しいモンゴルでは、ソメイヨシノなどの桜はまず生きていけないでしょう。でも、チシマザクラならたくましく育ちます」
1996年 モンゴルでの植樹の様子 (写真提供・佐藤孝夫さん) |
その佐藤さんが1985年から取り組んでいるのが、樹木の「組織培養」技術である。バイオテクノロジーを用いると、優良な性質を持った苗を大量に、継続的に増やすことができる。チシマザクラやエゾヤマザクラ、ナナカマド、カツラ、シラカバなど、道内の主な樹木の培養はほとんど手がけているが、なかでもサクラの培養は一番重要が多い。
組織培養の手順は、まず2月ころに樹木の小枝を採取する。枝についている冬芽をとり、寒天の上で培養する。この寒天、見た目はただの寒天だが20種類ほどの栄養成分などが入っていて、2カ月もすると小さな幹が伸びてくる。その幹を小さく切断し、再び新しい寒天で培養し、次々とこの作業をくりかえす。根が出て、ある程度まで育ったら苗床に移植し、あとはふつうに育てればよい。
種から育てた場合と比べると、驚くべき早さで大量の苗ができる(計算では1個の芽から1年で783億本の苗が育つ)。「もちろん、そんなにたくさんの苗があっても、植える場所がないからやりませんけど」と笑う佐藤さん。
「こうした技術で、美しい花木などを増やして私たちの身近な環境をより良くしたり、乾燥地でも育つ樹木を増やして地球の緑化を進めたり、さまざまな形で社会に役立つことができるのです。そのために、私たちはできるだけのことをしたいと思っています」
培養室で育てている途中の、チシマザクラの苗を見せてもらった。
ガラス瓶のなかの寒天から、ピンと葉をたてて伸びる小さな苗。数年後には一人前に大きくなって、美しい花や実をつけるのだろう。寒い北国でこそ元気に育つ、丈夫で、個性的な桜。佐藤さんの話を聞いていると、チシマザクラがますます可愛く思えてくる。