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東京都立大学の危機−カネで大学を管理しようとする都庁 2004/06/08
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筆者はこれまでに数回、東京都立大学(東京都八王子市)および他の都立の大学・短期大学(科学技術大・保健科学大・都立短大)で起きている都庁による大学破壊について報告してきた。
都立4大学統合に向けて平成15年7月まで準備が進んでいたが、同年8月1日にこれまでとは全く違う新大学構想を石原慎太郎・東京都知事が突如、会見で公表した。以降、都庁は大学の教員・学生に対して不当な扱いをし、違法な大学「改革」を強行してきた。この間の経過に詳しいホームページとして、「3分で分かる東京都の大学破壊」( http://www.bcomp.metro-u.ac.jp/~jok/sampun-kiki.html)を紹介したい。本稿では今年度(平成16年度)の研究費について、都庁が一方的に「傾斜配分」を断行した問題について報告する。
都立4大学の研究資金は、設置者・東京都からの研究費、政府からの科学研究費、企業からの研究奨励寄付金などから成り立っている。
このうち、科学研究費および企業からの寄付金は外部資金と呼ばれ、研究者(研究グループ)ごとに獲得するものであり、都からの研究費がすべての研究室における研究活動の基本資金となっている。
近年は東京都の文化・教育軽視のリストラ政策により、都からの研究費が毎年9割ずつ削減されているため、都からの研究費は各研究室にとって「最低生活保障」のようになってしまっている。そのため、理工系の教員を中心に外部資金の獲得に躍起になっているのが現状である。
その東京都からの研究費が、今年度から突然、支給が保障されなくなった。「傾斜的研究費の配分について」(平成16年4月23日付 http://www.bcomp.metro-u.ac.jp/~jok/keishahaibun-1.html)という文書により、都立新大学・経営準備室長が研究費の「傾斜配分」を今年度より断行することを一方的に通知したのだ。まだ形のない都立新大学の経営準備室長が現行都立4大学の予算配分を指示するのは明らかに違法である。これによって年度初めには研究費は5割のみ支給となり、残りは「競争的資金」として凍結された。
さらに同文書には、応募対象者について「新大学に就任を予定していない教員は応募できない。また,共同研究グループの構成員となれない」と明記してある。新大学への是非をもって研究の優劣をつけることができるのであろうか。
東京都立大学には1949年設立以来の理念があり、教員はその理念に賛同して任用され、学生はその理念に憧れて入学したのである。東京都立大学が存続する限り、都立新大学の理念が都立大学の理念よりも優先されるべきではないし、教員は都立大学の研究と教育に責任を持ち続けるべきである。都庁は研究費の締め付けによって、新大学構想に異議を唱える教員を押さえつけたいだけである。
現在、都立4大学が取り組む研究は広い分野に渡るので、この全ての分野を公平に審査するには、広い研究分野をカバーできるだけの非常に多くの数の審査員が必要となる。そもそも違う分野の研究を競わせること自体がおかしな話である。科学技術を進歩されるには特定の分野に重点的に投資すればよいというのは幻想で、人文科学から自然科学・応用科学(工学)に渡る幅広い分野の底上げが日本をして科学技術立国たるを維持するのに必要なのである。
東京都立大学が日本の文化・科学技術の進展に貢献してきたのは事実であり、都立大学の教員は文化・科学技術の一端を担っているという誇りを持っているのであり、学生はその一端を触れることで自己の教養と専門知識を身につけるのである。都立新大学では「都市」をキーワードにした研究を行うという。権力者による学問の選別は危険である。
さらに深刻なことは、「最低生活保障」である都からの研究費の傾斜配分によって学生・大学院生の教育活動に支障を来していることである。ゼミや学位論文執筆に必要な資料のコピーすらできない状況である。今後、現行・都立4大学と新大学が同じキャンパスで併存していく中で現行大学の学生・大学院生に対する学習権が果たして保障されるのか疑わしい。都庁は設置者としての責務を全うする気があるのだろうか。
今年4月28日に都庁は文部科学省に対して設置認可申請を行った。平成17年度開学には4月中の申請が必要で,締切ぎりぎりでの申請となった。今後は大学設置審議会で審査されることになる。無条件で設置許可するよう政治的な圧力がかけられているという噂がある。
単刀直入に言おう。こんなふざけた大学を認可してはいけない。正常な準備体制が構築されるまで、そして学生が安心して勉学に励めると思えるまで開学を延期すべきである。各委員が日本の教育の将来を真剣に考えていることに期待したい。
教員の就任承諾書(助手については意志確認書)の提出期限が6月17日に迫っている。就任承諾書について6月4日に教員有志の緊急集会が開かれ、激論が交わされた。大学側にとっては就任承諾書の提出保留が「最後の切り札」である。少しも悩まずに就任承諾書に署名をする教員は、学生に学問を教授する資格は無い。大学教員を辞めた方がよい。
これから東京都立大学は正念場を迎える。時として巨大な権力を前に絶望を感じることがある。でも決してあきらめない。
(河井相模)
http://www.janjan.jp/area/0406/0406065124/1.php